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誰にも言えないLv1の恋〜課金だけが取り柄だった私、担当のプロゲーマーに溺愛される〜  作者: 希羽


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第35話 うれしいよ

 翌週の木曜日、クライアントへの資料提出を無事に終えた日のランチタイム。

 オフィス街の喧騒から少し離れた路地裏の定食屋で、私と宮本は向かい合って座っていた。


「はー、食った食った! やっぱ山場越えた後の飯は格別だな」


 宮本が満足そうにお茶を飲み干し、ふと思い出したように身を乗り出してきた。


「で? こないだの続き。彼氏、どんなやつなの? 社内の人間じゃないんだろ?」

「……うん。社外の人」

「同業? 広告系? もしかして、コンサルとか?」


 どこか探るような宮本の問いに、私は一瞬だけ躊躇った。

 六歳年下の大学生。しかも、仕事で関わりのある現役プロゲーマー。

 普通の感覚なら「危なっかしい」「将来どうするの?」と眉をひそめられてもおかしくないスペックだ。


 けれど、ここで誤魔化すのは蒼真くんに失礼だと思い直す。


「……大学生で、プロゲーマーやってる人」

「……は? プロゲーマー?」


 宮本は目を丸くして固まった。

 数秒のフリーズのあと、頭の中で年齢計算をしたらしい彼が、息を呑んで声を潜める。


「待て待て、大学生ってことは……年下? 何歳下?」

「……六歳下」

「六歳下!?」


 店内に響きかけた宮本の声を、私は慌てて手で制した。


「ちょ、声! だから言いたくなかったんだよ……」

「いや、悪い悪い! でもすげえな、まさかあの仕事人間だった篠宮が、六歳下の、しかもプロゲーマーと付き合ってるとは思わなくてさ」


 呆れられるか、心配されるか。

 身構えて視線を落としかけた私に、宮本はからりとしたトーンで、あっさりと続けた。


「でもさ、歳とか職業とか、関係ないよな」

「……え?」

「だってさ、シンガポールから戻ってきて久しぶりに篠宮を見た時、なんか雰囲気変わったなって思ってたんだよ。前はさ、誰にも弱み見せないように全身にトゲ纏って戦ってる感じだったじゃん。今はなんか……すごく自然体っていうか、肩の力抜けて柔らかくなった」


 宮本は頬杖をつき、昔を懐かしむように穏やかな目を向けた。


「お前がちゃんと幸せそうなら、それが一番だろ。お前が変わったの、同期としてすごくうれしいよ」


 ◇


 オフィスへの帰り道。

 初夏の乾いた風が、街路樹の青葉をさらさらと揺らしていた。


(……お前が変わったの、同期としてすごくうれしいよ)


 宮本の飾らない言葉が、胸の奥で何度もあたたかく反芻される。

 私は、年齢や肩書き、ステータスといった「外側の条件」ばかりを気にしていた。

 六歳も年下で、学生で、不安定なプロゲーマー。そんな条件を並べ立てては「周りからどう見られるか」と勝手に怯えていたのだ。

 でも、第三者の宮本から見ても、今の私は「ちゃんと幸せそう」に見えている。


 条件ではなく、彼と一緒にいることで変わっていった自分自身を、外側の世界からも肯定してもらえた気がした。


 ポケットの中のスマホをそっと握りしめる。


 秘密にして隠れていた頃とは違う、足元がしっかりと地面についたような確かな誇らしさが、私の胸を満たしていた。

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