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愛の余罪 〜同居する事になった毒舌な美少女女子高生に、雑魚と揶揄われて困っています〜  作者: ラストジェネレーション
第一章 

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第十四話 結果と過程 

「家事代行サービス、プレミアムライフをご利用頂きありがとうございます。本日より週5日でお勤め致します。星野と申します。よろしくお願いします」


 遥香さんから連絡があったのは、星野が来てから30分後だった。事業展開による長期の出張で1ヶ月は家に戻れないから、その間の繋ぎとして家政婦を雇ったらしい。平日限定で、夕方から夜の10時までの契約だそうだ。


 電話越しにそう告げられたにも関わらず、未来はあまり驚いた素振りを見せない。こういう事はよくあるそうだ。最初こそ寂しい思いもしたが、今ではすっかり慣れている。


「それで、どうして高校生の貴方が来るわけ?」


「お金が欲しいから。それ以外に理由なんて必要?」


「あっそう、別に興味ないわ。取り敢えず部屋の清掃と夕食の準備をお願い..」


「畏まりました」


 あくまで星野とは、契約上の付き合いと割り切る事に決めたようだ。未来は要望を端的に示した後、東雲家の食器や服の配置を細かく説明している。その間にも、僕は机に齧り付いて勉強していた。



「皆川くん、星野が夜ご飯出来上がったって呼んでるよ」


「あ、もうそんな時間なんだ。何作ったの?」


「簡単な洋食だよ。本や動画を見て学んだものに、独自のアレンジを加えた」


「ふーん..。どうせ大した事ないんでしょ」


 先程からどこか刺々しい態度で星野に接している東雲未来は、皿に盛り付けられた料理の一つを雑に咀嚼し飲み込んだ。無言の沈黙は続いたが、箸の動きから見て恐らく相当美味しいのだろう。


「いただきます。星野は食べないのか?」


「もう食べて来たよ。私は一日二食で十分足りるんだ」


「えぇ、不健康だなぁ..。そんなんだからガリガリなんだよ」


「ガリガリで悪かったね。私はそこの女より腹の触り心地は良くないようだ」


 その言葉を受け、未来の手が止まる。


「当たり前でしょ。そんなに気になるんなら、あんたも触ってみる?」


「ふっ..。女の腹を撫で回す趣味は無いんだよ。そんなに抱かれたいなら皆川にお願いすれば良い」


「だ、抱かれるって..。な、何を言ってるのよ!!」


 激昂する彼女の怒声を華麗に受け流す。星野は冷ややかな視線をぶつけながら、彼女の首筋に手を這わせ耳元で息を吹きかけるように小声で囁いた。


「私には、君にお願いして触るのが些か性に合わないというだけの事だ。君自らが私の前にひれ伏し腹を差し出してくれるというのならば話は別だがな....」


「だーれが貴方なんかの命令に従うというの..? ざぁこ..。私の耳元から顔を離しなさい。くすぐったいでしょ」


「それは無理。加虐嗜好っていうの? 私さ、昔から気の強い女の人を見ると、虐めたくて仕方が無くなる。でも誰彼構わずって訳じゃない。向こうが嫌がっていなければという条件付きだ」


「ちょ..。私は嫌よ!! 離してよ!」


「荒い言葉遣いの割に、抵抗は随分と控え目だよね。耳もこんなに赤く染めて、本心では私にメチャクチャにされるのを望んでいるんじゃない? 正直に言って」


「....」


「すぐに否定しないという事は、肯定と受け止めても構わないのね....」


 星野の腕が、未来の下着一枚隔てた先にある素肌を這う。繊細な楽器を扱うかの如く柔軟に指をしならせるたび、彼女の口からは甘い声が漏れた。何か見てはいけないものを見ている気がしてならない。


「君も混ざらないの?」


「いや、遠慮しておくよ..。無骨な手のない方が、都合いいでしょ」


 遠回しに星野を支援する発言の意図だったが、それを無事に受け止めてくれたのだろう。星野はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、興奮と羞恥で顔を隠す未来の頭をゆっくりと撫で始めた。


 こうしてみると本当の姉妹のようだ。お互い否定し合っているが、案外お似合いなのかもしれない。


「皆川くん!! 何をくすくすと笑っているのかな..。わ、私を助けなさいよ!」


「ははは..。そうやってあまり興奮しすぎると熱が上がっちゃうよ」


「こ、興奮してなんかいないし! 熱も、もう下がっているし..。全然大丈夫だから」


「....」



 その日はあまり寝付けなかった。星野に弄ばれて息も絶え絶えだった未来は死んだように眠っているから起こすのも申し訳ない。ただ手持ち無沙汰で、この退屈な夜を無為に過ごすのか?


 勉強をやる気分でもない。睡眠導入のため難しい本でも読もうかと考えたが、未来の家には活字と呼べる書物があまり存在しない。強いていうなら、絵や写真が多めのファッション誌くらいだ。


 失礼だと分かってはいたが、僕は勝手に東雲未来の机の上からある日記を取り出す。恋愛日記だ。読むのは二回目だから今回は初見で見落としていたページのいくつかを確認した。


 24,36,38,42,48..。空白の75pを飛ばし、以降も記述は続いている。そのうちに異変に気付く。この日記帳は先に挙げた75pを除き、奇数のページが一つも存在しないのだ。


 日記帳に割り当てられた番号のうち、該当するページだけが器用に切り取られている。何かまずい事でも書いてあって、それを取り除いた結果だとしたら、あまりにも規則的だ。


 こうなればどうしても探したくなる、全体のおよそ二分の一を占める追加の内容に何が書かれているのかが気になる。そう遠くには置かれていないだろうと思い、引き出しに手を掛けたその時だった。


「何しているの? 皆川くん」


「....。起きたんだね。ごめん、東雲。お前が書いた恋愛日記、興味本位で覗いちゃった」


「そう。どうだった?」


 多分無条件に怒られると思ったから、この反応は想定外だった。


「別に、どうって事はないよ」


「ふーん。つまんない奴、私今でも、貴方の事愛してるのに..」


「嘘だろ」


「......。えぇ勿論嘘よ。真に受けちゃった? 可愛いねぇ」


「揶揄うな。というか、まだ完全に回復し切ってないのにお前まで夜更かしするなよ」


 僕は何を血迷ったのか、東雲未来の頭を優しく撫でてから寝床に誘導した。2段ベッドの下、彼女の身体に触れない位置に腰掛けた僕は、試しに無防備な頬をつついてみる。


「柔らかいな..」


「キモチワル..。雑魚が気安く私の顔に触らないでよ。本当に最低」


「ふーん。未来はそうやってさ、自分がした事でも立場が逆なら拒絶するよね。男なら適当に何やっても興奮するとか考えてるのかもしれないけど勘違いすんなよ。そんな魅力、東雲には....」


 そこまで出かかって、後の言葉がつっかえる。煽られてムキになって、売り言葉に買い言葉で罵詈雑言を浴びせようとしたのに、嘘だけは付きたくないと僕の本能が拒絶したのだ。


「ごめんある。めっちゃある..。それに比べて僕は、全然大した事ない人間だよ。卑下されて、雑魚呼ばわりされるくらいが今は丁度良いのかもしれない..」


 この先は言わなかった。言葉じゃなくて行動で示すのが、僕が彼女にしてあげれる最大限の誠意だと思ったから。未来が誰の手も借りずにここまでの変化を遂げたように、自分も一人で頑張れば良い。


 なのにーー


「そう..。でも私は、今の皆川くんも、ちゃんと見ているよ..」


 未来はどうして、こんな状態の僕を受け入れてくれるんだろう。



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