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前科 交通事故の死神   作者: エントラル
第4章 死神の共鳴
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37 赤目のカラス

おっ、俺の出番は……?by 坂追 竜治

物語の都合上、裏手に回るとのことと存じ上げますが如何に?by 白庄 天海

でもまぁ、誰も合流は出来てないよな……。by 多代崎 翔

結局、多代崎らしき(ほぼ確定)人物の目撃資料以外仲間の行方は分からなかった。要は彼の発見したその他の資料はハズレ。似ているようで該当しない。まぁ逆にこの資料群に大きく載る方がおかしいだろう。みんな余計に目立つと他にいる死神からも狙われる。恐らく隠密行動を取っているに違いない。


だが、羊皮紙にメモは取っておく。後で詳しく検証するからだ。今は情報を出来るだけ集める。その一つに尽きる。


「その他怪しい情報は見つかった?」


「ねぇ、理性が要求する情報って何でそんな物騒なものばかりなの?」


ラウネンは自分の問いを問いで返してきた。その声は広い情報屋の中で盛大にこだまする。何故なら今、彼との距離が約30m位離れているからだ。


仲間の情報がこれ以上炙り出せないとなると、今度は敵対するであろう死神の情報をこの際洗っておく必要がある。死神という名の異世界転移者はこの世界に完全には馴染めていない。だから賢くない一部はどこかでボロを出して目立っているはず。


だからラウネンには容姿での情報収集から、不可解な事件での情報収集に変えるように頼んだ。その反応がこれだ。因みに自分も該当情報を見つけ次第、羊皮紙にメモする。


「ちょっとね……私が世界を渡る可能性が高いから……その下調べだよ。やっぱり万全を期した方がいいから」


ここは最もらしい理由を付けて上手く彼を誤魔化す。死神を自分から討伐することはしないが、極力戦闘は避けたいからだ。特にラウネン達をシャロボスに送り届けるまでは。


「なるほどね……」


ラウネンはそう呟きながら事件関連の資料に目を通していく。事件についてはやはり多いのか一ページに費やす時間が長い。軽犯罪から死刑相当のものまで多岐に渡る為、いちいち記録レポートに目を通さないといけないからだ。


理性も負けじと資料のページを捲る……振りをする。そうしながらゆっくりと本を棚から入れたり出したりを繰り返し、先程調べたクロモスク一帯のラベルが貼られた場所に戻る。そして棚からある本を引っ張り出した。



魔法士管轄区域総覧 クロモスク~ウォルト・バレーン



スクレーンからの頼みである魔術師などこでどう守っているかの情報。どうやら街道沿いに区分けがされているらしい。おまけに海を渡るから街道が自動的に切れる為、地名でピンポイントに見つかった。


早速調査を開始するが中身はファイルのように一枚ずつ切り離せる方式で集められていて、至ってシンプルなものだった。しかも一枚につき一人。詳しくは魔法士総覧で、という言葉が一番下にやはりある。詳しくはwebでというテレビでの謳い文句が脳裏に浮かんだ。


ただ、いきなり目を通しても理解出来ない。素人がプロ野球選手の名前を聞いてどれくらいの実力の人物かを当てるくらいに難しいだろう。だから代わりに収集用の羊皮紙を近くの紙の山から拝借し、名前と拠点の街名を書き留めておく。これならスクレーンの地理の知識を用いて何とかなる。


「理性、怪しい事件があったよ!!」


ラウネンから呼び掛けられ、理性は一旦羊皮紙をしおりにして本を閉じると彼の方を向き直って怪しい行動を悟られないようにする。ラウネンに隠すくらいのお願いだから猶更。


「ありがとう、ラウネン。でもこっちも見つかったからメモはお願いしていい?」


「分かった」


疑いの目を向けることなく彼は頷くと、背を向けて近くの机の上で羽ペンを走らせ始める。その表情がさっきの職人のような目と違ってどこか純粋な嬉しさが籠っているように見えた。


頼られていることがそんなに嬉しいのね……。


理性はそう思い思わず笑みを零すと、作業を再開する。正直さっきまで調べていた本棚にいることを怪しまれるかと思ったが、自分に目がいったのか見落としてくれたようだ。


さて……ここからが重要。ここからはラウネンにバレてはいけない。何故なら竜に関する事柄だからだ。


さっきの魔法士についての情報は調べ終えたので本は仕舞う。先の地名別総覧の本から察するに竜の目撃、及び討伐については全て事件として扱っているようだ。また、竜に関する事柄は“対竜情報目録総覧”という難解な名前の本に集められている記述が殆どであるせいで、その本とやらをこの膨大な書物庫の中から探さなければいけなかった。しかも自力で。


理性は一つのブロックの本棚を見上げた。棚一つだけでも数は簡単に百を超える。目で背表紙の題名を追うだけとはいえ、量に圧倒された。ラベルの力を借りて絞り込むことは出来ても、その枠組みに当たるものが何冊出て来るか知れたものじゃない。


結論。今日中では無理。明日に半ば希望を託すしか……ってこの場所に明日居られるのか、分からない。


カァ!!


「わっ!!」


突然、鴉の鳴き声が背後から聴こえ理性は素っ頓狂な声を思わず出してしまう。考えていたことが吹き飛んでしまい、いる筈のない存在に背筋が凍る。それからゆっくりと後ろを振り返った。


自分を脅かした奴は約1m離れたところの机の上に一羽ちょこんと乗っていた。正体は想像通り鴉である。黒い羽毛に赤い目……って赤!?


理性は常識を破られて驚愕し、鴉の目を覗き込んだ。野生なら何気なく目を逸らすのにこいつはこちらを見据えたまま動かない。その灼眼の目はこの薄暗い部屋の中、不気味に光っている。


カラス……。なんでこんな場所に?


しかし、向こうは彼女に考える時間を与えなかった。流石にじっと見つめられていることに警戒したのか、羽を広げてどこか飛んで行ってしまったのだ。頭上を越えていく際に一枚羽が彼女の上に落として。その様子を自分はただ茫然とそれを見送るしかなかった。


この世界の鴉ってどれだけ常識外れなのか。いやもしかすると蝙蝠の一種かもしれない。いやいやいや、それどころではない。何故鴉がこんな地下深い情報屋にいるのかが気になる。ここに来るにはあのからくり仕掛けの入口を通らないと出入り出来ないはず。


じゃああいつはどうやって……?


右手で落とした羽に触れて本物かどうかを確かめながら疑問が浮かぶ。


「理性」


「わっ!!」


また深く考えていたせいで不意なその声にも驚いてしまった。今度は大丈夫と自分を落ち着かせて振り返るとラウネンがそこにいた。どうやら悲鳴とカラスの声でこちらに来たらしい。幸い今は書物を手にしていないので普通に振る舞うことが出来た。


「大丈夫?どうかした?」


心配した口調で尋ねてきた。恐らく彼は情報屋に所属しているのなら、カラスのことくらいしっているだろうと思った。だから敢えてこんな言葉を口にしているのかと。


「カラスが出たんだけど。ここって巣か何かあるの?」


「カラス……?ここには蝙蝠一匹いない筈だよ。落ちてくる紙と間違えたんじゃない?」


えっ……。


首を傾げて困惑したような表情をする彼の反応に理性は身体に冷たいものが流れた。何もいない……!?だって……。


「今さっき鳴き声までしたのよ。ラウネン聴こえなかったの?」


証拠を提示して彼に問う。静かすぎる場所だ。当然鳴き声くらいは耳に入っている……筈。


「鳴き声?僕は理性の悲鳴しか聴こえなかったけど……」


聴こえていない。じゃああのカラスは一体……?ラウネンが存在を否定していることに驚愕し、恐怖する。幽霊という線を疑うが違うだろう。鳥の姿の下には影がちゃんと出来ていたし、それに……。


「じゃっ、じゃあ……ってあれ?」


最も信用できる切り札、右手に握られている羽を見せようと掌を開き、中を見て更に驚愕する。さっき、いやこの見せる瞬間まで感触も重さもあった。なのに……。


手の中には何もなかった。黒いカラスの羽が。


意見、感想がありましたら投稿お願いします。


カラスっていつの時代も不気味な気がする……。by ラウネン=ジルアロン

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