36 撤退と怪我
スーイがおれとブルーの元に駆け寄る。
「…アオバ、大丈夫?」
「あ……おれは平気だ。それより……!」
一体どうなってるんだ? 急にリュウセイとユウが現れるなんて!
兄弟は今も女の人と対峙している。
「そっちを助けるの?」
女の人が静かに言った。
「「うん」」
2人は即答する。その時ーー。
「人の国に勝手に入られては困るな!」
タングステンが城内広場の方からゆっくりと現れた。後ろには大勢の兵士が連なっている。
「ーーじゅうぶんだろ!」
コモリがフォッシルウッドと兄弟の間にすべり込んでくる。
「逃げるなよっ」
ヒノコがピーに乗ったまま空で叫ぶが、コモリはそのまま、女の人を抱き上げて、飛んだ。空に開いた穴をくぐりあっという間に離れていく。
逃げるフォッシルウッド達を、タングステンは追わなかった。
「…いいの? あれ、ほっといて」
スーイは、こちらにやってきたタングステンに聞いた。タングステンは鼻を鳴らして笑う。
「よい。そのままにしておく。幸い、被害も少ないしな。お前たち、破壊された広場の修繕を優先して行え」
タングステンは素早く背後の兵士に指示を出す。そして、改めてこちらを見た。
「スーイ。そしてヒノコ。礼をいう」
スーイは無表情のまま、頷く。
ヒノコは珍しく真面目な顔で言った。
「アオバを狙ってた。また来るかもしれない」
「おれ?」
「うん。ーーって、いつまでそうしてんのさ」
「へ?」
ヒノコがどこか面白くなさそうな表情でおれを見て言った。
そうだ、おれ、ブルーにしがみついたままだ!!
「あっ、ごめん!」
慌てて離れようと、前を向くと間近にブルーの顔。
あれ……顔色悪くないか?
「ぐっ……」
「ブルー!」
おれが身を離した拍子に、ブルーの身体が倒れかけた。慌てて抱きとめる。
お、重い……!
手を背中に回すとぬるりとした感触があった。
ーー血の匂い! 何で気が付かなかったんだろう!
「ブルーの背中、見てくれ!」
叫ぶとタングステン達がすぐに察してくれた。
「…壁にぶつかった時にできた傷だね」
スーイが傷跡を見て呟く。
「ブルーさん、大丈夫なの?」
「いたい?」
リュウセイとユウもいつの間にか近くに来ていて、心配そうにしていた。タングステンが、
「案外深いな。城へ運ばせよう」
と言ったその時、おれの腕の中のブルーがポツリと呟いた。
「これは当然の罰だ……」
「ブルー?」
フッと更にブルーの身体が重くなる。
思わずブルーを抱えたまま膝をついてしまう。
スーイとヒノコが慌てたようにおれを支えようとしてくれたが、おれはそれよりもーー
ブルー、大丈夫、良くなる、良くなる……、良くなれ!
「ブルー!!」
これはおれの叫び声。そう気付いた時に光りが満ちた。
眩しい!
思わず目をつむった。光りがだんだんと消え、目を開けると、おれの膝のうえに穏やかに眠るブルーの顔があった。
「あ、れ?」
なんだったんだ、今のは。
「アオバにいちゃんが光った!」
「ひかった!」
「ブルーの傷が消えているぞ!」
「…アオバがやったの?」
「ーーやっぱりできたじゃん! アオバ!」
おれとブルーを取り囲み勝手に喋りだす皆におれは慌てた。
「え、なにがなんだか。どうなってた?」
「だから!」
ヒノコが身を乗り出しながら言った。
「おれの時みたいに、ブルーを治したんだよ!」
ほらみろ、と言わんばかりの笑顔のヒノコ。
「おれ?」
ブルーの背中をそっと触ると、たしかに傷は消えていた。
「貴様、こんなことができたのか?」
驚きの声を上げるタングステン。
「なんか、そうみたいたけど。あれ、おれ、皆に話してなかったっけ?」
「聞いてないよ!」
「ひかってた! すごい!」
兄弟が揃って言った。
「な! すごいよな!」
ヒノコがまるで自分のことの様に胸を張る。
「いや、ただ、無我夢中で」
「また、アオバ。そんなこと言うー」
頬を膨らますヒノコ。
「まあ、落ち着け、ヒノコ。ここにいる全員がアオバが行ったことを見ていたのだ。何と言おうと、ブルーのケガは貴様のおかげで治った。ありがとう、アオバ」
タングステンのホッとした表情に、おれも力が抜けた。そうだよな……とにかくーー。
「ーー良かった」
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