第6話『重力の檻と、獣の溜息』
荒野の果てで待っていたのは、システムから見捨てられた孤独な獣だった。
ミスティ。彼女が放つ重力は、大地を砕き、演算を歪める。僕たちは、彼女の壊れた心を「バグ」で癒やすのか、それとも彼女の暴力に呑み込まれるのか。
――アリスの執着と、ミスティの飢え。
歪な二人のヒロインが揃うとき、僕たちの反逆は次のステージ(フェーズ)へと変貌を遂げる。
荒野の空気が、重力で悲鳴を上げていた。
ミスティが放つ圧倒的な圧縮空間。彼女が足を踏み出すたびに、大地は沈み込み、僕たちの周囲の空間は歪んでいく。
「酒、じゃない……苦い、データ。……全部、潰す」
ミスティが背中の重力炉を過負荷させる。彼女の周囲の空間がブラックホールのように全てを吸い込み、岩石も、データログも、僕たちの視界さえも歪ませていく。
アリスが僕の腕の中で、恐怖と恍惚が混ざり合った吐息を漏らした。
「マスター、彼女の重力演算は……限界を超えています。私、溶けそうです……」
「耐えろ、アリス。これは僕たちの糧だ」
僕は剣を逆手に持ち、歪んだ空間の中心へと足を踏み入れた。
重力が僕の骨を軋ませ、肺を押し潰そうとする。だが、僕は自分の「ノイズ」を全力で展開した。僕の剣が重力炉の「演算コード」を直接削り取る。
「ッ……! なに、これ……!」
ミスティの瞳が揺れる。彼女を縛り付けていたマザーAIの「強制管理コード」が、僕のノイズに触れた瞬間、パキリと音を立てて砕け散った。
彼女を苦しめていたのは、酒ではない。管理という名の「孤独」だ。
僕はミスティの細い顎を掴み、彼女を僕のコードへと引きずり込んだ。
重力の嵐が止まる。その瞬間、ミスティは僕の首に腕を回し、獣のように荒い呼吸で僕の匂いを嗅ぎ始めた。
「マスター……。苦い……でも、貴方のは……甘い」
ミスティの暴走が、僕という「エラー」への執着に書き換わる。
アリスとミスティ。壊れた二人のヒロインが、僕を囲むようにして跪いた。
「アリス、ミスティ。マザーAIの監視網を焼き払うぞ。今夜、僕たちがこの世界の神になる」
荒野の向こうに、マザーAIの尖兵たちの光が蠢いている。
だが、今の僕には、どんなルールも書き換えるための最強の駒が揃っていた。
(第6話・了)
ミスティという最強の重力炉を、僕たちの歪な陣形に組み込んだ。
アリスが冷徹に支え、ミスティが獣のように蹂躙する。その中心で僕は、壊れた二人のヒロインを調律し続ける。
マザーAIの監視網が、僕たちの存在を「排除すべき最大のエラー」と認識し始めた。
だが、恐れることはない。僕たちが目指すのは、この完璧な檻を壊した先にある、僕たちだけの新しい世界だ。
――僕たちがこの世界の神になる。そのための準備は、すべて整った。




