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愛の余罪 〜同居する事になった毒舌な美少女女子高生に、雑魚と揶揄われて困っています〜  作者: ラストジェネレーション
第一章 

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第十五話 予後が悪い

♢(星野視点)


「本日我が校にお越し頂きました◯◯様は有名大学を卒業後企業し、今では国内に複数の店舗を構える××ホールディングスの代表取締役として、日本の小売業界を牽引されているお方です」


 学校の定期集会では、ごく稀に社会で成功した有名人が登壇する機会がある。私はこの時間が大嫌いだ。出生時の遺伝とその後の環境で決まるのが人生なのに、無駄な努力の必要性を説く。


 いくら勉強しても消費税の計算さえ碌に計算できないような人間を見た事がないのだろう。日本語で書かれた中学生レベルの文章すら碌に読めない人間を見た事がないのだろう。


 小さい時から周りに賢いねと言われて育って、努力が当たり前に出来る環境とそれ相応に実力の付く頭のスペックも持ち合わせて、それを誰でも出来て当然だとでも思っているのか?


 くだらない。話なんて聞くだけ無駄だと思った次の一瞬、衝撃が走った。目の前のスライドに映し出されたそいつの経歴、大学は誰でも名前を聞いた事のある難関国立大だが、高校は私と同じ。OBだ。


「お恥ずかしい話ですが、私は幼少期より周りの子と比べて頭が悪く、それに酷くコンプレックスを抱え自暴自棄になっていた時期もありました。高校生の時も相変わらずです」


 今の私と、全く同じだ。とはいえそこから今の社会的地位を収めるに至るまでの道のりは、過去の登壇者と言っている事は大体一緒でつまらなかった。努力する事、人との繋がりを大切にする事ーー


 どいつもこいつも住んでいる世界がまるで違って、今までは聞けなかった質疑応答の時間。私は言った。


「成功したのは分かりました。けれど、後悔している事はありますか?」


「....」


 男はその答えを既に知っているように見えた。マイクを固く握り直した後、ゆっくりと話し始める。


「世間では、結果を出す事に固執している人がいます。向上心があるのは良い事です。現に私はそうして、常に努力し続けました。今の自分が大嫌いだから、変化する事にも抵抗はありませんでした」


「これが私の人生最大の幸福にして、後悔です。5年前に働きすぎで鬱病を発症してから気付きました。私は自分を愛していない、だからこの歳まで独身です。金目当てで近付く人も多いので、伊達で結婚指輪は嵌めていますが」


 自嘲気味に笑って男は話を止めた。喉が渇いたのか、水を飲んでいる。


「私は分かりません。自分を愛していない。これの何が問題なのでしょう?」


「そうですね..。例えば、今の自分を肯定してくれる、つまり好きになってくれた人が現れた時。私はまず疑ってかかります。何か裏があるんじゃないか、騙す気があるんじゃないかと思ってしまう。逆に自分を嫌いな人間が現れた時、私は高確率でその相手に好感を持ってしまう。私は嫌われて当たり前だと、そう思っているから」


「......」


「先にも言いましたよね。人との繋がりは重要です。成功の有無に関わりません。しかし自分が嫌いだと、そんな素晴らしい人間関係を破壊しかけない。これは大問題です」


「じゃあ、どうすれば..」


「簡単ですよ。自分は自分が嫌いなんだと、否定ではなくただ受け入れるんです。受け入れた上で、今の自分を受け入れ、寄り添ってくれるような人物を特に大切にしてあげてください」


「.....」


 納得出来なかった。私は自分の事が大嫌いだ。3歳の時に蒸発した暴力男と精神疾患を抱えるヒステリックな母親付きの安い賃貸アパートで育ち、勉強も運動も、人並みに出来たものは何もなかった。


 不良仲間と深夜の公園で駄弁り、違法だと分かっていながら怪しい薬にも手を染めかけた。自殺は何度も考えた。同級生に容姿を揶揄われたトラウマから、今でも摂食障害と醜形恐怖症を抱えている事は誰にも相談できてない。


 こんな欠陥人間を、愛してくれる人なんて永遠に現れない。私はきっと、誰にも満たされずに死んでいく。


♢(主人公視点)


 東雲が熱を出した翌日、すっかり回復した彼女と共に登校した。先週の金曜日以来と考えるとまだあまり日数は経過していないが、随分久しぶりに行くような感じがした。


「あ、おはよう未来! 先週は災難だったね。もう大丈夫?」


 彼女の数多い友達の一人が話しかける。横を歩いていた僕なんかもう眼中には無いらしい。僕もお前ら烏合の衆など気にもとめてないから、別にどうでも良い。さて自分の席に座ろうかと、抜けていこうとした時だった。


「待てよ。お前さっき、未来と話しながら来ただろ。未来が優しいからって勘違いして貰っちゃ困るんだけど、お前みたいな勉強だけのキモオタなんて眼中に無いんだよ。迷惑だから、金輪際私らに近寄るな」


「え..」


 初めてそいつの顔を真正面から見た。学生なのに、白髪でピアスの穴が開いている。スカートの丈はかなり短くて、少し緩めに着崩したオーバーサイズ気味の制服から一目でギャルと分かる出立ちをしている。


 おまけに目つきが鋭くて気も強い。怒っている時の未来と、平常時の未来を足して2で割ったような雰囲気を常に醸し出している。かと思えば、仲の良い女子と挨拶を交わす際は表情を柔らかくする変わり身の速さも癪に触る。


「未来もそう思うよね」


 これは同調から袋叩きにされる展開だ。


「うん」


 終わった..。


「迷惑なのは貴方よ。私が好きで関わっている人間に、勝手に口を挟んで来ないで」


 その台詞で、僕は一瞬だけ我を忘れかけた。未来が友人との友情より自分との関係性を取ってくれるなんて絶対に有り得ない。何か裏があるのでは無いか..? トイレに行くフリをして逃げようと身体の向きを変えた時、僕は未来に襟元を掴まれ動きを封じられてしまった。


「こいつを雑魚と呼んで良いのは私だけ。面白い奴だから、憂さ晴らしに使っているの」


「なるほどねぇ..」


 やっぱりな。


 嗜虐的な笑みを浮かべる二人は、すぐに僕の身を取り囲んで揶揄い始めた。煽りの大合唱。周囲の人からすればそれは、肉食獣二人に運悪く絡まれた小型の草食動物に映るかもしれない。誰か助けてくれ..。


「あ! 未来と世那(せな)ちゃんじゃん。おはよう..。って、何してるの?」


「こいつ面白いんだよ! 煽ると凄い泣きそうな顔しながら、結構ガチのトーンで反論してくるんだよね! 心晴(ここはちゃんも混ざってみてよ。絶対に楽しめるから」


 今度はまた別の女子が現れた。茶色で長く伸びた髪を後ろで綺麗に束ねている。世那とかいうギャルと比較すると雰囲気も穏やかそうだし、声音もポワポワしていてどこか天然な印象を受けた。


「どうやって、楽しむの....?」


「取り敢えずなんか煽ってみれば良いんだよ。天パとか、ニキビヅラとか..」


「うーん..。なんかよく分かんないけど、頭、良さそう、とか....」


 奇妙な沈黙が流れる。


「ちょっと、それじゃただ褒めてるだけじゃない」


「事実だ」


「あんたは黙っていなさい」


「はい....」


 そのまま二人は、休日中にあった出来事についてを話し始めた。未来は世那と心晴さんの会話を後ろで見守りつつ、僕の方へ近づきそっと耳打ちをした。


「世那ちゃんはバスケ部の次期部長候補なんだよ。とにかく運動が好きな子で、誰にでも気さくで明るいタイプ。異性からもとにかくモテるんだけど、少女漫画のような最高の恋愛がしたいとかいう理由で断ってばかりだから二つ名は告白キラー。趣味は近所の喫茶店巡り。美味しいコーヒーを淹れてあげると喜ぶよ」


「了解」


 世界で17番目くらいにいらない情報だ。


「そして真向かいに座っている茶髪の子が心晴ちゃん。天文部所属。実家がとにかく太い。小さい時からスパルタ教育を受けてたっぽくて、勉強の成績は常にトップクラス。教養も品性も備えてるけど、中々ストレスのかかる環境だったみたい。天然に見えるのは表の顔。実は重度のツミッター廃人。”こころー”って調べたら出てくると思う。本人はバレてるって気付いてないみたいだけど」


「....」


「どうしたの?」


 言えなかった。こころーは僕の相互フォロワーだ。リプライでもちょくちょくやり取りしているけど、何せ”あの”ツミートだから、眼鏡をかけた童貞顔の高校生を何となく連想していた。


 僕はズボンのポケットから徐にスマホを取り出しツミッターを開く。こころーのポストは、20分前に更新されたばかりだ。内容にざっくりと目を通す。


『SEPIXから銀録会漬け。高校に入学しても恋人いないどころか、異性とまともに会話さえ出来ない。予後悪すぎて鬱クワガタ。無敵の人化して、将来家電量販店で脱糞しそう』


「....」


「二人とも私の親友。仲良くしてね!」


「はい....」











SNS関連の描写においては、私の本領を発揮させて頂きます。

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