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統べる者  作者: 八坂カロン
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第一章ー23

天野あまのホテル

天野ホテル株式会社が経営する日本最大級のホテルで、海外から来た要人なども多く訪れており、ここで休息を入れてからお互いの国の未来について話し合いが行われている。

サービス、室内、食事、全てにおいて最高級のホテルである。


『はぁ、広いとは言っても流石に何週間もこの部屋で過ごすのは退屈だぜ』


その天野ホテル最上階、つまり最もグレードが高い部屋の大きなソファで爆弾魔ボマーは大きく体を伸ばす。

身長180センチの彼が手を広げ、足を伸ばす事が出来る程、そのソファは大きかった。


『五月祭の会場も見に行ったし、ある程度色んな場所にアレ《・・》も仕掛け終わったしよぉ……』


爆弾魔ボマーはおもむろにこれまた大きなテレビの電源をつけ、チャンネルをニュース番組に合わせる。

そこから流れてくる情報に爆弾魔ボマーを満足させるようなニュースは一向に流れて来ない。


『何でどこもタクシーの運転手殺害事件! 、みたいなのやって無いんだぁ……インパクト薄かったか? これじゃあ俺が来たと分かって貰えねえ……』


報道規制にでもかかってるのか、そんな事を爆弾魔ボマーが考えていると、ベッドの上でカードのような薄さの携帯がいきなり軽快なリズムの音を刻んだ。


『はいはい、ちょっと待ってろ』


爆弾魔ボマーはソファから飛び起き、音のなる方へ向かい、それを手に取り丁寧な日本語で応答する。


「はい、どちら様ですか?」

クロウだ。滞在して数週間、不満はないか?』


クロウと名乗る落ち着いた雰囲気の男の声が爆弾魔ボマーの携帯の向こうから聞こえる。

爆弾魔ボマーが行動の補助として雇ったのだ。


「いいえ、特にありません。強いて言うなら、私が日本に居るという事をまだ知られていない事ですかね」

『タクシー運転手のアレ《・・》はそういう事だったのか。すまないが勝手に揉み消させてもらった』

「あぁ……道理で……」


(ふざけんなよ、ちくしょうが……日本人は仕事熱心すぎるんだよ……)


内心では毒づきながらも表には出さない爆弾魔ボマー

落ち着き払ったこの声も一々癪に障る。


『しかし揉み消さなければすぐに世界警察が動いていたかもしれないぞ』

「それは無いですよ」


はっきりと爆弾魔ボマーは答える。


「たとえ私が何処に居るか分かっても、迂闊に動けば甚大な被害が出るだろう事くらい向こうは分かってるでしょうから」

『そうかもしれないが……』

「まあでも準備のために外出する時に周りに気をつける必要が無かったので、その点では助かりました」


心にもないフォローを入れる爆弾魔ボマー


『すまない、以後気をつけるとしよう。快楽殺人者だと思っていたものでな、つい衝動的に殺してしまったのかと』


クロウの発言に思わず笑い出す爆弾魔ボマー

何を言っているのだこいつは。


「ははははっ、私が快楽で人を殺すような人間だと? 違いますよ、私はただ自分の目的のためなら何でもするだけですよ」

『同じようなものだと思うがな』

「目的が違います。私は自分の楽しみのためだけに人を殺すような野蛮な事はしませんよ」

『自分の存在を知らしめるために人を殺すのは野蛮ではないと?』

「目的というものは崇高なものですからね。だからそのために行う手段も清いものなんですよ」

『野蛮でも崇高でも人を殺している事に変わりはない』


数秒の沈黙が訪れ、クロウが先に口を開いた。


『まあ、依頼する側とされた側の立場に価値観なんて関係無い。私は依頼された事だけをする』

「それでお願いします」

『そうは言っても、私がこれ以上できる事はもう無さそうだが?』

「今の所はありませんが、もしかするとが何か新しい問題が出てくるかもしれないので五月祭までは継続でお願いしますよ」

『念入りだな』

「長年の目標ですから」

『了解した。また何かあれば教えてくれ』

「分かりました」


そう言いながら通話を切る爆弾魔ボマー

街の夜景が見渡せる窓の前に移動し、ワインの入ったグラスを片手に爆弾魔ボマーは恍惚の表情を浮かべる。


『あぁ、もう少し……あと少しであの方に会うことができる。私の長い長い目標がやっと……あぁ待ち遠しい』


最後に爆弾魔ボマーはあの方の名前を呟いた。

まるで生き別れた想い人を思い出すように。


『早く会いたいです……芸術家アーティスト……』


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