39 妖精と力
翌日。
目をこすり、眠そうな兄弟と一緒におれは食堂へ向かった。
それにしても……リュウセイとユウは妖精になったというが、前に沼の屋敷で寝泊まりしていた時とまるで変わらない。
妖精っていうから、どんなものかと思ったけど、人間とそう変わらないのかな?
食堂にはすでに皆あつまっていて、おのおの朝食をとっていた。
「アオバ、おはよー!」
ヒノコがこちらに気づき、手を振っている。
「おはよう、ヒノコ」
ヒノコの横にはカマード博士が座って、優雅な仕草でお茶を飲んでいた。
こちらに気付き、昨日の騒がしさとは打って変わって静かに挨拶をしてくる。
「おはよう」
こ、この人、食堂に来たりするタイプなんだな……意外だ。
「お、おはよう」
とりあえず、席わろうと辺りを見回していると、ヒノコが言った。
「こっちで一緒に食べようぜ」
「そうだな……リュウセイ、ユウ。ヒノコのいる席に座ろうか」
正直、カマード博士もいるのが気になるけど、まあいいか。
おれは席についてから、リュウセイたちの分も含めて朝食を取りに行く。
3人分のサンドイッチや飲み物をとってから戻ると、兄弟とヒノコ、意外にもカマード博士も含めた4人で盛り上がっていた。
「すご、もっかいやってみて」
ヒノコが手のひらにろうそくの光みたいな小さな炎を出す。
「いいよ」
「いいよー」
リュウセイとユウが手を繋ぐ。するとフッとヒノコの炎が消えた。ヒノコは手に
力を込めるような動作をする。
「ンッ……ーーだめだ!」
「興味深いねえ!」
カマード博士がその様子を見つめて頬を染めている。
一体なにをしているんだろう?
「やっぱ使えないや。終わりにしていいよ」
ヒノコが兄弟に向かって言った。
兄弟は頷いて、お互いの手を離すと、ヒノコの手の平から巨大な火柱が飛び出した。
「あぶなっーー」
「こら」
おれが兄弟を抱きよせたと同時に、カマード博士が炎の柱を出しているヒノコの手を握った。すると、うそみたいに炎が消える。熱さも感じなかった。
「だめだよ、ヒノコ。力の調整を意識しないと」
「ごめん」
カマード博士はヒノコの手を離した。
ヒノコはしょんぼりしたあと、兄弟にも謝った。
「何してたんだよ?」
リュウセイとユウに怪我はなかったので椅子に座らせる。
「アオバ! リュウセイとユウ、すごいんだよ! おれの力を消したんだ」
ヒノコは目をキラキラさせている。
どういうこと?
恐らくハテナ顔のおれの顔を見たカマード博士が補足するように口を開いた。
「リュウセイとユウの能力のことだね。簡単に言うと、相手の魔力を消失させることができる。一時的にだけどね」
「2人にそんな力が?」
「妖精の力だねえ。フォッシルウッドと対峙した時も発動していたようだ」
「あの時にも……って、アンタ、あの場所にいたっけ?」
いなかったよな、確かに。
「ヒノコに聞いたんだよ」
「おれ? 博士には何も言ってないよ」
「ふふ、君たちのこと、見学してたんだ」
カマード博士が怪しく笑った。
朝食を食べ終えた頃、ブルーとチビがやってきた。兄弟はチビに嬉しそうに抱きつく。
「チビー!」
「あいたかったあ」
チビ「ぷるるるる」と鳴いて、満面の笑顔の兄弟のほっぺたを舐めた。
ぐるるるるるるる……。小さなドリル音みたいなものと、微かな揺れを感じるんだけど……。
「え? 地震?」
おれが呟くと、ブルーがチビの頭を撫でながらいった。
「いえ、これはチビが喉を鳴らしてる音ですね」
「さ、さすがおっきい猫なだけあるな。ゴロゴロ音がまじで地震みたい」
ニコニコとチビたちの様子を見ていたブルーが、真面目な顔でカマード博士を見た。
「カマード博士、今日は城内にいるんですか?」
「うん、そうだよ」
「そうですか。私は神殿に向かいますので、もしもの時は頼みます」
「意外だねえ。ワタシのこと、信じてくれたのか」
「……ええ。では」
ブルーは短く返すと、今度はこちらを見た。
「ということでして……今日1日、私は神殿にいきます。アオバくんは自由にしてもらって大丈夫なのですが、城から絶対に出ないでくださいね。もし何かあったら、私もすぐに駆けつけますから」
「わかった」
いつなはなく、真剣な眼差しにどきりとした。いつも抜けている雰囲気だから、真面目な様子だとびっくりするんだが。
「チビもいっちゃうの?」
ユウが眉を下げながら質問する。
「いえ、チビはこちらに残りますからね」
「やったあ!」
「一緒にいられる?」
「もちろんです」
そして、ブルーは去っていった。
少しして、スーイが現れる。
「…アオバ、おはよう」
「おはよう! スーイは朝ごはん食べたのか?」
「…うん。…アオバは?」
「おれはもう食べたよ」
「…そう」
スーイはそのまま動かず、何か考え込む。
何だろう。おれに用があるのかな?
「…アオバ。…城の中を案内するから来て」
「アオバ、一緒に遊ぼう!」
またまた同時に発せられた言葉に2人は、互いの顔を見て黙り込んだ。
「「…………」」
ヒノコが胸を張った。
「おれが最初に誘ったんだぜ! だからアオバはおれと一緒に遊ぶの!」
「…最初に声かけたのは僕だから、アオバは僕といく」
「お、おい……」
睨み合うヒノコとスーイを見て、リュウセイとユウがチビと戯れながら言った。
「アオバにいちゃん、モテモテだね!」
「いや、リュウセイ。言い方おかしいから」
「もてもてー」
ユウがにこにこしながら復唱する。
「いや、だからね」
この間にもヒノコとスーイが言い合いをしている。周りの知らない人達がチラチラとこちらを見ている。
「アオバにいちゃん、ぼくたちはチビと一緒にいるよ。何かあったらにいちゃんのところへすぐにいくよ」
リュウセイに心を読んだような事を言われて驚いた。ユウも真剣な顔で頷いている。
「……わかった。その時は頼むな」
おれは2人の頭をポンと撫でた。力強い眼差しに、この兄弟が妖精であることを強く実感させられた気がした。
一連のやりとりを面白そうに見ているカマード博士。
うーん、念の為、声をかけておこう……。
「えっと、ヒノコ、連れて行っても平気?」
「もちろん、どうぞ」
カマード博士は何でもないように答える。
よし。じゃあ……。
「2人とも、一緒にいくぞ!」
ヒノコとスーイは驚いた顔でおれを見た。
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