エピローグ 前編2『再起動(リブート)の朝食と家族のケジメ』
「おい、泰臣!! もう一回きくぞ、なんで黙ってたんや!!」
雁助さんの怒声が響き、博雅の父が親父の襟首に手をかけようとした、その時だった。
「――じゃあ、お前らなら言えたのかよ」
親父が、見たこともないような真面目な顔で、静かに、だけど重い声を絞り出した。
襟首を掴もうとしていた博雅の父の手が、止まる。
「自分の子供が、あんな悲壮な面で帰ってきて……。毎日毎日、泣きじゃくって、どうしようもないほどの心の傷を作ってまで、魂を削って友人を救ったなんて。……そんなこと、親の口からお前らに言えたのかよ」
親父の視線は、誰を見るでもなく、一年前のあの日、血と泥にまみれた俺を抱き上げた自分の掌を見つめているようだった。
「……言えるわけねーだろ。俺だって、あいつが……晴明が、自分の魂と引き換えにした『答え』を、どうやってお前らに伝えたらええか、今日までずっと分からんかった」
店内に、再び重い沈黙が降りた。
雁助さんは拳を握りしめたまま俯き、博雅の父は力なく椅子に座り込んだ。
なぁ、あんたならどう思う?
親父のあんな顔、初めて見た。
俺を放っておいたんじゃなくて、親父もまた、俺が作った「バグ」の重さに、一年間ずっとハックされ続けてたんだ。
母ちゃんが、静かに親父の肩に手を置いた。その手が、微かに震えている。
……はぁ。やりたかないねー、本当に。親子揃って、不器用すぎるだろ……
俺は冷え切ったオムライスを胃に流し込み、震える指先で空になった皿を見つめた。
大人が泣いて、怒鳴って、そしてようやく、一年前のあの日から止まっていた空気が、北野の海風に混ざって流れ始めた気がした。




