第二章ー12
「この服可愛いね!」
「う、うん……」
「このスカートなんてどう燈ちゃん?」
「いい感じー」
津々良と未来は店頭に並ぶ水色のワンピースに興味を惹かれ、悠奈と燈は白色のスカートを見て話していた。
貴人は一人ベンチからその様子を眺めていた。
津々良達と出会った後、二人も連れてショッピングモールに移動した貴人一行。
燈の事は正直に全部話した。
最初は疑いの目を向けていた二人だが、他の理由も見つからないので一応の理解は示してくれたようだった。
(俺自身、よく分かってないもんな……)
これからどうしていこうかなどと考えていると、女子集団がいる方から一人こちらにやって来た。
「師匠ー」
「ん? 津々良か。どうした?」
津々良は貴人の隣に腰を下ろした。
「いやー、買い物も良いですけど、師匠に質問したい事があるんです……」
「ああ、構わないぞ」
「それじゃあ、早速。師匠の雷化みたいなマギって私にも出来ますか?」
「つまり?」
「私は風になれますか?」
「そこだけ聞くと、熱いスポーツ漫画みたいだな……まあ、出来ないことは無いと思うけど」
「けど?」
「そもそも、津々良は雷化を最強のマギだとか思ってるのか?」
こう言うと津々良は目を輝かせて
「思ってます! 速く動けるし相手をにも攻撃を与えられるし、いいこと尽くめじゃないですか!」
マギ関連の事になると本当に楽しそうな津々良。
そんな弟子にそう思われるのは嬉しい事だが、貴人は津々良の考えを否定した。
「そうでもないぞ。そもそも雷化は移動用の為に組み上げたマギだからな」
「へ? 移動用だけ?」
「ああ、そうだ」
「でもあの時、会長は気絶してたじゃないんですか?」
「あの時は特別だ。会長は俺を倒すために術式を二つも展開していただろう?」
「はい。凄かったです」
「その時の会長は足元に無属性のデディーヴァを纏ってなかったんだ。術式を二つも展開しておきながらずっとディーヴァを纏い続けるのはとても困難だったろうし、恐らく勝利を殆ど確信してたんだろうな。そして俺はそこに触れた」
「つまりディーヴァを纏っていたら気絶させられなかったって事ですか?」
「そういうこと。ディーヴァを纏っていたら良くてピリッと感じるレベルだ。どうだ? 最強なんかじゃないだろ?」
「確かに……」
「津々良は風属性なんだからわざわざ肉体を変えなくても飛んだり速く動くことは出来るようになるぞ」
「そうですね。分かりました! それならまた今度特訓して下さいね師匠!」
「分かった。今度は寄生する風よりかっこいいマギを考えよう」
「はい!」
津々良の顔の輝きが増す。
犬のように喜ぶ後輩を見て、貴人は思わず頭を撫でた。
その時、津々良に関してふと思い出した事を尋ねた。
「そういえば最近津々良と寧々先輩の二人ってやたらウチの学校で人気者になってないか?」
この頃学校内で、津々良と寧々が二人でいる時、何人かの生徒(主に女子)がその周りでチラチラと視線を二人に向けているのを貴人は知っていた。
貴人の問いに、津々良は少し困ったような顔をして
「なんか五月祭以来、何人かの人が私達のファンになったみたいなんです……」
「何かしたのか?」
「いえ……特に何もしてないんですが」
津々良に心当たりは無いようで、彼女自身少し戸惑いが有るようだ。
「嫌なのか?」
「全然嫌じゃないですよ? 寧々先輩に至ってはサインを書きまくってますから」
「どんだけ嬉しいんだよ……」
寧々がドヤ顔でサインをしている光景が目に浮かぶ。
「まあそんな事がある度にANK部を宣伝してるので、近い内に誰かが来るかもしれませんよ?」
「感心だな、弟子よ」
「あ、そういえば!」
突然、ポンと手を打って思い出したと言わんばかりの顔を浮かべる津々良。
「世界警察の件って何だったんですか? また新しい依頼ですか?」
「まあそんな所だ」
「今回私は何か手伝える事はありますか?」
「無いな」
「そんなぁ」
貴人がきっぱりと答えると、津々良は少し悲しそうな目になる。
(犬だな……)
感情がポンポン変わる津々良を見るとどうしても頭から耳が生えているように見えてしまう。
「まあ、緊急事態になったら真っ先に頼らせてもらうからそんな顔するなって」
「むむ、分かりました。いつでも電話を受けられるように携帯のマナーモードを解除しておきます」
「はは、学校内で見つからないよう気をつけろよ?」
もう一度頭を撫でてやると、津々良は目を細めて気持ち良さそうに首をこちらへ傾けた。
しばらくすると買い物をしていた三人もやって来た。
「お待たせ二人共〜、燈ちゃんの服は取り敢えずは何とかなると思うよ」
「そうか、良かったな燈」
「良かったー。ありがとー」
燈は満足気に両腕に紙袋を抱えていた。
お金は勿論貴人と悠奈が出している。
二人で一つの通帳があり、そこには今までANK部で得たお金や、二人の親から渡されたお小遣いが入れられている。
ちなみに通帳の中身はとてつもない金額が記されている。
主に悠奈の父である弦が原因だが。
「未来ちゃんも何か買ったの?」
未来が小さな袋らしきものを鞄に入れているのを見て津々良が聞く。
「う、うん……。お、お姉ちゃん前にヘアピンを無くしたって言ってたからそれを……」
「相変わらず姉妹の仲が良いんだな」
「で、でも最近お姉ちゃんどこか落ち着きが無いみたいで……。か、会話しててもどこか上の空っていうか……」
「前にもそんな事言ってたけど、体調が悪いとかじゃないのか?」
「そ、そうではないみたいです」
「そうか……。また今度会いましょうって夢先輩に伝えておいてくれ」
「は、はい……」
会話が一区切りついた所に燈が貴人の袖を引っ張って
「貴人ーお腹減ったー。舌平目のムニエル〜オリーブを添えて〜が食べたいー」
「なんでそんなにポコミチの影響を受けてるんだ……」
今日の朝にやっていた料理を所望する燈だが、生憎そんなものはこのショッピングモールには存在していなかった。
そこに悠奈のフォローが入る。
「それじゃあフードコートに行こうよ。舌平目は無いけど他の美味しい物が沢山あるから」
「うん。そうするー」
「それじゃあ行こうか」
燈の扱いに早くも馴れた悠奈が歩き出す。
その後ろに三人も続いた。




