第一巻発売記念SS グリフォンは選んだ
子どもたちが少し育ったから、あそこの場所は良い場所じゃなくなった。
他の奴らが邪魔しに来るし、子どもたちは育ってきたけど、まだまだ小さい。
あいつらに踏み潰されたらたまったものじゃない。
それに、これからはもっとたくさん、ご飯がいる。
だから、ダーリンと話し合って引っ越すことに決めた。
ダーリンも、前からもう少し広いところに行きたかったみたい。
でも、あたしがまだ子どもたちを産んだばかりで体力もないし、子どもたちもあんまり飛べないからって待っててくれたんだって。
嬉しい。
大好き。
できるだけ遠い方がいい。
とにかく子育てを邪魔されるのだけは我慢できないから。
お昼寝してるっていうのにすぐそばで騒ぐなんて、追い回して謝るまで突っつくくらい当たり前よね?
移動のとき、子どもたちはかなり頑張って飛んでくれた。
ときどきはあたしとかダーリンの背中で休ませたけど、かなりの距離を自分で飛んでた。
海も越えたけど、あれは結構ギリギリだったかも。
ダーリンが周りを見ながら守ってくれていたし、子どもたちも一所懸命だったわ。
海を越えたら、仲間の気配が全然なくなった。
ご飯はいっぱいあるみたい。
ニンゲン以外の生き物も多いけど、あたしたちの敵じゃない。
ちょっと蹴散らせばいいだけ。
これくらいでいいのよ。
少し飛び回ったら、ふとニンゲンが持っているものが目に入ったの。
巣としては大きさがちょうど良さそうだし、ちょっと囲まれてる感じもいいわね。
そう思って試しに乗ってみたら、簡単に潰れちゃったの。
おかしいわ、だって乗れる大きさだし、ニンゲンはいろんなものを乗せてたわ。
それなら、あたしだって乗れるはず。
でも、さすがにいくつも壊したのが良くなかったのか、ニンゲンが動かしてる巣に見張り担当がつくようになっちゃった。
違う巣を探しても良かったけど、でもあんな感じの巣はあたしたちじゃ用意できないの。
もしかしたらもっと頑丈なのがあるかもしれないから、試したっていいでしょう?
そうやって様子を見ていたら、ある日、見張り担当のニンゲンだけが集まって巣を持って森にやって来た。
何してるのかしらね?
遠くから眺めていたら、ちょうどあたしが下りやすそうなところに巣を置いて少し離れたわ。
いいのかしら?
そっか、くれるのね!
気が利くじゃない。
でもまあ一応、あたしが下りて少し様子を見ようかしら。
下りてみたら、なんか喧嘩売ってくる気配がしたから買ってみたけど、なんか違うみたい。
避けてばっかりで攻撃してこないわ。
巣を囮にでもしたのかと思ったじゃない。
あたしが使うかどうか、見てただけみたいね。
子どもたちに近づかないなら、別にいいわよ。
あの大きな武器を持ったニンゲンは少しは強そうだけど、基本的にニンゲンは弱いもの。
うっかり子どもたちがじゃれついたら死んじゃうわ。
ここは割とニンゲンの巣に近いから、子どもたちにもちゃんと教えておかないといけないわね。
ダーリンは、あたしのおばあちゃんの話を聞いてるから知ってるけど、子どもたちと一緒に聞いてもらったわ。
喧嘩を仕掛けてこないニンゲンなら、近くに住んでても大丈夫。
仲良くなったら、ときどきご飯をくれることもある。
でも、あたしたちの力はとっても強いから、ちょっと爪を引っかけたり嘴で突っついたりするだけで、死んじゃうこともある。
この巣をくれたのはニンゲンだから、あたしたちと仲良くしたいのよ、きっと。
でも、子どもたちはまだ力加減を学んでないからそれを覚えてからね。
それを教える、って言ったら、子どもたちは喜んで飛び回った。
あのちっさいのと遊べるの?とか言ってるから、まだ不安ね。
仕方ない、きっちり教えましょう。
ニンゲンは、群れの一人が傷つけられたら集団で報復に来るって聞いてるし、今の巣は快適だから手放したくないもの。
魚の獲り方もそろそろ覚えないといけないし、忙しくなりそうね。





