40 アオバとヒノコとスーイ
おれはヒノコとスーイと一緒に城を探検していた。
「なーんか、同じようなところばっかで、面白くない」
ヒノコがつまらなさそうに言った。
「…そういう建物だから」
スーイが応えた。
「フーン。……なあ、秘密の部屋みたいなのないの?」
「…知っててもヒノコには教えない」
「ケチ」
2人の遠慮のない物言いに、自然に湧いた疑問を聞いてみた。
「なあ、2人って友達なの?」
ギュンっ!
という効果音が聞こえてきそうな速さでこちらを向くヒノコとスーイ。
「…違う」「違う!」
「ーーっ、息ぴったりじゃん」
「…ぴったりじゃない」「ぴったりじゃない!」
「あははっ!」
あまりの息のあった言葉に思わず吹き出してしまう。
2人は顔を見合わせてから、おそろいで仏頂面になる。
ーーまじで仲良さそうなんだけど。
気を取り直すようにスーイが咳払いをして言った。
「…城の中、そんなに面白くないっていうのは同意できる、から…」
「でしょ! ちょっと遊べるところとかないの?」
「…ある。…着いてきて」
「まさかプールとは……!」
「いやっほー!」
ヒノコが高台からジャンプしながら水に飛び込んだ。大きな水しぶきが飛ぶ。
「わっ、あ……あはははは!」
頭から水を被り、思わず笑ってしまう。
「…準備運動した?」
スーイが端のスペースで手首や足首などを回している。
「あ、してない!」
ヒノコは水の中で、身体を動かし始める。
「…それじゃ意味ないし」
ジト目でヒノコを見るスーイ。おれも準備運動しつつ、いった。
「まさか、城の中にプールがあったなんて……」
しかも、おれたち以外誰もいない。まさに貸し切り状態だった。
「…正確にはプールじゃないんだけどね。…外海と繋がってて、避難経路の役割がある」
「へ〜、だからしょっぱいんだな」
さっきヒノコにかけられた水がょっぱかったのは海水だからだったのか。
「おーい! 早くこいよー」
ヒノコが遠くで叫んでいる。
「…許可はとってあるから、とりあえず泳ごう」
「だな! 今いくー!」
ヒノコに大きな声で返した。
おれたちはとにかく泳ぎまくった。競争したり、鬼ごっこしたり、モグリ対決なんかもした。
スーイが途中で人が1人乗れる空気を入れたボートをどこからともなく出したので、おれたちはボートに寝そべった。
「気持ちいーなー……」
ぷかぷかと海面に揺られてつい眠くなる。このままだと寝てしまうと横を見ると、ヒノコとスーイもぼーっとした様子だった。
「ヒノコって、カマード博士と知り合い……なんだよな?」
おれはふと、今さら浮かんだ疑問が口から出た。
「そーだよ。おれを造ったのが博士ね」
「あ……温泉から出た時に話してた博士って」
「うん。カマード博士」
ヒノコは当然のように頷く。
「そうなんだ……」
造った……。ヒノコはほんとに人造人間なんだ。その言葉にどこまでの重さがあるのか分からないけど、おれは未だにこのファンタジーな世界に慣れていなかった。
「でもまさか博士が水の国に来てたなんてさ。おれ、知らなかった」
不服そうなヒノコの横で、スーイは驚く様子はない。
スーイもヒノコの事情を知ってるのかな?
「……ヒノコとスーイが、まあ……友達じゃないってのは分かったけど、付き合いは長いのか?」
お互いに何とも言えない顔をする2人。少しの間のあと、スーイが口を開いた。
「…僕とヒノコは同じ神子候補同士ってだけだよ」
うんうん、とヒノコが大きく頷いている。
「…何回か顔を合わせたくらい」
「そーそー」
普段騒がしいヒノコが妙に大人しい。
……なんか話したくないことでもあるのかな。
「そっか」
もうこの話はやめとこう。
そう考えた時、ずっと言わないとと思っていたことを思い出す。
「……あのさ、2人とも、昨日はありがとう」
「「??」」
ヒノコとスーイはハテナ顔だ。
え? もう忘れてる?
「女の人と蝙蝠が来て……色々あったじゃん。その時のことだよ」
「あー、あれ!」
ヒノコは今思い出したとう顔だ。
「…当然のことをしたまでだし」
「だよな」
スーイがなんでもないように言うと、ヒノコがニコニコと同意した。
……。なんでコイツらって……いや、コイツらだけじゃない。
この世界に来てから、何も分からないおれやリュウセイとユウを守ってくれるブルーとタングステンやトゥビット先生。可愛くて思わず安心してしまう存在のチビ。それに、ライさんも……。
「…言っておくけど。あの時ヒノコが出てこなくても、僕がなんとかしたから」
「強がんなって」
「…本当のことだよ」
「かわいくねー!」
「…かわいくなくて結構」
……なんでこんなにやさしいんだろう……。
おれは2人のやりとりをぼんやりと眺めながらそう思った。
地下にあるプールでたっぷりあそんだあと、併設の部屋で身支度を整えていた時だった。
コンコンコン。
誰かがノックする音が聞こえた。おれたち3人は顔を見合わせる。
コンコンコン。
みんな着替えも終わったし、ドアを開けるのは問題ないかな? 城内だし、安全……だよな?
「…誰? …この部屋は使用中だよ」
スーイが声をかけても返事はなく、時間だけが過ぎていった。
「開けてみる?」
「開けてみようぜ。なんかあってもおれがアオバを守るし」
「いや、守るって。大丈夫だから。……うーん、人がいる感じがしないよな」
「…そうだね。…そもそもこの区画は今、僕たちしかいないはずなんだ。…うん、人の気配もないし、いつまでもここにいても仕方ないから出よう」
小声で相談しあった結果、おれたちは部屋を出ることにした。
スーイが慎重にドアを開け……ようとしたら、半分くらい開いた所で動きが止まった。
「スーイ?」
「…………」
「スーイ! 早く行けよ」
おれの後ろでヒノコが言った。
「…待って。…ドアの前に人が倒れてる」
「ええっ!?」
「ひとぉっ?」
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