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第85話 表彰式って、なんか嫌。

今回は、毎コンでの表彰式ですが、歌手『新垣麻里亜』の任期はすさまじいものがあります。

(2月4日です。)

  今日は、毎コンの入賞者の表彰式だ。港区にあるサントリーホールで行われる。いつもなら『ブルーローズ』と言う小ホールで行われるのだが、今回は2000名も入る大ホールで行われるそうだ。


  コンクールの実行委員事務局から、『参加料はいらないから、絶対に来て貰いたい。』と再三の連絡が学校と自宅にあったそうだ。表彰式に出て、記念コンサートをするのに参加料を取るのも変だと思ったが、取らないと言うので、少し得をした気がする。


  恵美先生が、課題曲を考えてくれたし、まあ、ササッと演奏して帰ってしまおうと考えていた。しかし、その考えが間違っていることは直ぐに分かった。


  青山通りに面しているサントリーホールには、長蛇の列ができていた。2000枚のチケットは、完売してしまったそうだ。


  私は、いつもの眼帯と制服用のダサいコートを着ている。中は、『シルバー・プリンセス』のステージ衣装を着ていた。これも実行委員会からの要望だった。


  控室に行くと、皆、ドレスを着ているのに、なんか私だけ浮いている感じだった。でも、ぜひにと言われると断れない。目的は分かっている。この大勢の観客の殆どは『シルバー・プリンセス』のファンの人達だった。


  私が、高校生の部で優勝したことは、皆知っていた。そして今日、記念コンサートをする事も知られているので、コンサートチケットは、発売と同時に完売となってしまった。


  そのため、最初は小ホールだった会場を急遽大ホールにして追加販売を行ったのだ。


  絶対にクラシックとは縁が無さそうな男の子達が、会場を埋め尽くしている。異様な雰囲気の中、表彰式が行われた。


  予想は出来たが、私の表彰の番になった時、会場内は拍手で包まれた。他の子達とは明らかに違う雰囲気だった。私の次は、大学生の部のお姉さんだったが、ピタッと止んだ拍手に、顔が引きつっていた。


  演奏会が始まった。私は、一番最後だった。さっきの大学生のお姉さんが、主催者の人に文句を言っていたが、その気持ち、よく分かります。私も、早く演奏を終わらせたいので。


  表彰状は無駄に大きくて、邪魔になったので、トイレで異次元クロークにしまってしまった。きっと二度と出てくることはないだろう。


  夕方近くなって、私の番がきた。恵美先生から弾くように言われている、


  シューベルト:幻想曲『さすらい人幻想曲』 D760作品15ハ長調


  を弾く。何故か、私だけ異質な感じがする。今までの方達は、あまり難易度の高くない聴き慣れた曲ばかりだったのに、恵美先生、私に何をさせたいのですか。でも、ずっと弾いていたら、そんなことは気にならなくなった。純然に音の流れ、曲のイメージが湧き上がって来て、会場の皆に聞かせてあげたいと言う気持ちになって来た。


  約20分の演奏だった。終わったら、物凄い拍手だ。いつまでも鳴り止まない。私は、拍手の中、袖に戻ろうとしたら、係の方が走り寄って来て、驚きの申し入れがあった。


  アンコールをしてくれとのことだった。全く準備していないのに、マイクがセットされた。それって、歌えってこと?


  この場で断る事もできない。仕方なく、ピアノの前に座る。ディズニー映画からの『レット・イット・ゴー』を、原語で歌い始めた。この歌は、大好きな歌だったし、コンサートでも何回も歌っているので、歌詞と楽譜は暗記している。


  歌い終わった時、一瞬の静寂ののち、爆発的な拍手が沸き起こった。カメラのフラッシュが何個も光続けていた。


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(2月5日です。)

  今日は、シズちゃんにノエルちゃん、サヤちゃんとミズハちゃんが我が家に遊びにきている。キョウちゃんとマコちゃんは用事ができて来られないそうだ。皆で、1階のレッスン室でお茶会だ。何故か、皆、目いっぱいおしゃれをしている。ミズハちゃんなんか、薄くお化粧までしていた。


  お茶を入れようとしたら、そんなことはいいから、早くアオちゃんを呼んでと言われた。仕方がないので、『念話』でアオちゃんに下に降りてきてもらうようお願いした。


  アオちゃん、いつもの少年の姿で現れた。身長は140センチ位、10歳くらいの少年の姿だ。


  「初めまして。僕はアオといいます。以前はナギと呼ばれていました、」


  普通に喋るのに、皆、驚いていた。そういえば、ニューヨークの表彰式では、アオちゃんは『念話』で話していたので、今、初めて声を耳にしたのだ。ナギさんの時は、『念話』もしなったし。


  皆、いろいろ聞いてきた。本当の名前や、年齢、それに彼女がいるのかどうかなどだ。


  本当の名前は長すぎて、覚えられなかったらしく、スルーされていたが、年齢には吃驚していた。2800歳だそうだ。井草川は出来てから3000年ほどは無主の川だったが、2800年前、100年以上生きていた蛇のアオちゃんが神格化したらしい。その時、龍の姿になり、その後、川の主として人々の畏怖と信仰を受けていたのだ。


  川の氾濫も、田畑への治水もすべてアオちゃんの力によりコントロールされていた。昭和56年に全流域が暗渠化されたことに伴い、力を失い、白蛇としてこの屋敷の敷地内にて細々と暮らしていたのだ。


  貯めていた霊力が完全に失われた時、アオちゃんは、その存在を失うところだったのだが、私と暮らすようになって、元気を取り戻し、今は、新西湖の主としてふんだんな力を得ているのだ。


  ノエルちゃんが、さりげなく聞いていた。


  「ねえ、もっと大きな子にも変身できるの?」


  アオちゃん、何も言わずに、身体が光ってきた。みるみる、身長が伸びて、170センチ位になってしまった。顔つきは、少し大人びてきたようだが、まだまだ少年の顔だった。


  「キャー!!!」


  皆、異常に喜んでいた。うん、これならボーイフレンドの対象となると喜んでいるのだろう。でも、それって、絶対に無理だから。それにアオちゃんが私達と一緒位の年齢になったら、私と一緒に暮らすなんて父様が許してくれない。この姿は、ここだけと言う事にしておこう。アオちゃん、私の気持ちを察して、すぐに元の10歳児に戻ってしまった。


  それからは、アオちゃんとのツーショットを写メで取ったり、アオちゃんの服の素材を確認したりと賑やかだった。そういえば、アオちゃんの服は、布地のように見えるが、単なる布地ではなく、霊力が具現化したものらしい。だから、変身するときには素っ裸ではなく、服を着た状態で変身できるのだ。でも、触った感じは、間違いなく絹のようだった。


  春になったら、皆で、新西湖に遊びに行くことまで約束させられて、今日のアオちゃんお披露目パーティはお開きになった。


  そう言えば、アメリカ公演のお話はどうなったんだろう。皆、パスポートを持っているのかしら。私は、当然に持っていない。アメリカに行くのなら、未央ちゃんやアリスちゃんも連れていきたいな。今度、米良さんに相談してみよう。


  その日の夜、父様に相談してみたら、母様も一緒ならOKと言ってくれた。父様は、仕事が忙しくて行けないそうだ。未央ちゃんやアリスちゃんは行く気満々だった。でも、アリスちゃん、お勉強しなくていいの?


  米良さんは、アリスちゃんに歌手デビューさせたいみたい。でも、お勉強があるからって断っているのに。父様から、次の木曜日と金曜日は、開けておくようにと言われた。聞くと、この前聞いていた魔物防衛隊の発隊式らしいのだ。え、何、それ。私には関係ないはずなんですけど。


  そう思ったが、どうやらこの前の約束により、全てのスケジュールが組まれているらしいのだ。私とアオちゃんの二人で参加するとの事だった。場所は、新西湖を監視している新富士駐屯地前線基地らしい。初めて聞く基地だが、樹海から発生してくる魔物を撃退するために1個師団で常駐しているらしいのだ。その隊庭で行われる発隊式には、安芸総理大臣も列席されるそうだ。


  新部隊の正式名称は、


  『国際連合対未確認生物防衛隊派遣部隊』


  と言うらしいが、略して『国連魔物防衛隊』だそうだ。物凄く、安直だと思うのですが。それで、私は、何をすればよいのと聞いたら、父様も詳しい事は分からないそうだ。危機管理室に自衛隊から派遣されている女性隊員がいるので、その人と連絡を取ることになっているそうだ。


  知らない人と口をきくのは嫌だなあと思っていたら、仮面をかぶったままで良いと言うので、我慢することにした。


  翌日の夕方、総理官邸から段ボールが届けられた。中には、私のための防衛隊服だった。黒の詰襟服で、ダブルの金ボタンが並んでいる。肩には金色の礼肩章、袖と襟そして胸の合わせ目の縁には同じく金色の装飾が施されている。いわゆる儀仗兵のような制服だ。しかし、下がボックスのミニスカートというのは、絶対に『おじさん』の趣味に違いない。膝近くまでの黒の編み上げ靴を履いて、白の帯革を付けると軍人らしく見える。でも、このミニスカでは、絶対アキバ系の服装だろう。


  後、儀礼用の短剣が添えられていたが、中身は玩具だった。でも、外観は白の皮が貼られていて、金色の凝った装飾が施されていて、かなり可愛い感じだった。


  私は、じっとそれを見て、イメージができて来たので、自分のショートソードの鞘と柄に手を当てて『練成』の力を流していく。ショートソードは、その玩具の剣と同様の色に変化していった。


  制服と一緒に、新しい銀仮面も送られてきた。持ってみると、ものすごく軽い。チタン製らしい。表面には、クロームメッキが施されて鏡のようだった。そして、最も大きな変更点は、鼻先から下がない事だった。


  ニューヨークでは、仮面をかぶったまま、おにぎりを食べたけど、マスクをずらしながら食べていたので、食事ができるようにしてくれたのだろう。


  早速被ってみると、顔のサイズにぴったりだった。うん、これからは、このマスクにしようと決めた。

アオちゃん、イメージとしては、あの超有名な男の子とよく似ています。

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