第四十七話:Fクラスの愉快な面々
再びやってきた月に一度の模擬戦。僕たちFクラスの前に立つのは、一つ上の階級であるEクラスの十人だった。
「僕が全部防ぐから、みんなは攻撃に集中して!」
開始のブザーが鳴り響くと同時に、僕は前に出て大剣を構えた。
Eクラスの生徒たちが一斉に魔法を放ってくる。しかし、一ヶ月の地獄の特訓を積んだみんなの動きは、以前の怯えていた彼らとは別物だった。
「はい、アゲてくよ〜っ!
テンション、マックス〜っ! 全員バフ盛り、いっきま〜す!」
金髪で派手なギャル令嬢のミアは、軽快なステップを踏みながら味方全員に支援魔法をかけていく。
特訓前は汗をかくのを嫌がっていた彼女だが、ダンストレーニングにはどっぷりとハマってしまったらしい。僕が知ってた教えた『マイムマイム』みたいなフォークダンスを独自に進化させ、今ではキレッキレのオリジナルステップを踊り続けている。正直、今の彼女にダンスバトルで勝てる自信は僕にもない。
「ルークさんの背後は、わたくしがお守りしますわ!」
黒髪で清楚な令嬢のリリアは、僕の後方で巨大な魔杖を軽々と構えていた。
元々は魔力も少なく貧血ですぐ倒れるような大人しいお嬢様だったのに、僕の筋トレをこなした結果、バキバキの体幹と尋常じゃない腕力を手に入れてしまったのだ。
僕が大剣で魔法を弾いた際、わずかに飛び散った火花や衝撃波を、彼女は重い魔杖を物理で振り回してバコンッと叩き落としている。回復役のはずなのに、立ち姿が完全に前衛の動きだ。
他にも、クラスの真面目なリーダーであるクラウスは特訓の成果で強固な防御魔法を展開し、おっちょこちょいなムードメーカーのマルコは、走り込みで鍛えた俊足で敵の死角へと回り込んでいた。
「いっけえええ! 俺の炎――うわっと!?」
しかし、勢い余って足をもつれさせたマルコが派手に転び、前方にいる僕の背中に向けて火炎魔法を誤射してしまった。
「ル、ルーク! 避けろ、危ないッ!」
背後から迫る熱線。僕は振り返ることなく、首をわずかに傾けてスッと横にレかわす。マルコの炎は僕の頬のすぐ横を通り抜け、そのままEクラスの陣地へ飛んでいく。
「ヤバっ、今のルークマジかっけー!」
「ええ、背中に目がついているようですわ!」
背後でミアとリリアが黄色い声を上げる。
「くそっ、あの平民ウザいぞ! まずはあの肉盾から沈めろ!」
僕の余裕な態度に苛立ったEクラスの連中は、一斉に僕へと的を絞り、魔法の雨を降らせてきた。僕が大剣の腹で魔法を弾き落としていると、敵の一人が僕の死角をつき、隙だらけのミアへ向けて鋭い風の刃を放った。
「もらった!」
「えっ、ちょっ――」
隙をつかれ反応が遅れたミア。
僕は床を強く蹴り、神速の踏み込みで一気にミアの元へと駆けつけた。そして、間一髪のところでミアの腰を抱き寄せてフワリと抱き上げると、右手一本で大剣を振り抜き、迫り来る風の刃を力任せに打ち返した。
パァァァンッ!
僕が弾き返した風の刃は、不意打ちを狙った生徒に直撃し、強烈な爆風で相手を吹き飛ばす。
「大丈夫? ケガはない?」
「あ……えっと……」
僕の腕の中で抱き抱えられたミアは、顔を真っ赤にしてポーッとしていた。大丈夫だろうか? 頭でも打ったのかな?
「ル、ルーク……マジ、ヤバすぎ……」
常識外れのスピードと腕力にドン引きして完全に動きが止まったEクラスを、クラウスたちが一気に制圧する。
ビーーーーッ!
試合終了のブザーが鳴り響き、誰一人欠けることなく、僕たちFクラスの完全勝利が決まった。
歓声が上がる中、魔杖を構えたリリアがツカツカと歩いてきて、ジト目で僕たちを睨みつけた。
「……ルークさん。いつまでそうしているおつもりですか? ミアさんばかりズルいです」
「えっ?」
「はっ!? ち、ちげーし! アタシは別に……っ!」
リリアの言葉でハッと我に返ったミアは、顔を限界まで真っ赤にして、バッと僕の腕から飛び降りた。
「勝ったのは嬉しいけどさ。結局、一番美味しいところは全部ルークに持っていかれた気がするぜ」
マルコが少しだけ悔しそうにため息をついて僕の肩を叩く。
顔を赤くして慌てるミア、頬を膨らませるリリア、文句を言いながらも晴れやかな顔で笑い合うクラスメイトたちを見て、僕は嬉しくなって一緒に笑った。
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