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4. 若くして成功を収めた女性の、その姿の裏にある理由

(青葉凛(あおばりん)視点)


「はぁ……やっと今日のシフトが終わった。疲れたぁ……」

「このカッチリしたシャツ、本当に首が締まるわ。脱ぐ、脱ぐ!」

「ふぅ……せいせいした。どうせアパートで一人なんだから、下着とブラトップだけで十分よね?」

「家でわざわざフォーマルな服を着る意味なんてないでしょ? 暑いし! どうせ私のこんな格好を見る人なんて誰もいないんだから」


 私はアパートのリビングにある、ふかふかのソファに体を投げ出した。

 半裸の腕の肌に触れるソファの表面の冷たさが、ひんやりとして心地いい。

 静まり返ったアパートの天井を見つめていると、無意識のうちに口角が上がり、小さな笑みがこぼれた。


「でも……ここ数日の深夜シフト、本当に楽しかったな」

「陸(りく)くん……保土ヶ谷陸(ほどがやりく)。あの子、本当に面白い大学生よね」

「さっきVIPルームのホコリの掃除の仕方で説教した時の顔……ぷっ、あの無表情な顔のまま、少しも反抗せずに素直に従うんだもの」

「深夜シフトは暇だって? はぁ……甘いわね。でもその一方で、彼の仕事ぶりはすごく丁寧だし、彼との会話はいつも私の心を落ち着かせてくれる」


 私はソファのクッションに手を伸ばし、それを胸にぎゅっと抱きしめた。

 はたから見る人たちは、私のことを決まって『若き成功者・青葉凛(あおばりん)』とか『自立した威圧的なキャリアウーマン』と呼ぶ。


 ええ、私はわざと人前でそういうイメージを作り上げているのだ。堅苦しいフォーマルな装い、冷ややかなサファイアブルーの視線、そして非常に厳格な態度。

 でも、彼らは知っているだろうか? それがすべて、私が必死に築き上げた自分を守るための鎧でしかないということを。


「昔は……私だって、無邪気に笑って、あんなふうにはしゃぐ普通の女だったのに……」


 〇


 かつて、私がまだ二十五歳になったばかりの頃、私はある一人の男とこの『ネットカフェPORT』を立ち上げた。元婚約者だ。


「凛(りん)! 来月君が二十五歳になったら、いよいよ俺たちの夢だったネットカフェを本当に作るんだ!」

「もちろんよ! このために何年も貯金してきたんだからね? 私が経営管理をして、あなたがマーケティングを担当する! 二人で一緒に経営していくのよ!」

「ずっと君を支えるって約束するよ、凛(りん)。愛してる。永遠に」

「ふふっ、私も愛してるわ」


 あの頃の私は、本当に恋に盲目だった。私たちは『ネットカフェPORT』の設立に成功し、店も少しずつ繁盛していった。

 この幸せが、永遠に続くのだと思っていた。


 だが、現実はそんな私の顔をひどく強く殴りつけた。

 たった一年後、私がちょうど二十六歳になった時、すべてが音を立てて崩れ去った。


「ち、違うんだ! ま、待ってくれ、これは君が思っているようなことじゃなくて! 誓って言う、ただの魔が差しただけなんだ!」

「魔が差したですって!? 私たちのベッドにその女を連れ込んだのよ、この馬鹿! 私が夜遅くまで必死に残業して店の帳簿をつけてる間に、あなたはこの女と浮気してたっていうの!?」

「許してくれ、凛(りん)! 絶対心を入れ替えるから! 頼む、もう一度だけチャンスをくれ! お願いだ、婚約を破棄しないでくれ!」


 足元で土下座をして泣き喚く彼を見て、ズタズタに引き裂かれた私の心には、なぜかまだ少しだけ情が残っていた。あの時の私は、本当に甘すぎた。


「ひぐっ……うっ……わかったわ。許してあげる……でも覚えておいて、これが本当に最後だから。次同じことをしたら、もう終わりよ」

「ありがとう、凛(りん)! ありがとう! 絶対に二度と君を悲しませないって誓うよ!」


 あの時の自分がどれほど愚かだったことか。ワニの涙を信じてしまうなんて、おめでたい女だ。

 彼を許し、もう一度二人の関係をやり直そうとしてから一ヶ月後、本当の裏切りが起こった。


「あ、青葉(あおば)さん! 大変です! 婚約者さんが……共同口座から店の運転資金の大部分を引き出して、連絡が取れなくなっています!」

「な、なに……? 冗談でしょ! そのお金は、来週サーバー機材のローンを返済するためのものなのに!」

「ほ、本当なんです、青葉(あおば)さん! それに噂では……以前の浮気相手の女と一緒に県外へ逃げたって!」


 その日、私の心は完全に粉々に砕け散った気がした。私が信じた男、二度目のチャンスを与えた男は、裏で再び私を裏切り、私の苦労の結晶を持ち逃げしたのだ。

 そして、まるで神様が私に与える試練にまだ満足していないかのように――。

 元婚約者が逃げてから一ヶ月後、心臓病で入院していた両親の病院を訪れた時――。


「凛(りん)ちゃん……お父さんを許しておくれ……お前がこんなに苦しんでいるのを見るのは、もう心臓が耐えられないみたいだ……」

「お母さんもよ、凛(りん)ちゃん……あなたがこんなにどん底の時に、一人残して逝くことを許してね……」

「い、いやっ! お父さん! お母さん! お願い、目を開けて! 私を一人にしないで! 店の問題はどうにかするから、だからお願い、いかないで!」


 あの時の心電図モニターのフラットラインの音が、今でも耳の奥で鮮明に鳴り響いている。

 裏切られて心が粉々に砕け散った時、私が最も寄りかかれる場所を必要としていたその時に……すべてが私から完全に奪い去られた。

 私の身を案じすぎたせいで、両親は立て続けに心臓発作を起こし、亡くなってしまったのだ。


 〇


 それ以来、私は自分の心を固く閉ざした。


 私は一人でこの『ネットカフェPORT』を立て直した。涙をこらえ、借金を埋めるために昼夜を問わず働き、ようやく今の成功を掴むに至った。

 人々は私のことを称賛の言葉で呼ぶようになった。

 だがその裏で、この成功は私の人生に新たな寄生虫たちを引き寄せることになった。


「青葉(あおば)さん! 実は僕、前からあなたが好きでここで働き始めたんです! どうか僕と付き合ってください! 絶対にあなたを守りますから!」

「申し訳ありませんが、私が探しているのはアルバイトスタッフだけです。プロとして働く気がないのなら、今すぐここから出て行ってください」

「チッ! 高飛車な女だ! ちょっと美人で成功してるからって、何様のつもりだよ!? この行き遅れババア! 明日で辞めてやる!」

「また……いつも同じサイクルの繰り返し」


 いつも私の外見目当てでバイトに応募してくる男ばかりだった。彼らは親切なふりをして私を口説き、私がきっぱりと拒絶した途端、逆ギレして一週間も経たないうちに辞めていく。


「はぁ……この世の男なんて、結局みんな同じ。どいつもこいつも自分の性欲とエゴのことしか考えていない」


 何年もの間、私はずっとそう思っていた。

 だけど……先週、あの少し変わった大学生が私の面接室にやって来るまでは。


『うちに応募してきた一番の理由はなに?』

『金です』

『は? それだけ? ほかに理由は……?』


 あの時、私は本気で怪しんでいた。もしかして彼も他の男たちと同じなんじゃないかって。

 だけど、次に彼の口から出た答えは、完全に私の予想を裏切るものだった。


『彼女はいませんし、面倒くさい青春の恋愛経験をわざわざ作ろうとも思っていません。だから、夜の時間は完全にフリーなんです。アパートでぼんやり過ごすくらいなら、こんな静かな場所で働いてお金を稼いだ方がマシですから』


「ぷっ……あはははっ! 何よその答え?」


 他の男たちがこぞって私を口説いたり、私の前でカッコつけようとしたりする中で、保土ヶ谷陸(ほどがやりく)という名のその大学生は、これっぽっちも興味を示さない無表情な顔でそう答えたのだ。

 そこには欲望に満ちた視線なんて微塵もなかった。彼のその温かい焦茶色の瞳は、純粋に平穏と仕事のことだけを考えているのがわかった。


「あんな無愛想で何も気にしていないような顔をしているのに、夜になれば、彼が淹れてくれるブラックコーヒーはいつも私の心を温めてくれるんだから」


 私はソファの上で寝返りを打ち、熱を帯び始めた顔をクッションにうずめた。


「陸(りく)くん……あなたはこの『ネットカフェPORT』がお客さんたちの逃避場所だって言ってたわよね?」

「でも、教えてあげる……」

「私があなたを即採用した理由も、最初から下の名前で呼んだ理由も……」

「それは、これまで出会ってきたたくさんの人たちの中で、あなただけが私に安心感を与えてくれた唯一の男だったからよ」


 私は部屋の隅に綺麗に掛けられた仕事用の制服を見つめながら、優しく微笑んだ。


「もしかしたら……私があなたを雇ったのは、ただ従業員が欲しかったからだけじゃないのかもしれない」

「むしろ密かに、あなたのその存在そのものを、この孤独から逃れるための私自身の『逃避場所』にしているのかもしれないわ」

「ふふっ……明日の夜は、どんな種類のコーヒーを私に淹れてくれるのかな?」

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