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帰りたいけど帰れない!? 〜残念魔法使いと巨大な猫と小さな兄弟と平凡なおれの異世界ライフ〜  作者: 小野しば


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7 人さらいと朝ごはん

「チビがそばにいるなんて」


 ヒノコは腕の中で眠る緑の髪の少年をみて呟いた。

 チビはなかなかやっかいな妖精である。それを嫌というほどわかっていたので、屋敷に忍び込むために四つ足妖精の嫌いな光る氷を呑み込んで、姿を消したのに。


 同じベッドで眠られちゃあ、さすがにばれる。


 チビは、そろそろヒノコがこの少年を連れ出したことに気づくだろう。そして、すぐにブルーやタングステンにも知られてしまう。


「つまんない」


 ひとりしかめっ面になる。

 ブルーの屋敷は広大な沼地にポツンと建っていて、周りには木々も山も道もない。

 そんな中でヒノコは屋根を蹴り上げて飛んだ。そして何もない空に着地した様に見えた瞬間、彼の足元から大きな赤い鳥が現れた。猛禽類の持つ鋭いクチバシと爪があった。


 赤い鳥は背中にヒノコを乗せたまま翼を羽ばたかせて更に空へ舞い上がる。ヒノコはアオバを抱きかかえながらも微動だにせず、じっと屋敷を見下ろしていた。長い髪の毛が風に煽られる。

 ふと屋敷全体が青白く光りはじめた。

 気付かれた、と感じた瞬間に青白い光は大きな手になってヒノコごとアオバを掴んだ。


「あ」


 アオバを強く抱きこんだが、するりと持っていかれてしまう。青白い大きな手は音もなく緑色の少年をもといた場所へと連れ帰っていった。


「ちえっ」


 ヒノコと赤い鳥は、瞬く間に空に消える。






 そして、その様子を木々の隙間から覗き見る蝙蝠が一匹。


「あれが……」


 微かな呟きは夜空に溶けていった。



※ ※ ※



 ざりざりざり。

 頭を、顔を、何かがベロベロと舐める感触に驚いて俺は飛び起きた。


「うわ!」


 チビのふわふわの巨体の半分くらいがおれのからだにのっかっていた。お、重い。


「ぷにゃ」


 チビが目を細めてひと鳴き。か、顔がヨダレでべとべとする……。

 大きめの窓から朝焼けの赤い光が差し込んでいた。横を見るとリュウセイとユウがまだ眠っている。


「ごめんチビ、どいてくれる?」


 おれの上で丸くなろうとしているチビにそう言うと、ふわふわの塊は言葉を理解していると思ってしまうほどすんなりと横へどき、チビは兄弟のそばで丸くなる。


 ぐぅと腹がなる。おれは2人を起こさないよう音を立てないようにベッドからおりた。 


 螺旋階段をおりた先にブルーがいた。


「おはようございま……ふ」


 男は欠伸交じりの朝のあいさつをしてくる。眠そうだな。


「おはよう」

「ずいぶん早いですね」


 ブルーはゆったりと歩きながら洗面所に入っていく。おれはやつを追った。


「腹が減って目が醒めちゃって。悪いんだけどなにか食べるものってあるかな」

「ありますよ。朝食はいまから作るんですが、パンならすぐに出せますのでそれでいいですか」

「やった! ありがとう。食べたらおれも朝メシ作るの手伝うよ」

「おや」


 ブルーはちょっと意外そうな顔だ。


「簡単なのならできるからさ」


 もともと、父さんとふたり暮しだったので簡単な料理なら小学生のときからやっていた。

 それに、おれ自身が巻き込まれた立場で、それを盾にしてブルーに世話をするよう強要した身ではあるけれど。

 それにしても、赤の他人に対してブルーは良くしてくれていると思う。この世界に来てから世話になりっぱなしなので、さすがに気が引ける。

 手伝いくらいはしないとな。


「では一緒につくりましょうか」






 腹の減ったおれに、ブルーは柔らかいパンとミルクをくれた。拳ほどの大きさのそれをぺこりと平らげたあと、朝食づくりの手伝いをはじめる。


「割ってもらえます?」


 差し出された卵を割って、フォークでかき混ぜる。

 うーん、スーパーで売ってる卵と同じやつに見えるなぁ。


「このあと、どうする?」

「こちらを入れて混ぜてください」


 出された調味料を混ぜて、ブルーに言われる通りフライパンに注ぎいれる。火の通りを気をつけつつ、ゆっくり混ぜて固まりきらないうちにお皿にあげる。

 スクランブルエッグみたいなものかな。食欲のそそるいい匂いがする。

 その間、ブルーは細長いパンを切り分けたり、果物の皮を剥いてお皿に並べながら、


「リュウセイくんとユウくんは、もっと食べますかね?」


 などと呟いている。

 思ってたけど。ここっておれたちの世界と食べ物とか、家具とか生活用具とか、けっこう同じだよな……。


「なあ、この世界って、おれたちの世界の食べ物とか、他にもいろんなことが似てる……というか、同じでさ。本当にここは異世界……なんだよな?」


 やっぱりドッキリだった、とかない? 気になっていた疑問を聞いてみた。

 ブルーが顔を上げる。


「いろいろと共通点があるから不思議になりますよね」


 朝食を並べながら続けた。


「ヘルクスと地球は地続きにある世界になります。この世界はアオバくんたちの世界と並行していて、昨日も少し話しましたが、所々は繋がっているんです。だから、喚ぶことも出来きます」

「えーと、繋がりのある世界だから、食べ物とか言葉とかいろんなものも同じってこと?」

「そうなると思います。ただ……」


 ブルーがおれを見て言う。


「言語に関しては、ヘルクスの者が地球へ行くと自動的に地球の言葉が理解できるようになりますし、逆も同じでアオバ君達も自動的にヘルクスの言葉を理解しているんです」 

「そんな、むちゃくちゃな……ありがたいけどさ。なんでそんな便利なことになってんだ?」

「理屈は分かっていないんです」


 ブルーは眉を下げて笑った。

 都合が良すぎないか?

 そんな話をしながら朝食の準備を終えた。


「そういえば」


 男はおれの目をじっと見た。


「昨夜はよくねむれましたか?」

「うん? うん、眠れたよ」


 早く目が覚めたけど、まあ普通に眠れたと思う。それよりも……。


「昨日の夜、タングステンさんとなに話した?」


 ブルーとタングステンとの話しの途中で、おれたちはいわば強制的に上に連れて行かれ、文句も言わず素直に眠ったのだ。どうなったのか、聞く権利はあるよな。

 ブルーはちょっと神妙そうな顔で口を開いた。


「それがですね……」

「おはよう!」


 玄関の扉が勢いよく開き、タングステンが現れた。


「あれ? タングステンさんって帰ったんじゃ……」


 驚くおれにタングステンは歯を見せて笑う。


「予定が変わってな。ブルーの家に泊まった」


 どかりとテーブルにつく。ブルーが「早くから悪いね」などと言いつつ、タングステンの前に飲み物がはいったカップを置いた。

 改めてテーブルについたおれとブルー、タングステン。目の前にはさっき作った朝食。

 いまやっと夜明けから、朝になったところ。窓から差し込む光が明るい。


「昨日タングステンと話したんだけどね、私がアオバくんたちをオズに喚んだことが、ちょっとだけね。問題……というか、いや、実のところオオゴトになりそうで……本当に申し訳ないんだけども……」


 ブルーは目をキョロキョロさせて、声も段々小さくなっていく。

 またこのノリ?

 俺が口を開く前にタングステンが言った。


「アオバ、貴様たちの身の証明をするために神殿にいくぞ!」


読んでくださり誠にありがとうございます!


面白かった。続きが気になるかも。また読みたい。


と思っていただけましたら、

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正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもしていただけると、本当にうれしいです。


どうぞ、よろしくお願いいたします。

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