25 再会と光る力
「アオバじゃん!」
金髪の女の子はおれを見て大きく笑った。あ、笑顔、かわい……て、あ?
「だ、だれさん?」
「は? おれ! ヒノコ!」
ぷくりと頬を膨らまして言う飾り気のない姿におれはようやく気がついた。
「ヒ、ヒノコ……」
ほっとして、力が抜けた。湯船に膝をつく。
よ、よかった……犯罪者にならないで。
「おい、大丈夫か?」
急にしゃがみ込んだヒノコがおれを気にする姿をみて、本当にホッとした。
おれ、変な笑い方をしたと思う。
「ヒノコでよかった……」
「は? どーゆー意味?」
「いやだって。女の子かと」
「! あー。そーゆー、ね」
ヒノコはちょっと面白くなさそうな顔だ。
「ごめん」
「……ん、別にいーよ。それよかさ!」
ヒノコは、パシャンと音を立てながら言った。
「おれ、アオバに会いに来たんだ!」
「へ? おれ?」
「うん。こんなとこで会うとは思ってなかったけどさ。神殿に会いに来たらいなかったから、風呂にでも入るかーって寄ったんだよね」
「そしたら会えた」とニッコリ笑う姿におれもつられて笑ってしまう。
「おれになんか用だった?」
「うん、あのさ。アオバと一緒に緑のクマの巣から出て神殿に帰る途中でおれ、ダウンしちゃって。その時、アオバが光って治してくれたよな」
「そういえば……」
思い出した。そんなこともあった、けど……。
「あれは治したっていう……のか?」
思い返してみてもあのときはただ夢中で、どんなふうにヒノコを助けたのか分からないのだ。というか、おれが助けたのかも怪しい。
「治したでしょ! でさ、あれをもう一回やってほしいんだよね」
ヒノコは真剣な顔でおれに詰め寄る。
「いや、あのときは無我夢中だったから。ほんとにできるかどうか」
風呂に入っている最中なのに構わず近寄る奴からそっと離れる。
「できるって! お願いっ」
離れた分だけ、追うように近づいてくるヒノコを避けるように更に離れるが、とにかくグイグイとくる。
なんなんだっ……!
「近っ…」
バシャン、とお湯が跳ねる音が聞こえたと思ったら、おれはヒノコによって壁に追いつめられていた。
「アオバ」
「っ……」
逃げ出そうにも両の腕に囲われてしまってなんとも出来ない……というか、頭がクラクラとしていて…あれ?
眼前には顔を真っ赤にしたヒノコが潤んだ目でこちらを見ており、おれもクラクラと目の前が光り始めて……。
バシャッ!
本日最大のお湯が跳ねる音がして、おれはヒノコごとお湯の中に倒れ込んだことをかろうじて理解した。
「ブハッ」
「ゲホゲホッ」
急いで湯船から立ち上がる。お互いに頭の先までびっしょり濡れた姿をみて一言、二言。
「とりあえず出ようぜ……」
「そーしよ……」
間違いなくのぼせてる。
あのあと、明らかにのぼせました、という顔で風呂から出てきたおれとヒノコを見たオバチャンが、「さっさと休みな!」とおれたちに飲み物をくれた。お礼を言いフラフラの足どりでヒノコをひっぱりながら休憩室へ向かう。
休憩室は学校の教室くらいあるスペースで、小上がりになっており、入り口で靴を脱いで入るみたいだ。
奥にでかい茶色と白の毛玉以外はだれもいなかった。
「チビ〜…」
ふわふわの固まりに近寄り、全身をうずめる。チビはピクリともせず許してくれた。
「チビ、優しいよ……ありがとうな」
両手でなぜると「ぷるにゃん」という声とゴロゴロ……と振動が伝わってきた。
か、かわいい。
隣でへばっていたヒノコも幸せのゴロゴロ音に反応し、白い手を伸ばしてチビの毛を触っている。
「おい、もう少し飲んだほうがいいよ」
飲み物の入ったボトルをうつ伏せ状態のヒノコの頭にコツンとあてた。
「ありがと」
むくり、と起き上がってボトルを受け取るとヒノコは素直に飲んだ。
「っはー……なんか、やっと生き返ったかも」
「ほんとだよ。風呂は最高だけど入り方は気をつけないとなー」
呆けたおれにヒノコが言った。
「おれ、博士に作られた人造人間でさ」
「人造、人間?」
「定期的に電池切れみたいな状態になるんだけど、博士に入れてもらってんだよね」
電池切れ? 博士? 入れ…?
……いや、これっておれが聞いていい話なのかな?
何も言えないおれを気にせずヒノコは続けた。初めて見る表情だった。
「あの時、まだ先だと思ってた電池切れがきちゃって、困った事になったんだけど。でも、アオバが助けてくれた。アオバはホントに自分がやったことかわかんないかもだけど、これは事実だよ」
「⋯⋯」
「嬉しかったんだ」
「うん」
これは、茶化したりしたらいけない雰囲気だ。
「正直に言うけど、ホントに力があるのかはわからない。でもおまえに困ったことがまたあれば、おれのできる限りの力で助けになる」
おれはいまの精一杯の言葉をはいたつもり。
「…………」
ヒノコは、だまっておれを見てにやりと笑った。
「ありがとう」
なんだか力が抜けて仰向けに倒れて、息を吐いた。ヒノコもおれの真似をして、コロンと横になる。
「アオバっ、ありがとな!」
2度目のお礼。
……コイツは何がそんなに嬉しいのか……。
「もういいよ、気にすんなって。ーーにしても、こっちに来てからやっぱり変なことばっかかも」
天井をぼんやり見た。
「光る力のやつもそうだし、見た目もさー。召喚されると変わるってことなのかな」
思わず、ぼやきが口から出る。
「光る…治す力ってはじめから持ってなかったの?」
ヒノコが驚きの声とともに聞いてくる。
「持ってないって。そんなファンタジーな力」
「⋯⋯見た目も変わった?」
「言ってなかったっけ? 髪の毛と目の色、こっちに来たとき変わったんだ」
「緑に?」
「そう」
ヒノコは一瞬だまってから口を開く。
「それってーー」
「アオバくん! 大丈夫ですかっ!?」
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