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やりたかないのに陰陽師  作者: 辻本 真悟
第一章 『サンチカ・ハッカー・スパイダー』
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第4話 ダウンロードの序時(プロローグ)

晴明さんがやる気を出しません!

本尊ホンモノの殺気が、サンチカの結界内をバリバリと音を立てて凍りつかせる。


 だが、俺の影に潜む太陰たいいんは怯むどころか、冷たい風を俺のうなじに吹きつけてきやがった。「三代目、早く出しなよ。切り刻んで遊んであげるから」と、血生臭い愉悦に声を弾ませてやがる。

 白虎びゃっこ天空てんくうも、俺の意識の裏側で「戦わせろ」と牙を鳴らしている。こいつらは全員、自分が最強だと信じて疑わない傲慢な神霊どもの集まりだ。


「……いや、あかんやろ。お前らを出したら、サンチカどころか三宮が地図から消えるやろ」


 俺は心の中で毒づき、震える道満と博雅の襟首を掴んだ。


「今は引くぞ。……おい太陰、風を巻け。一瞬で地上まで押し上げろ」


 太陰は不服そうにフンと鼻を鳴らしたが、次の瞬間、地下通路を暴風が吹き抜けた。俺たちはその風に文字通り「乗せられ」、最短距離で地上へと弾き出された。


 なぁ、あんたなら信じられるかい?

 弾き出されながらも、あの美少女(道満)は九字切り(ドーマン)の手を止めちゃいなかった。蜘蛛に操られた野良犬どもをただ切り裂くだけじゃない。内部から、完膚なきまでに破裂させていってやがるんだ。


 夕方の三宮の風が頬を叩く。

 背後を振り返っても、地下の闇は静まり返ったままだ。

 あんな「格」の違う化け物なら、地上まで突き抜けてくることなんて容易いはず。なのに、土蜘蛛本体の気配は、境界線でも引かれたかのように地下の闇の奥へと静かに退いていった。


「……なんで追ってこない。あいつ、俺たちを舐めてんのか?」


 博雅が悔しそうに拳を握りしめるが、その時、一台のパールホワイトがタイヤを鳴らして滑り込んできた。


 ――パァン!


 場違いなほどデカいクラクション。

 Y33シーマの窓が開き、リオ先生がサンルーフ越しにメンソールの煙を吐き出す。


「はい、そこまで。グズグズしてると永田町のクソジジイ共の迎えが来ちゃうわよ。乗りなさい」


 俺たちは革張りの後部座席に転れ込んだ。

 博雅の泥だらけの靴に、リオ先生がルームミラー越しに般若のような視線を飛ばす。


「……ちょっと、シートが汚れたらクリーニング代、安倍くんの家系図ごと差し押さえるからね」


「……分かっとるわ。それより先生、あいつ……なんで引いた?」


 俺の問いに、リオ先生は不敵に微笑み、アクセルを踏み込んだ。


「今はまだ『その時』じゃないからよ。あいつにはあいつの事情があるの。……それより、あんたたち今日はもう解散。各々、自分の家に帰って寝なさい。あとの後始末ごみそうじは、有世と私でやっておくわ」


 シーマは夕闇の神戸を滑るように走る。

 三宮の喧騒が遠ざかり、俺たちはそれぞれの帰路へと、重い身体を引きずって向かうことになった。


 なぁ、あんたならどう思う?

 こっちは最強の「不発弾」を抱えてイライラしてるってのに、敵には見逃され、担任にはこき使われるこの虚しさ。


 俺? 俺ならとりあえず、母ちゃんの作る温かいメシを食って、死んだように眠るだけだ。


 だが、別れ際の道満のあの鋭い横顔と、博雅の静かな怒りを見て、俺は悟った。

 この戦いは、まだ「ダウンロード」が始まったばかりだってことに。


会社員やりながらで進めてますので更新遅くて申し訳ないです。

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