第二章ー6
「日本を守る?」
「そうだよ。まあ後は光から聞いてくれ」
一夜の言葉を聞き、貴人は確認の意を込めて復唱した。
指輪の件からこの本題への流れまでの一夜の話はどうも要領を得ない。
一夜はすでに椅子に背を預け、光の話を聞く態勢になっていた。
まるで自分の役割は終わったかのように欠伸までしている。
投げやりな様子の一夜に代わって、光がため息をつきながら、「私から説明するわね」と口を開いた。
「天野グループという名前は知っているかしら?」
「日本有数の大企業の事ですよね?」
悠奈の返答に光は「ええ。世界的に見てもあそこまで大きな所は少ないわ」と首肯した。
貴人も当然の如くその名前を認識している。
日常生活をしていてその文字を見た事がない人物がいるとしたら、赤ん坊か、俗世から離れた人だろう。
光が続けた。
「そしてやっぱりそういう大企業には裏があるって言うのは付き物でしょ? 天野グループも例外ではないわ。実際、私達、世界警察もいくつかの行為を一夜さんがトップになる前から“グレーゾーン”として黙認しているわ。恥ずかしい話だけど、そうする事でこちらに利益がある事もあるの。それに国内企業に関する事は日本平和協会の管轄で、あまり手出しが出来ないっていうのも黙認している要因の一つね。まあこれは言い訳になるわね……。それのせいで先日の爆弾魔の件で魔導機兵が使われてしまったもの。魔導機兵の存在はあらかじめ認識していたのにも関わらずにね。いいえ、そもそも爆弾魔が日本に来てあそこまで仕掛けられたのも、天野グループのバックアップがあったからなの」
途中で言葉を区切り、自虐的な笑みを光が浮かべた。
光は爆弾魔が魔導機兵を行使した原因がさも自分にあるような言い方をしているが、問題があるのはどう考えても日本平和協会のはずである。
日本平和協会の実情を殆ど知らない貴人は何とも言えないのだが。
(そう言えば、爆弾魔は幻影牢獄に投獄されたんだろうか?)
場違いな事を考えていると、光が再度話し始めた。
「話を続けるわね。以前から私達はその天野グループの一つにそういった武力派の組織があって、そこを世界警察はそこの行動を監視していたの。そしてある情報網から不可侵の指輪が日本に送られる予定だという事を知ったの」
光がここまで言うと、先程まで椅子をクルクル回していた一夜が口を開けた。
「だから僕達は五月祭という、取引にうってつけの状況を用意して、その場で取り押さえるつもりだったんだけど……」
「向こうはそれを撹乱させるために爆弾魔という要素を用意していたと」
「はっはっは、見事に一本取られたよ〜。正直な所、爆弾魔が来日する事も偶々知ったしね〜」
快活に笑う一夜を見て、光は再び重い溜息をついた。
香が「お姉ちゃん……」と呟いた。
(南無……)
この人と働くのは光には向いていないんじゃないかと思うくらい性格が反対で、貴人は心の中で合掌した。
「……ちなみにその組織というのはね、幹部には組織名にちなんだコードネームがあるの」
光は少し表情を引き締めた。
「組織名は鳥羽組。そこの幹部は鳥の名前をコードネームとして与えられるの」




