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統べる者  作者: 八坂カロン
35/67

第一章ー34

「納得いかないですうううううう!」


救護室のベッドの上で葉月が叫ぶ。

気絶した葉月と清嗣は救護班の人に担がれて来た。

お互い多少の擦り傷はあったもののそれだけだった。

無属性のディーヴァの身体強化のお陰だろう。


「喚くな。あれは我々の作戦ミスだ」


葉月の隣のベッドで座っていた清嗣は言う。

一々負けた事を不満に思うなど清嗣にとって相手に失礼と考えている。


「そもそもあれは作戦って呼べるものじゃなかったでしょ!」

「む?」

「む? じゃないですよ! 清嗣先輩が提案したやつでしょ!」


まったくもー、とベッドの上で大げさに腕を組む葉月。

それを清嗣がたしなめる。


「仕方ないだろう。我々の使えるマギが殆どが規制対象なのだから」

「そう! それがそもそもの問題ですよ!」


清嗣の言葉により不満を口にし始める葉月。

これは面倒くさい展開だ、と清嗣は一人思う。


「あんなルールじゃ中途半端なマギを使えるほうが有利じゃないですか!」


葉月は人差し指を清嗣に向けながらまくし立てて来た。


「確かに貴人先輩達は強かったですよ! それはそれは立派なマギでしたとも! でも僕達だって制限さえなければもっと強いマギを発動出来たんですよ! こんなルールじゃ中途半端なマギを使える人の方が有利じゃないですか! 僕達があんな作戦を立てる必要があること自体が不満ですよ! 大体ね、先輩は明日の個人戦にも出れるから良いかもしれないですけど僕は今日しか無かったんですよ!? そもそも何で雲海は出場決定方法に選挙制度を設けているんですか!? トーナメント制でしょ普通! そもそもーーーー」


よどみなく不満を口にする葉月。

それを黙って清嗣は聴き続ける。

それから五分後ーーーー


「ーーーーだからカップラーメンは二分くらいの固めが美味しいんですよ! って聞いてます!?」


謎の帰結をもってようやく長い話を終わらせた葉月。


「あ、あぁお前が不満だらけって事が分かった」


葉月に若干気圧された清嗣は言う。


「まあ僕の一番の不満は火賀家のエリート様をぶっ潰せなかった事ですけどね」

「本当にお前はあいつらが嫌いだな」


葉月の言葉に苦笑する清嗣。

葉月は本当に六王家の在り方が嫌いな奴なのだ。


「大っ嫌いですよ! ウチの人間を見てるみたいで反吐へどがでます。なんでウチの家族といい火賀家といいあれだけ他の人間を見下せるのか不思議で仕方ないです」

「俺もそこは気に食わないが……。まあ今は良いじゃないか、千凪達が何とかしてくれるさ」

「悠奈先輩にボコボコにされれば良いんです。さて」


急に葉月はベッドから立ち上がる。


「僕はもう動けるので見回りに行って来ます」

「なんだ急に真面目になって」

「このストレスを何かに発散させたい気分なんで」

「そうか、俺も行こう」

「どうせ先輩も不完全燃焼なんでしょ?」

「まあな」


そう言いながら二人は救護室を後にした。


ーーーー


二人が見回りに行った頃


「何やってるんですかあれ?」


と津々良が呟く。

津々良達は観客席で前司達の試合を観ていた。

前司達の相手は第一試合で三つ葉を破った聖の背の高いひょろっとした男と小柄の女の二人である。

お互いを愛称で呼んでいるところからカップルと津々良にも推測できた。

試合開始早々、前司が後ろに行き、斗真が前線に立った。

誰もが前司が後衛の、斗真が前衛の役割を務めるものだと思っていたのだが、ここで前司がいきなり欠伸あくびをしながら横になり寝転がるという驚くべき行動に出たのだ。

舐められていると感じた聖のカップルは前司に猛攻を仕掛けようするも、全て斗真に阻まれてしまいやむを得なく斗真を先に叩く事に決めたらしい。

それから何分か聖の二人は斗真に攻撃を仕掛けるも斗真のマギによって全て無駄に終わり、今では二人とも肩で息をしていた。

斗真は息一つ切らさずに佇んでいた。


「むかつくぜ、あいつら」


寧々が前司達を睨みながら呟く。

津々良もこれに同意する。


「実力があるからなおさらね……」


阿澄も寧々に同調する。

観客達も二人の行動に顔で不快感を示している。


「あの二人は六王家の自覚はあるのか? こんなことしたら火賀家の評価がガタ落ちするのに決まってるだろう」


そう呟く愛斗に未来が


「さ、逆らえないんです……。火賀家には分家も多くて……」


と苦しげに返した。

火賀家は様々な分野の企業で幅を利かせているため、少しでも火賀家の意向に逆らおうものならすぐに粛清されてしまうのだ。

他の六王家は基本、社会経済には携わっていない。

津々良の心の中にはモヤモヤとした感情が広がっていた。


ーーーー


試合が始まり何分か経って、しばらくすると前司が目を覚まし


「あぁ〜よく寝たぜ、おい何分経ったんだ?」


と大げさに欠伸をしながら斗真に聞いた。


「五分です」


斗真が答えると


「そうか」


と言いながら前司が立ち上がり、疲れ果てた二人を見て


「五分間ご苦労様でした。それでは俺様よりあなた達に敗北を差し上げましょう」


と笑いながら言う。


「ふざけるな!! いくよ!」

「うん!」


それを聞いた二人は激昂げきこうした様子で前司に向かって走り出した。

そこに火属性のディーヴァを両腕に纏った斗真が現れマギを発動させる。


火の戦場(ファイアフィールド)!」

「なっ!?」


すると二人の周りを斗真の発動させた炎が取り囲む。

そして


火雨(ファイアレイン)!」


身動きがとれ無くなった二人に前司が発動させた無数の炎の塊が二人を襲う。


「威力は抑えてるから安心しろ! ただ服は焼けるかもしれねえなぁ! はははははははっ!」


高笑いしながら前司が言う。

前司の言う通り、二人の衣服だけがボロボロと焼け、女の方は下着姿をさらけ出してしまう。


「きゃああああああああ!」


甲高い女の悲鳴が周りを上げる。


「降参だ! だからもうやめてくれ!」


そういいながら長身の男は女を庇いながら無数の火の雨に打たれている。

威力を抑えているとはいえ背中には火傷を負っているのが観客達にも確認出来た。

長身の男の降参を聞き、斗真はマギを止める。

そこに救護班が駆けつける。

しかし前司はマギを止めようとしない。

前司は下卑た笑みを浮かべながら


「女の方はまだ降参なんて言って無いだろう? だから裸にひん剥いて見せしめにしてやるよ! ははははは」


と二人に火の雨をくらわせ続けた。

しばらくして男は痛みで気絶、女の方も無属性のディーヴァが尽き、気絶する。

それが分かると前司は興ざめしたのかマギを止め、「行くぞ」と言い斗真とフィールドを後にした。

救護班に担がれて行った二人の顔は恐怖と屈辱で埋め尽くされていた。

観客達の殆どが恐怖の表情に染まっていた。

中にはあのカップルの友達だろう人が泣いている姿もあった。

津々良達は怒りの表情を浮かべる。


「あんなの人として最低です!」

「あいつら絶対ぶん殴ってやる……!」


その試合の一部始終を貴人と悠奈は待機室でモニター越しで、静かに観ていた。


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