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Ambassador rain  作者: 輝ぽてと
第2章 冬の悪魔
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第10話


 僕は目の前に立ちはだかる大きな黒い塊を見て足が(すく)んでしまいそうだった。それでも、僕の後ろにはカリスがいる。ウィンクやヤクだっている。

 大丈夫、戦える。

 切りこみ隊長を買って出たのはヤクだった。

 ヤクは僕の脇をサッと通っていくと、力強く地を蹴り勢いをつけ、敵を十字に切りつけた。

 少しだが、そこから血が滲み出てきていた。


「僕って天才!かっこいい!」

「そんな事言ってる場合か!」


 自分に酔いしれているヤクを横目に、僕も敵に突っ込んだ。

 しかし速さが全くと言っていいほど足りず、鈍く重い音を立てて弾かれてしまった。


「僕達ではダメなのか…」


 肩を落としそうになっているヤクの背中を叩いて笑った。


「そんな事ない!まだ何か方法はあるよ!」


 しかしあのリーチの長い剣を前にしては、無闇に突っ込んでいく訳にもいかない。

 頭を抱えたくなるほどに考え込んでいると、何を思ったのか敵がその場で剣を捨てた。


「一体、何をするのでしょうか…」


 何やらバカでかいシルエット。それは剣でもなく槍でも棒でもない。

 ゴツゴツといかついシルエットに僕達はすぐにはそれが何なのか分からなかった。

 この世界であんな武器を使っている人が少ないからだ。


『ダダダダダダ』


 轟音と共にいくつもの弾がこちらへ飛んでくる。


「もしやマシンガン!?」


 ヤクの言葉にやっと頭が働いた。

 確か連射式の銃か。戦闘方法を学んだ時にちらっと触れたくらいだ。詳しくは分からない。

 銃によって撃てる弾の数が違ったはずだが、これがどのくらいの数を撃てるかなんて知らない。弾切れを狙いたい所だが、それより先に僕達が撃たれてしまう可能性だってある。


「私が!」


 遠く…向こうの方から声がした。

 そして声がした方では青白い光が氷の矢を作り上げていた。

 見たことがある。雪合戦をした時にリスクに向けて撃っていたものだ。

 ミカリが大きな氷の矢を生成し、敵へと放った。

 氷の矢はマシンガンの弾丸に当たると、弾丸と一緒に砕け散った。そしていくつかの矢は敵へと向かう。

 しかし敵は頬いっぱいに口を吊り上げ、笑っていた。


「効くわけがないだろう?」


 その言葉に身構えると、空気がピリピリと電気でも帯びたかのように張り詰めた。

 次の瞬間、黒い雲のような塊が敵の前に現れ、矢はその中へ吸い込まれていった。


「何こいつ!にっ逃げろー!」


 ヤクの言葉を合図に僕達は走った。とにかく走った。後ろからは黒衣の人がついてきている。

 どうやって倒せばいいか考える時間が欲しい。大体、人かどうかも分からない敵を何の計画もなしに倒そうとする方が無茶だ。

 しかし、ラルとミカリを置いてきてしまった。大丈夫だろうか…。

 そんな事を考えていると、目の前に一面に氷が張っている池が現れた。


「どうしよう…」

「渡るしかないようだね」


 恐る恐る氷の上に足を乗せる。割れはしないが、向こう岸まで距離が長い。

 この靴では滑りそうにないし…。無事に辿り着けるだろうか…。

 少し考えた結果、ある方法が思い浮かんだ。

 僕は寝っ転がると少し手で勢いをつけてみた。

 意外と進む。


「ねぇー!見て見て!ペンギンさーん!」

「そんな事やってる場合か!」


 バシッと軽くカリスに頭を叩かれる。

 だが、ヤクが僕の頭を撫でてくれた。


「スリク!それいい考えだな!ペンギンで行こうぜ!」

「却下」


 カリスとウィンクに2人から同時にそう言われ、僕達は口を尖らせて一緒にペンギンで滑って向こう岸まで滑った。


「とうちゃーく!」

「はぁ…ペンギンで行けば良かった…」


 肩で息をしているカリスとウィンク。転びそうになりながら走って来たらしい。

 ヤクはサラッと髪を撫でた。


「だから言ったじゃん!やっぱり僕は天才!」

「うるせぇ」

「後ろ!」


 僕達が後ろを振り返ると、黒衣の人が立っていた。


「もうやだぁー!」


 更に、敵の手には武器としてはあまり見かけない物が握られていた。


「今度は斧!?」

「怖ぇ…」


 僕達は狙っているかのように首元に飛んでくる斧をしゃがんで避けた。


「一度この場から逃げましょう!」


 また走って逃げる。足が重い。走り過ぎたせいかもしれない。

 後ろから敵が斧を振り回しながら追いかけてくる。


「あの森の中に!急いで!」


 僕達は森の中へ入り、すぐさま木の影に隠れた。

 敵が1本ずつ順番に木を斧で切ってきた。

 木が倒れる音が聞こえる度に自分の命を削られているかのようだ。

 僕達はいつ切られるかと恐れながら、息を殺して身構えた。

 ヤクが後ろを向いて数える。


「あと3本」


 ゴンッという重い音と振動が伝わる。

 そんなに簡単に切り倒すことが出来るのか。


「あと2本」


 更に大きな振動が僕達の心臓を震わす。

 大きな手で内臓を丸ごと鷲掴みにされているようだ。


「あと1本」


 空気が変わる。すぐ近くに奴がいる。

 肩がゾクゾクと震え上がった。


「今だ!」



読んで下さりありがとうございました!

感想や御指摘ありましたらよろしくお願いします!


この章も段々と終わりが見えてきました。

ここまででもかなりですが、この先更に物語が複雑になります。

全ては成り行きで書いていたあの頃の自分のせいですね。

回収するのどれだけ大変だと思ってるんだ全く←

お付き合い下さると嬉しいです!


次回更新は2/24(月)に出来たらと思っています!

宜しくお願いします!

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