15 中庭の公園と遊び時間
「これって、チビもたべる?」
リュウセイがポッキーのような細長い焼き菓子をつまんで言った。
「それは食べませんよ」
「えー? これは?」
ユウがグミのような弾力のある飴玉みたいなお菓子をかかげた。
「それも食べないです」
「えー! チビにもお菓子あげたいよ」
「あげたい!」
ひと通りお菓子を食べ終わったちびっこたちは、今度はチビに何か食べさせたいらしく、しきりにブルーに聞いていた。
トゥビット先生とタングステンが部屋から出ていったあと、残ったおれたちはお菓子を食べながら2人を待っていたが、なかなか戻ってこない。
暇そうなおれたちに気づいてか、ブルーが言った。
「ふむ、先生たちは時間がかかりそうですね」
そして、立ち上がり、空のお皿を片付け始める。
「あ、おれも手伝うよ」
おれが言うと、ブルーはにこりとして「アオバくんたちは、移動する準備をしてくださいね」とのこと。
「どっか行くの?」
リュウセイの問いにブルーは答えた。
「はい。ちょうど子どもたちが遊べるような公園がありますので、そちらに行きましょう」
「こうえん? いきたい!」
ユウが飛びはねた。
「はい。行きましょうね」
「おれも行っていい?」とリュウセイが聞くとブルーは「もちろん」も頷く。そして、おれを見て言った。
「アオバくんも行きましょう」
「おれも?」
「アオバにーちゃんもいっしょ行こ!」
ユウがおれにしがみつく。続いてリュウセイもおれの服を握った。
「⋯⋯そうだな! 行ってみようか」
うれしそうに纏わりつくリュウセイとユウの様子に、兄弟がいたらこんなだったのかなぁ、と思った。
トゥビット先生の部屋を出てからおれたちは神殿の中にある公園にやってきた。
「きゃー!」
ユウは巨大な遊具に目を輝かせて一目散に走り出した。
「ぼくも!」
リュウセイも弟のあとを追う。
「でっかい公園だなあ」
おれは辺りを見回して言った。
ユウが食いついた大きな遊具は、恐竜みたいな生き物のかたちを模しているようで、長い首は滑り台、胴体部分はジャングルジム⋯⋯といった、目で見ても心躍るデザインだった。他にも、鉄棒、横になった丸太⋯⋯といろんな遊具があって楽しそう。さらに遊具を囲むように広いスペースまである。
おれん家の近所にもこんな大きな公園はなかったと思う。
「ここって神殿内なんだよな? 信じられないくらい広いんだけど⋯⋯」
「はは。ですよね。神殿の中庭にあたるんですけど、ここの階層はほぼ公園しかないですからね」
「ふーん?」
よく分からないが、まあリュウセイたちが楽しそうだから、ま、いっか。
「ねー、アオバちゃんもあそぼ!」
いつの間にか戻ってきたユウがおれの服を引っ張った。
「あれ? 兄ちゃんはどした?」
「ん」
ユウが指差した先に広場の真ん中で手を振るリュウセイ。
「鬼ごっこしよー!」
リュウセイが大きな声で叫んだ。
「やろー!」
おれを見上げて笑うユウに断わる理由もなく頷いた。
「おう!」
そのまま3人で鬼ごっこを始めたのだった。
そしてしばらくして、どうなったのかというと⋯⋯。
20人の鬼ごっこと規模は拡大していた。おれとリュウセイ、ユウの兄弟以外に、兄弟と同じくらいの年頃の子どもが何人か集まって「一緒にあそぼ」の連続でこうなったのだ。
「つっーかまえた!」
おれの足にしがみついてきたのは、ワニの尻尾のようなものがある男の子。大きく笑った口にはキバが光っている。
「はー、まーた、捕まっちゃったか。じゃあ、数えるぞー!」
子どもたちは「キャー」と声を上げてチリヂリになる。
「いーち、にーい、さーん⋯⋯」
数える間、子どもたちの様子を見る。リュウセイは、青い肌の男の子と笑い合いながら、おれから距離をとり、ユウは同い年くらいのネコ耳が生えた女の子と男の子と一緒に、近くの低木の影に隠れている。
……まあ、隠れているつもりなのは本人たちだけで、丸見えだ。他にもたくさんの子どもたちが思い思いの場所に逃げていた。
「⋯⋯よーし! いくぞー!」
おれは、大きな声で言うと、本気で走り出した。チビたちが相手だからって手加減はしない主義なのだ。
子どもたちの笑い声が響いた。
「休憩させて!!」
ゼーハー、と息を切らせたおれは子どもたちに懇願した。あれから全力疾走を繰り返し、とうとう限界がきた。
そう。とにかくめちゃくちゃ疲れた!
子どもたちは「えー」と声を上げた。
「だ、大丈夫ですか?」
疲れ果てたおれを見かねてか、心配そうに声をかけてくるブルー。おれはハッと気づき、やつをじっと見る。
「な、な、なんですか?」
「ブルー⋯⋯アンタもあそべ!」
「ええっ?!」
「みんなー、このお兄さんも遊んでくれるってよー!」
叫ぶと、子どもたちがワッとブルーに集まった。
「わー!」
「なにするー?」
「たたかいごっこがいい!」
「やりたい!」
「やだー、花かんむりつくりたい」
「えー?」
子どもたちは新たに現れた遊べる大人に言いたい放題である。
「チ、チビ⋯⋯」
目を白黒させ、ブルーは傍らにいるチビに助けを求めるが、すでに巨大なネコのそばには子どもたちが集まっていた。
「かわいいー」
「ふわふわ」
ふわふわの毛並みを笑顔でなでる子たちに、チビは一切動揺せず、いつも通りのすまし顔だ。さすが、チビ。
うん。おれもこっちの輪に入ろう。
「ブルー、頼んだ」
おれが言うと、男はグッと決心した顔。
「分かりました⋯⋯!」
ブルーは子どもたちに向かって言った。
「闘いごっこ⋯⋯やっちゃいます?」
意外な提案。リュウセイが飛び上がって喜んだ。
「やるー! やったー! ブルーが悪ものね!」
「ふふふ、いいでしょう!」
ブルーは懐から、お箸くらいの短い棒を取り出して、軽く振った。
「⋯⋯いでよ、土人形たちよ!」
言葉とともに、丸々とした小さな人型の土の塊が何体も現れる。
おお! さすが、魔法使い!
「わたしは悪い魔法使いですよ! あなたたちを土人形でやっつけてやります!」
声音まで変えてブルーは声をあげた。ノリノリじゃん。
子どもたちは大喜びで、各自ヒーローに扮して、土人形をパンチしたりキックしたりやりたい放題でたたかいごっこを始める。
「ねーねー、こっちきてー」
おれは花冠を作りたいという女の子たちに呼ばれて、そちらを手伝うことにしたのだった。
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