↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/32

その後の話


 警察への事情聴取は恙無く終わった。

 精神を病んだ男が元妻を襲い、娘を攫おうとした。

 しかし幼い子供を連れたまま逃げる事は叶わず誘拐は断念。男は娘を置いて逃げ、それを俺たちが見つけた。

 そう言うストーリーになった。

 男がスズの母親を暴行した姿が防犯カメラに映っており、奴が激昂した様子でスズと共にいた所も従業員が見ていた。表面上は疑われることは無く、俺たちは警察から解放された。


「…………ふぅ」


 注文したアイスコーヒーで喉を湿らす。……苦い。格好付けて砂糖を断るんじゃなかった。

 夕方に差し掛かり、昼ほどフードコートは混んでいない。ゆっくりと慣れない苦味を味わう。

 

 スズの母親は病院で目を覚ましたそうだ。命の別状はないとの事。流石に迎えには来れず、祖父母が来るそうだが。

 それまでの子守りを引き受けたは良いが、僕は疲れてしまった。薊達に押し付けてコーヒーブレイクというわけだ。


「相席いいかな?」


「……どうぞ。なんだ、楓も逃げてきたのか」


「そりゃね。刃だけ狡いよ。私の歳で子供のパワーに付き合うのは大変なんだ。スズちゃんはカンカンに怒ってるし」


 32歳はまだ若いだろうに。まあ両親への怒りを撒き散らすスズの相手は何歳でもキツい。

 ス(・)ズ(・)は(・)何(・)ひ(・)と(・)つ(・)覚(・)え(・)て(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 一般人はネストでの記憶を持ち帰れないらしい。だからスズには両親は急な仕事で帰ったと伝えてある。

 両親に裏切られた彼女の激情は筆舌しがたい物があった。

 ……まったく、怒りの矛先を間違えているぞ。


 ————ゆるさないゆるさないゆるさない! 返せ! 返して! ……うわあああああああっ!


「……そういえばポイントの件は助かった。貯まり次第返したいから連絡先を教えてくれ」


 あの戦いの後、有無を言わさず楓が僕に対してポイント譲渡を行なった。額は3000、大金だ。

 助かるが借金生活は落ち着かない。早く返済したい所だ。


「連絡先を教えてって……ナンパかな? 気持ちは嬉しいけど歳の差がなぁ……私は構わないけど」


 楓が自らの胸を抱きしめ、潤ませた瞳でチラチラとこちらを見てきた。悪質な冗談だ。

 

「……お前なぁ」


「ふふっ……なんてね。ポイントはそのままあげるよ。君にばかり負担を強いるのも面白くないし。それにこれでも真面目に貯金するタイプでね。ポイントには困っていないんだ」


「助かるよ。ありがとう」


 楓がいなければ戦えたかどうかも怪しい。人質にされてしまった事もあるし、負担というならそちらも大きいと思うけどな。まあ貰える物は有り難く貰うのが僕の主義だ。


「でも連絡先は交換しておこうか。このアプリにおいて信頼できる友達ってのは貴重なんだ。それにお姫様抱っこのやり直しがまだだしね」


 そういえばそんな事を言ってた気がする。安請け合いしてしまったな。

 まあそのくらい構わない。お姫様抱っこはタダだしな。僕は損しない。

 友達……というのは違う気もするが、楓は強いし信用出来る。連絡先くらいは構わないだろう。


「はいはい。じゃあ登録するか」


「うん……ッ!」


 楓が僕のスマホを見て固まった。何かおかしい所でも…………ああ、見ているのはストラップか。

 僕のスマホにはオレンジ色のストラップが付けられている。アクセサリー部分は割れてるし傷だらけだが使えなくもない。

 勿体無いから拾ってきた。


「……新しい物を買ったらどうかな? 指を怪我したら大変だよ」


「帰ったら多少の補修はするさ。傷だらけの犬なんて格好いいじゃないか。それに僕は思い出の品ってのを大事にするタイプなんだ」


「…………そうか」


 楓がワシワシと僕の頭を乱暴に撫でた。揶揄ったり子供扱いしたり忙しい奴だな。

 ひとしきり僕の髪をボサボサにし、楓は僕と連絡先を交換した。


「そうだ! お近付きの印に夕食でもどうかな? 薊ちゃんも誘ってさ。お姉さんが回らないお寿司をご馳走してあげよう! 近くに行き付けの名店があるんだ。週一で通ってるけど全く飽きない最高の寿司さ!」


 楓が大袈裟に手を叩いて提案する。僕らは元々外食する予定だから構わないが……寿司ときたか。


「……ははっ、寿司か。寿司ね、いいよ。ご馳走になろう。赤シャリを使った本格寿司かい? それともゲテモノの乗った創作寿司かな?」


「え? なんか変な事を言ったかな?」


 笑い出した僕の姿を見て、楓はキョトンとした表情で頬を掻いている。

 なんでプレイヤーは寿司好きばかりが集まるんだろう。僕も好きだけどさ。

 なんだか無性に可笑しくなってしまった。

 笑い過ぎて涙が出そうだ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。