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愛の余罪 〜同居する事になった毒舌な美少女女子高生に、雑魚と揶揄われて困っています〜  作者: ラストジェネレーション
第一章 

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第十六話 星野の異変

「ふぅ、散々な目にあったよ畜生..」


 放課後、世那と未来を筆頭とする集団に散々煽られた僕は既に満身創痍だった。


 なのに無理を押して参加した部活動では案の定、初心者という事もあり受け身を取り損ねて膝を痛めた。合気道なんて柄じゃないのにな。


「ん....」


 ふと東雲が居を構えるマンションの外に目をやる。見覚えのある顔があった。星野が数人の男に囲まれ、何かを言い寄られているようだった。


「どうせくだらない痴話喧嘩だな。無視、無視っと..」


 しかしその直後、男の中の一人が木製バッドを取り出し星野のこめかみ目掛けてスイングした。鈍い音が辺りの静寂を破る。途端に状況の整理が追いつかなくなった。


「あっ..」


 自分一人じゃどうにかなるわけでもないのに、気づけば駆け出していた。頭から血を流し蹲ったままの星野を庇うように、強面の男に向かって言った。


「なんで、こんな事するんですか..」


「俺の弟がな、そこの女に個人情報を抜かれたんだ。脅しの材料にでもするつもりだったんだろ..」


 男の一言に、全身が凍り付いたような気がした。僕も同じ事をされている。


 最低な考えが浮かんだ。こいつらに加担すれば、自分の握られている弱みも無くなる。星野は多少痛い目を見るだろうが、死にはしない。


「.....」


 なのにどうして、僕は土下座をしているのだろう?


「星野は..。僕の恋人なんです!! 僕が彼女に指示しました。悪いのは、全部自分です..。相応の責任は取るから、彼女をこれ以上傷つけるのはやめてください..」


 意味が分からない。どうして、僕はこんな事を言ったんだろう?


「そうか..。お前、自白しても罪は軽くならないぞ。覚悟しておけ」


 怖い。でも理解できた。僕は互いの悩みを共有し深夜に駄弁るだけの関係性であっても、星野が何か深い傷を負ってる事を知っている。もう十分罰は受けたのに、どうしてこれ以上苦しむ必要があるんだ?


 同情じゃない。もし見捨てたら、彼女は完全に壊れてしまう気がした。


「ぐっ..」


 木製バッドの柄が、棒立ちの僕の鳩尾にめり込む。よろめいた所を後ろから蹴り飛ばされ、下を向いた瞬間に、頭と顔、背中を何度も殴られた。


 この時、傍で呆然とその光景を見つめていた星野は、どんな気持ちだったのだろうか?


 近隣住民が騒ぎに駆けつけ警察を呼んでくれなければ、僕は多分死んでいた。


♢


 全治一ヶ月。僕は全身打撲と右腕、肋骨の骨折により学校に通えなくなった。中間試験の日程ともろに被っているのも最悪だが、利き手が使えずしばらく勉強出来ないのが一番辛かった。


 病院のベッドの上で、ぼんやりと天井を眺める。意識を取り戻した時、僕のすぐ近くには星野がいた。椅子に寄りかかりながら心ここに在らずといった表情を浮かべているが、目は真っ赤に腫れている。


 彼女も殴られたから、頭部に包帯が巻かれているのは自分と同じだった。


「あ、起きたんだね..。皆川......」


 心底申し訳なさそうに、星野は呟いた。


「こっちこそ..。咄嗟だったとはいえ、僕と君との関係性を彼女と定義した事は謝らせて欲しい」


「....。その事で、私から一つ提案があるんだけど....」


「何..?」


 尋ねると、彼女は深呼吸してから、意を決したかのように語り出した。


「私、今日から一ヶ月間、ずっとここにいるよ。何があっても側に居続けるよ。邪魔だったら、また呼ばれるまで外で待っているよ。お願いがあったら何でもするよ。だから全部、私に償わさせて..」


「それは流石にやりすぎじゃない..」


「だからこれは交換条件..。私からも一つだけお願いがあるの。皆川..、入院してる間だけ、私の友達になってよ..。嘘でも演技でも良いから、私の事をそう扱って欲しい....」


「....。そのくらい別に良いよ。全然対等な交換じゃないでしょ。僕からももっと何かしてあげる。例えば、勉強を教えるとか..? まぁ、それくらいだけどね」


「本当に?」


「嘘をつくほどのことじゃ無いでしょ。でも約束は約束だ」


「うん!」


 思い返してみれば、僕は星野の純粋な笑顔を初めて見たような気がする。


 彼女は窓が開けられ微風の吹き抜けるカーテン越しに、穏やかな表情を作って言った。


「私、星野綺羅薇っていうのは源氏名みたいなものなんだ。昔母さんの職場に遊びに行った時、向こうの人に記念でつけて貰った名前なの」


♢(星野視点)


 友達に嘘をつくわけにはいかないよねーー


 昔から、私は自分の事を話すのが苦手だった。主張して否定されるのが怖かったからだ。歪みきった本当の私なんて、誰も愛してくれないし誰も手を差し伸べてくれない。そう思っていた。


「....」


 言って良いよね? 私、自分の事を教えても嫌われたりしないよね? 


 駄目だ。疑うのはやめよう。私を助けてくれた彼に、少しでもお返ししたい。だからごめんね。言い付けを守れない私は悪い子だ。それでも、人生で"初めて出来た親友"に伝えたい。


「私の本名は、星野渚沙(ほしのなぎさ)っていうの。これからは、渚沙って呼んで」




 









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