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愛の余罪 〜同居する事になった毒舌な美少女女子高生に、雑魚と揶揄われて困っています〜  作者: ラストジェネレーション
第一章 

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第十八話 忘れた再開

 穏やかな朝だった。同じ病室の星野が近くにいる安心感でいつもよりすぐに寝付けたのも大きいと思う。彼女のいるベッドに目をやると、既に使用済みの衣服が綺麗に折り畳まれていた。


「さすが、家事代行サービスやってるだけあって美しいな..。今度教わるか?」


 とはいえベッドから出れるわけもないのでそのままじっとしていると、渚沙が二人分、病院食の乗ったトレーを持ってやって来た。看護師さんの仕事を奪ってはいないだろうか?


「おはよう。朝ご飯を持ってきたよ。試しに味見したけどやっぱり薄いね。あまり美味しくはないかな」


「健康的で良いんじゃない? 星野って案外偏食なのか?」


「まぁ、料理はそこそこ作れるし、味にはうるさいかもね。皆川はそういう女の子の事嫌い?」


「嫌いじゃないよ。実際に渚沙の作った料理、美味かったから」


「えへへ..。ありがとう。じゃ、早速食べようか。腕動かないでしょ? アーンしてあげる」


「気恥ずかしいなぁ。看護師さんにお願いしてもらった方が良いんじゃ..」


「だーめ。私がやるって決めたの。口開けて。暑いから、冷ましてから入れるね」


 パク


「本当に申し訳ない..」


「別に良いよ。皆川の役に立てるんだったら何でもする。そういう交換条件だから」


「交換、ね....」


 あの取り決めを脳内で反芻する。僕は星野と友達の演技をし勉強を教える代わりに、彼女は僕の言う事を何でも聞いてくれる。やはり、不釣り合いにも程があった。


「まぁでも、正直すごく助かるよ。本当にありがとう」


「ううん。例には及ばないよ。後でキッチリお返しして貰うから」


 僕が全ての料理を食べ終えると、彼女は鞄の中から学校の教科書を取り出した。


「来週数学のテストあるんだ。二次関数って奴、全然分からないから教えて」


「了解..。二次関数ね。まぁ確かに躓く人多いんだよねそこ。簡単なのに何でだろう?」


「簡単じゃないよ。xとかyとか、沢山出てきて頭がこんがらがってくる」


「そっか。じゃあ慣れるしかないね。まずは与えられた式からグラフの形をイメージする訓練から始めよう」


 指導内容は単純だった。教科書にある問題をノートに解かせて、分からない部分は僕が解説する。するとだんだん、星野の思考の癖みたいなのが分かるようになってきた。


「もう! 全然答えが違う。私は落ちこぼれなんだ。うぅ..」


 些細な間違いにも過剰な反応を示す。そのせいですぐに思考力と冷静さを失い、他のケアレスミスを誘発する。確かに理解力は少し欠けているが、明確に劣っているというわけでもない。


 それを本人にどう自覚させるかが一番難しい。直接口に出してもお世辞だと捉えられればそれまでだ。簡単な問題から始めて、自信をつけさせてみよう。


「星野。y=2xにx=2を代入した時、yはいくつになる?」


「え、えっと。4....」


「正解。じゃあ、今度はy=9x+9の時に..」


 みたいな感じで、数値を当て嵌めるだけの口頭による問題を数回繰り返し、少しずつ難易度を上げていった。


「はぁ..。取り敢えず100問正解したけど、こんなのやって何の意味があるの?」


「そんなの、僕だってよく分からないよ。取り敢えず目の前に問題が与えられて、それを解かないと気持ち悪いから脳死でこなしてる感じ」


「ふーん..。でも、確かに今までモヤモヤしてた箇所が分かった時、少し気持ち良かったよ」


「そっか..。勉強の楽しさにちょっとでも気付いてくれたなら本望だよ」


「えへへ..。私、気付いちゃったかも....」


「......」


『私、気付いちゃったかも』


 その台詞に、聞き覚えがあった。


「な、なぁ渚沙。変な事聞くようだけど、僕とお前って昔どこかであった事ある?」


「......」


「な、ないよな..。ごめん変な事聞いて、多分僕の勘違いだと思うから」


 しかし、星野は明らかに動揺していた。


「ふふ..。少し驚いた。私は確かに昔、一度だけ君と会った事があるんだよ」


「え、本当に..?」


「うん。あれは確か、小三の夏休みの頃だった」


 その頃と言えば、僕は孤独だった。唯一の心の支えだった東雲未来が不登校になり、誰からも関心を抱かれず過ごした思い出したくもない期間だ。夏休みなんて、何かした記憶もない。


「ずっと家にいたはずだけど..」


「..。それは多分、もう覚えていないからじゃないかな? 些細な、出来事だったのよ..」


 それから彼女は、言葉を紡ぎ始めた。


 


 



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