第二章ー13
「え? 日本に来る?」
世界維持管理組織日本支部本部
そこの最上階にある一つの部屋の中で、一夜は電話の向こうの相手の発言に少し戸惑っていた。
隣で光がこちらの様子を心配そうに伺っている。
向こうから聞こえてくるはっきりとした若い女性の声。
『えぇ、数日の内に、もしかしたら明日にはそちらについているかもしれないですわ』
「こっちの事情を知っていてそんな事を言っているのかい?」
『当たり前ですわ。だからそちらの力になって差し上げますと言ってるじゃない』
「それなら歓迎したいんだけどね〜。本当にそれだけならね」
『別に何だって構わないじゃない。ただ観光がしたいだけなのよ』
「別にこの時期じゃなくても良いじゃないか。君の国だってそんな余裕無いんじゃない?」
『私たちの事情はお気になさらなくて結構』
「……」
恐らく何を言っても納得しないであろう彼女の態度にこちらが折れる事にした一夜。
ここまで芯が強い女性は苦手だ、そう一夜は思う。
後で光に納得「何で、きっぱり断らなかったんですか!?」と怒鳴り散らされる未来が見えた。
(それもアリかも……)
一夜はこの件を光のストレスに変換する事で解決することに決定した。
「分かったよ、好きにしてくれ。ただプライベートなんだからこちらは何も手配しないよ」
『結構ですわ。一応連絡しておいただけですから。それでは』
ガチャ、と向こうがさっさと電話を切ってしまうのを確認し、一夜は椅子に深く腰掛けて大きな溜息をついた。
「大丈夫ですか?」
そんな上司を見かねてか光がコーヒーを持って来てくれた。
この真面目でしっかりした女性を今から怒らせなければいけない事に多少の抵抗を感じる一夜。
多少だが。
「近日中に女王が来日するらしいよ」
「は?」
光の目が大きく見開かれる。
完全に動きが止まっている。
(あ、これは時間がかかるやつだ)
一夜の頭に嫌な予感が掠めた。
そしてその予感は見事的し、一時間、光のお言葉を頂戴する羽目になる一夜だった。




