33 神子の椅子と女の子
高い天井から垂れ下がったいくつもの細長いフラッグが揺れている。フラッグの色は様々で、部屋の静かさと相まって幻想的だで目を奪われた。
「すごい……! っとーー」
自分野声が意外に大きく部屋に響いて思わず口を塞いだ。
「ーーごめん。大声出して……」
なんとなく、うるさくしてはいけない気がして小声になる。
「それにしても、おれたち以外、誰もいないな」
「…今、ここはほとんど使われていないからね」
「そっか……。ところで、このフラッグはなんなんだ?」
「…フラッグは歴代の神子たちをイメージしてる。下の方に神子名が刻まれてるんだ」
「神子名?」
「…神子になると、名前をもらう。神子の間はその名前を使うことになるんだ」
「へえ……あれ、そうなると本名は?」
「…もちろん、残ったまま。…神子の家族や近しい人たちからは本当の名前で呼ばれることがほとんど」
なんか芸名とかペンネームみたいだなあ。近くのフラッグを見ると、確かに文字があった。
「……ほんとだ。文字が書かれてる」
ちなみになんて書いてあるのか全くわからない。
「フラッグひとつに歴代の神子1人ってことは、神子って沢山いたんだな」
神殿にはお世話になっていたけど、全然知らなかった。
スーイが奥を指さした。
「…あそこに見えるのが『神子の椅子』だよ」
スーイが見やる先には、ポツンと白い椅子があった。
「あれが神子の椅子……。なあ、この部屋ってなにをするとこなんだ?」
「…神子関連の式典に使われるのがメイン」
「そうなんだ。神子がずっとここにいるわけじゃないんだな」
おれは改めて奥にある神子の椅子に目を向けた。
「…あ……。アオバ」
「どした?」
「…ちょっとだけ、神殿で手続きしないといけないことがあったことを思い出した。…少し行ってきていい? …そんなに時間はかからないから」
「もちろん。おれはここで待てばいい?」
「…うん。…それとも、僕と一緒に行く?」
「いや、ここで待つよ。この景色、まだ見ていたいし」
「…わかった。…神子の椅子には座ったらだめだけど、他は自由にしてていいから」
そうして、スーイは部屋を出て行った。
さて、どうしようかな。神子の椅子を近くで見たいし、行ってみよう。
誰もいない部屋、神子の椅子の近くまで歩いていくとーー。
「アナタだれ?」
急に、子供の声が背後から聞こえた。振り向くと、白いワンピース姿の女の子が立っていた。
ーーさっきまで、おれ以外、人はいなかったよな?
黙ったままのおれに女の子がもう一度言った。
「だれ?」
「あ、アオバ」
「ああおば?」
「ーーはは、違くて。アオバっていうんだ」
小首を傾げて呟く無邪気な様子に思わず笑ってしまった。
「アオバ」
「うん。君は?」
「あたし? あたし……」
女の子は黙り込んでしまう。どこか不安そうに目を泳がせる。
うーん、もしかして迷子、とか?
「お母さんかお父さんは一緒じゃない?」
しゃがみ込み、目線を合わせた。揺れる黒い瞳がおれを見る。肩まで切り揃えられた白い色の髪の毛が揺れた。
……この子、肌も驚くくらい白い。白い髪に黒い瞳。白い肌と白いワンピース。まるで白黒の世界にいるみたいなーー。
「? あたしだけよ」
女の子は俺の横を通り抜けて部屋の奥にある神子の椅子にストンと座った。
「あ……」
神子の椅子には座らない方がいい、ってスーイが言ってた……よな。
「そこは座っちゃいけない場所なんだって」
おれの問いに女の子はキョトンとした顔をした。
「降りるの手伝おうか?」
「なんで? あたしの席だよ、ここ」
「君の?」
「うん。この席で、待ってるの。ずっと」
「それってどういうーー」
急に天井から垂れたいくつものフラッグが大きく揺れた。女の子がフラッグと重なり見えなくなる。
そしてフラッグの揺れがおさまった後、神子の椅子だけが残っていた。
読んでくださり誠にありがとうございます!
面白かった。続きが気になるかも。また読みたい。
と思っていただけましたら、
下にある☆☆☆☆☆マークのところから、物語への応援お願いできればと思います。
正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもしていただけると、本当にうれしいです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。




