第一章ー22
「い……今のは……」
「なんで会長が倒れてるんだよ……」
目の前の光景が理解出来ない様子の海と愛斗。
「い、一瞬だけ雷属性のディーヴァを全身に纏ったのは見えましたけど……」
「あ、あぁ……それに全身に術式と同じ模様が浮かび上がっていたな……」
「それに師匠が一瞬だけ光ったような……」
何とか一瞬だけ目で捉えることが出来たらしい未来、寧々、津々良も目を見開く。
「氷上さん……今、千凪君は何をしたの?」
阿澄が悠奈に質問する。
悠奈は貴人がしたことを理解していると思ったのだろう。
「未来ちゃん達が言った通り、貴人は術式を展開したんです」
「そうだとしても何で会長が倒れてるんだ……?」
悠奈の言葉を聞き、より一層疑問に感じた様子の愛斗。
悠奈は笑顔で答える。
貴人が周りを驚かせたことが誇らしいのだ。
「雷化っていうマギで簡単に言うと自分の体を雷にしたんだよ。みんな会長の蛇の方に意識がいっていたから気づけなかったんだと思うよ」
「簡単に言い過ぎだろ……そんなの普通出来るわけないだろうが」
悠奈の言葉を簡単に信じることが出来ない様子の寧々。
イメージをする事が出来ればある程度の事が出来るとはいえ、自分の肉体を原子レベルで別のものに変えてしまうなんて普通は無理なのだ。
それは悠奈も分かっている。
「私も最初見せられた時は驚きましたよ……」
「あんなマギ使われたら勝てるわけないじゃないですか!?雷速って事ですよね!?」
「だから貴人はあんまりマギを使いたがらなかったんだと思うよ? 他のもあんな感じだから……」
「雷速って……」
声を荒げる津々良と、驚きを通り越したのか冷静になる愛斗。
まさかここまで貴人が出来る奴だとは愛斗も思っていなかったのだろう。
貴人の強さを実感した様子の阿澄が一人呟いたのだった。
「五月祭が楽しみね……」
ーーーー
「ん……ここは……?」
香は目を覚ます。
辺りを見回し自分は今控え室のソファーに横になっている事に気付く。
「あ、起きました?」
「貴人君……」
声のする方へ香が振り返るとそこに貴人の姿を確認できた。
どうやら貴人が自分をここまで運んでくれたらしい。
それと同時に、自分が負けた事も悟った。
「そうか〜また決勝戦で負けちゃったか〜。一体どんなマギを使ったの?」
香の言葉に貴人は自分が行使したマギの説明をしてくれた。
「なるほどね〜、雷速で私に近付いて電撃でビリビリ〜って感じか〜」
貴人の説明を聞いた香は驚き、その後少しだけ悔しい顔をせずにはいられなかった。
「あ〜また準決勝で負けちゃった〜これじゃあ会長の面目丸潰れだね」
「いやいや会長、術式を二つ同時に展開出来る所を見せたんだから誰も文句は言えないでしょう」
「君に言われてもなぁ……」
「ははっ、俺にマギを使わせただけでも十分凄いですよ」
「凄い発言ね……」
貴人の傲慢ともとれる言葉に苦笑する香。
「それに俺が優勝すればあそこまで追い詰めていた会長も凄いって事になりますよ」
「ふふっ、本当に……自信家ね……」
「俺は謙虚な方ですよ。ていうか会長はチーム戦があるじゃないですか」
「そうなんだけどねーなんか個人戦で負けて自信無くしちゃったなー」
「ははっ……」
拗ねる香を見て貴人が苦笑いを一つ。
「五月祭まで何か協力出来る事があれば何でも手伝いますよ」
「本当!? あ……でもそれは活動の一環として、ってことで何か見返りが必要なの?」
最初は目を輝かせていたが少し慎重に貴人に尋ねる香。
「そうですね……それじゃあ依頼内容とその報酬はーーってのでどうです?」
「なっ!? 本気で言ってるのそれ!?」
貴人の提案する条件を聞き声が大きくなる香。
これでは明らかに自分が好条件すぎる。
「本気ですよ。どうです?」
「それじゃああまりにも釣り合ってない気がするんだけど……」
「え? 不満ですか……?」
「逆よ! 逆! そんな報酬でいいのかって聞いてるの!」
「こんな良い報酬は他にありませんよ」
そう言いながら貴人は笑う。
本当にそう思っているのだろう。
香は了承する。
「それじゃあ喜んで依頼させてもらうわ。よろしくね貴人君?」
次の日から香へのスパルタ指導が始まったのであった。




