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Ambassador rain  作者: 輝ぽてと
第2章 冬の悪魔
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第4話


 1時間後。僕噴水のある広場に戻り、さっきまでいた逆方向の道を歩いていた僕達はまた草原へと抜けた。

 どうやらこの街は自然が多いようで、レンガ造りの住宅街を囲むように草原となっているようだ。

 遠くを見れば、汽車でも通っているのか線路が見える。

 しかし、これだけ歩いてもウィンクの探すクアンも、カリスでさえも見つかっていない。

 もうすでに気力と体力の限界だった。


「1時間以上歩いて手掛かり無しとは…。もう疲れたぁー」


 ぐでーっと両手を前にぶらぶらさせ猫背になりながら歩いていた僕を見てウィンクが大きく溜め息をついた。


「そんなこと言われましても…。僕だってそん…」


 不自然に話が終わり、僕は顔だけ上げてウィンクを見た。

 ウィンクは何処かを指し示しながら口をパクパクしている。


「どうしたの?」


 起き上がろうとした僕を、ウィンクの言葉が早く早くと促した。


「あの人…赤い髪で、ポニーテールにしてる…」


 さっと起き上がりざまウィンクの指差す方向へ顔を向けた。


「カリス!」


 僕は思わず大声で叫んだ。

 そこには、会いたくて会いたくてしょうがなかったカリスがいた。

 会えたことの嬉しさのあまり、僕の足はカリス目掛けて動いていた。足取りは、僕の心と一体化しているようだった。


「近寄るな」


 ピタリと足が止まる。というよりは、カリスの言葉にその場に凍らされてしまったかのようだった。

 カリスの瞳は、黒と紫が混ざり合ったような色をしていた。


「カリス…?」


 その場を動けないまま彼の名を呼ぶ。

 しかしその瞬間、カリスの目つきがぎりっと変わり、こちらを睨みつけた。


「その名を呼ぶな」


 今にも襲いかかってきそうな気迫に僕は一歩後ずさった。


「カ…カリス…?どうしたの…?」


 よく見ると、カリスの両手に一振りずつ短剣が握られていた。

 僕は怖くなり、カリスと目を合わせたままウィンクの元まで辿り着くと、ウィンクの長剣を抜いた。

 そして、今度は一歩一歩慎重にかリスとの間合いを詰めていった。


「どうして…?僕を忘れてしまったの…?カリス…」

「その名を呼ぶなと言っただろ!」


 カリスは剣を振るいながら襲いかかってきた。

 僕はそれを避ける事しか出来ない。反撃なんて出来なかった。

 誰に会いたくてここまで歩いてきたのか。

 誰に会いたくて必死に戦ったのか。

 それは勿論、仲間や家族に会いたくてだ。仲間を攻撃することは、いくら相手が攻撃してきたからといって出来ない。


「やめて!カリス!目を覚まして!」


 容赦無く飛んでくる剣。反撃出来ないままでいる自分。

 カリスがこんなことするわけないと、僕は必死に言い聞かせた。

 カリスは少し頼りないところもあるけれど、人一倍心配性で凄く優しくて、仲間のことを大切に思ってくれる皆のお兄さんだ。いや、お母さんと言っても過言ではない。

 それほど、僕達の心の支えなのだ。

 そんなカリスが仲間を襲うなんて。僕には考えられない…いや、考えたくなかった。


「黙れ、黙れ、黙れ!」


 しかしそんな事を考えている間にも、カリスの正確な剣筋が僕の隙を見極めて痛めつけようとしてきていた。

 カリスは一体どうなってしまったというのだろうか。それとも、この人は本当のカリスではないのだろうか。

 そう考え込んでしまい、油断してしまった時だった。


「っ!」


 お腹に冷たいものを感じたかと思うと、それは段々と僕の体と馴染むように生温かくなっていった。そしてズキズキと、僕のお腹は異物感を訴えた。

 僕は耐え切れずにその場に座り込んで疼くまった。


「スリク!」


 ウィンクが近付いて来るのが分かる。

 しかしそれもすぐ頭から離れ、僕の思考は痛みに侵されていた。

 お腹にカリスの短剣が突き刺さっている。座り込んだ時にずれてしまったのか、そこからは血が溢れ出してきていた。

 さーっと頭に血が行き渡っていないのが分かる。目の前がチカチカし、立ち上がろうにも立ち上がれなかった。

 そんな状態になっているというのに、カリスは間髪入れずに攻撃をしてきた。

 僕はなんとか繋いでいる気力だけでウィンクの剣を振るい、それを避ける。しかしこれでは埒が明かない。

 僕は力を振り絞り剣を地に突き刺した。そして呪文を唱える。


「悪心を持つ者よ!その心を清め、2度と悪心を持たせるな!」


 気持ちを込めてそう言った。

 呪文を使えるほど体力は既に無かったが、気持ちが込もっていれば伝わるかもしれない、そう思ったからだった。

 僕はがくりと地面に倒れこんだ。


「スリク!しっかりして下さい!スリク!」


 ウィンクに抱きかかえられる。しかし、闇の重みに逆らうことは出来なかった。


「ウィン…。カリスを…お願い…」


 僕はそう言って、暗闇の中へと引きずり込まれていった。



読んでいただきありがとうございました!

感想や御指摘ありましたらお願いします!


予告より遅くなってしまいすみませんでした。

予定を間違えて見てしまっていたみたいです…


本当に昔はスリクは怪我しすぎですね…

今書いているところはこのころに比べてかなり平和です(笑

敵はもっと強くなったりしてはいますが←


次回更新は2/3(月)に出来たらと思っています。

宜しくお願いします!

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