表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

出会い編 ネットを始める

 さて。


 時を同じくして、私の人生にはもうひとつのイベントが起きた。

 自宅に、父がインターネットを導入したのである。

 私は自分用のパソコンがなかったので、父の隙をついてインターネットを利用していた。

 この頃の私は、画材(主にコピックといういいお値段のするマーカー)を買うための小遣い欲しさに、大学受験も近いというのにスーパーでアルバイトをしており、そのお陰で初めて自分用のゲーム機を購入できていた。

 その時にハマっていたあるゲームのファンサイトを、ぐるぐるとネットで巡回するのが日課になっていた。


 Sさんと初めて出会ったのは、あるファンサイトでのことである。

 当時、SNSはネット交流の主流ではなく、個人サイトの掲示板を利用することが多かった。

 そのサイトの掲示板では多くの仲良しさんが、ゲーム以外にもあれこれと雑談しており、私もそこに入れてもらい、色々と話をしていた。

 Sさんはその中で人気者だった。

 優しく気さくで、しかし時に「この人変わってるなあ……」と驚かされる天然のトンガリぶりを発揮することがあり、よく目立つ方だった。

 私はその頃カラーイラストを描くようになっており、イラストを描くのも上手だったSさんの絵をよく参考にした。


 彼女の作風は柔らかくも眩しい光と、繊細なキャラクタが印象的で、シンプルな構図に羽、花、少年少女などがよく映えていた。

 白い羽に、黄色、ピンク、細く淡いブルーなど様々な色が入り混じっているのに白にしか見えないという、独特の色彩感覚だった。

 私は今も、反対色や補色を用いた混色の仕方を褒めてもらえることがあるのだが、塗り方は全く違えど、根本的なイメージは間違いなくこの人の絵だったと思う。

 恐縮させてはいけないのでそうは言わなかったが、私はSさんを師とあがめていた。

 実際彼女は、自分を偉い人間のように扱われることを好まなかった。


 掲示板で数えきれないほど言葉を交わすようになると、お互いにFAX番号を教え合い、イラストを送り合ったりするようになった。

 メールではなく、アナログな手紙やイラスト、時には自作の同人誌なども送り合った。


 家族構成、仕事のこと、これまでのことや今のこと。交わした内容は数知れない。

 彼女は当時の私について、私の家族よりも詳しかったかもしれない。


 私は以前、イラストで、人物の「耳」を描くのが嫌いだった。

 サイズと言いつき方と言い、どうもパーツとして好きになれない、不要物のように感じていた。

 しかし、Sさんがある時「耳が好きなんですよね」と言うのを聞いて、「耳が好きって人間がこの世にいるのか!」と衝撃を受けた。

 それから、「じゃあ描けるようになっておいた方がいいよなあ……」と思って耳の練習を始めた。

 今私が耳を描けるのは、彼女のお陰である。

 いいの。

 お陰なの。


 また、私は、同人誌などの漫画を描く時の自分の描線が嫌いだった。

 私は主線を古い丸ペン(線が太くなるので)、細い線は新品の丸ペンを使っていたのだが、どうもガタガタして気に入らなかった。

 かといってペン先を変えたらというと、これがもっと気に入らない。

 しかしある時、Sさんがおっしゃった。

「クナリさんのペンの線っていいよね」


 私の頭は?マークで埋め尽くされた。

 さすがに、父親譲りの大阪弁で「そうなんや! わいのペンはイケてるんや!」と鵜呑みにはできなかった。


 しかし、

「本気で言ってくれてるんなら、有り難い。しかしそれなら、Sさんに恥をかかせるわけにはいかないから、更に練習しよう。逆にお世辞で言ってくれているのなら、それこそこれ以上気を遣わせるわけにはいかない。更に練習しよう」

とは思えた。


 それから私は、つけペンの練習を日々の創作に盛り込んだ。

 今私がまともにつけペンを扱えるのは、彼女のお陰である。

 これはそう言えるはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ