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前科 交通事故の死神   作者: エントラル
第4章 死神の共鳴
45/54

35.5 戦いの後で……

物語に一人はいるよね。噛ませ犬的ポジションの登場人物……。by 荒杉 理性


うわ……。俺より呆気ねぇ……。by 有雪 仁志

「2つか……手強かったけどよく俺に向かってきたよな。場所が場所だからか?」


翔は刻印の結果にそう呟くと、手に握っていた長剣を刻印に戻し、代わりにまた黒曜石の欠片を握って爆発した方に向かって走る。世界広しと言えど、こんな果ての不毛な土地にいる死神はやっぱり少ないのか。


死神の強化能力を使って走り数分後。彼は黒曜石を爆発させた地点に立っていた。爆発地点には大きなクレーターが出来ていて、森の中に穴を空けてしまっている。敵は跡形もなく吹き飛んだらしく、その姿は見当たらない。


目を閉じて黒曜石の欠片から発する共鳴音に耳を澄ませた。ここに来たのは事後処理。正確には相手が持っていた死神道具の回収だ。相手の道具の所有権はリセットされるが、倒したからといってこちらの物になる訳ではない。直接触れて刻印を刻む必要があった。


共鳴音はこちらが予測していた通り、クレーターの底から聴こえた。そのため穴まで歩いて中を覗き込む。穴の中にあるということは、つまり至近距離であの爆発を食らったのだろう。恐らくは即死だ。


穴の中には黒光りする塊が二つ。微弱だが、共鳴音を出している。


彼はそれを確認してぽっかり空いた穴に飛び降りた。深さは10メートル程。常人ならば死亡するレベルの深さだが、死神道具の強化能力を使っているのでふわりと底の地面に降り立った。


黒い塊の正体。一つ目はさっきまで厄介な攻撃をしていた円月輪、二つ目は黒い刃を持つ一振りの日本刀。どちらも爆発を受けたが、傷一つなくそこに転がっていた。


彼はそれらに手を触れて持ち上げる。円月輪は刃の上に、日本刀は柄に爆発した持ち主の刻印があったが、手で触れることにより所有権が消え彼の物へと以降する。


094

Freefall

Completed


から


001

Myself

Completed


へと道具の刻印が変わった。それはうっすらとした変化だが、一つの命が消えたことを意味している。


「……」


刻印の変化を確認すると、翔は自分の物になった日本刀と円月輪を無言で掌の刻印に封印した。人を殺していいなんてルールはない。決して……。


武器は回収したが、まだ爆発地点には残っていたものがあった。死神道具ではないが、確かに相手がそこにいた存在の証。


あったのは爆発で黒ずんだ一冊の手帳。カバーが皮で出来ていた為に残ったようだった。それを拾い上げてパラパラと捲るとあるページで手が止まる。


貝津 伊楼(Kaizu Irou)

性別:男

年齢:18

生年月日 1996年 2月9日

職業:学生

………


それはこの手帳の持ち主、つまりは自分と戦った人間の個人情報だった。丁寧に写真もついている。白い肌に黒髪のいかにも純粋な青年の姿がそこに写っていた。


「……」


彼は手帳を閉じ、一人穴の底で俯く。自分はもう6人もの人間を葬った。この手で……。それは普通なら犯罪の部類に間違いなく入る。


しかし……。


彼は拳を強く握った。そうしなければ自らを守り、生かすことは出来ない。それは死神道具全てに共通すること。この道具は何も即死攻撃や特異能力などのいい恩恵ばかり持っている訳ではない。


死神道具は今回の戦いのように共鳴する性質がある。その為に何処へ行こうと気付かれ、こうして戦いを挑まれてしまう。何故向こうが戦いを挑んでくるのか、それは自分も分からない。


でも……少なくとも……


「お前の犠牲は無駄じゃない。俺はお前が果たす筈だったものを代行する。だから静かに眠っていてくれ」


翔はそう手帳の写真の人物に言うと、手帳をまた元の地面に置いた。しばらくはこの場所に残り、いずれ土に還っていくだろう。それまでの墓標だった。


この小さな墓標に手を合わせると、ふと夜空を見上げた。純白の雪が降り、空はグレー一色だった。しかしその曖昧な色の中で彼は先に映っている筈の星空を探した。


みんな……何処にいる?俺は……ずっとこのまま戦い続けていくのだろうか?自分が消えるその日まで……。友達とは何週間も会っていない。果たして無事に生きているのか?


自分の中で不安だけが広がっていく。今は情報が少ない。探すには南下する必要がありそうだった。


「……理性」


翔は静かに目の前で死んだ少女の名前を呟いた。運命という鎖から解放できなかった少女。自分がこうなった以上、彼女もこの世界の何処かで生きているだろう。


理性。一度死んだ君は今、何を支えにして生きている?

意見、感想、誤字指摘があれば投稿お願いします。


自分の出番に備えて短歌を一つ創ろうではないか。by 白庄 天海


俺は場所が場所だからな……。by 坂追 竜治


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