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33 模擬戦Ⅲ

投稿が遅くなりました。すいません。

「シュガー!」

「ぶべっ」


いきなり背中にレティが突撃してくる。不意打ちだったせいで地面に顔面をぶつけた。痛い。


「レ、ぇ!?」


抗議の声を挙げる暇もなくレティに仰向けにされる。


バシーンッ!


馬乗りになったレティに頬を叩かれる。何の遠慮もないくらい力が籠っている。

ビックリして顔を見ると、泣きそうな表情をしたレティが視界に映る。

なんでそんな顔してるの…あれ、わたしは…。


瞬間、身体から何かが抜けるような、心が軽くなったような、スッキリした気分になった。


わたしは、レティを泣かせてまで何しようとしてた?


あれが飲まれるってやつなの…? レティ以外の全てが憎く思えてくるような、ズブズブと沼に沈んでいくような、なんとも嫌な、くらーい感情が湧き上がってきてた。

でもやっぱりレティは別なんだなあ。レティが中心にあって、それ以外はいらないって感じだったな。わたしレティのこと好きすぎるんじゃないかしら。



なんだかさっきまでの自分が怖い。でも、レティのおかげで戻って来れたんだ。



「レティ…あ」

「正気に戻って!!」


バシーンッ


「まっ」


バシーンッ


「れてぃ」


バシーンッ


連続ビンタである。レティの左腕が折れてて使えないため片側だけ。口を挟む暇もない。

もう平気なんだけど、レティは気が付いてない。

レティはわたしに何か恨みでもあるのだろうか。でも飲み込まれかけたのは事実だし、心配もかけてしまった。その罰だと思って、甘んじて受け入れよう。





しばらく叩かれ続けたが、レティが疲れてきたようだ。さすがにやりすぎだと思うんだ。


「レティさんレティさん、もう大丈夫なんで勘弁してください」

「シュガー! 大丈夫なの!?」

「むしろ顔が痛くて泣きそうだけど」


わたしの上からレティをどけて、立ち上がる。ついでにヒールもかけておく。顔に。


「シュガー、大丈夫?」

「大丈夫よ。ありがとうねレティ」






~数日前~



「闇魔法について聞いたじゃない?」

「うん」

「正直、いつか習得すると思うのよね」

「え…」

「レティが怪我したら、怪我を負わせた相手に憎悪を向けると思うのよ」

「それは…うん…」

「でもどうにかなるとも思うのよ」

「どういうこと?」

「心の奥に、そういった感情が眠っている気がしてるけど、これが悪いものだとは思わないのよね」

「そうなの?」

「まあ、悪いっちゃ悪いんだろうけど、飼いならすというか、共存するというか、なんていえばいいかわかんないけど、これもわたしの一部なのよね。だからたぶん、どうにかなる可能性はあるんじゃないいかなって」

「ホントに?」

「魔物は闇魔法と親和性が高いのよ、きっと。でももしダメそうなら、レティがひっぱたいてでも正気に戻してくれていいわ」

「わかった。思いっきり叩くね」

「少しぐらい容赦してくれていいのよ…」



~~~~





わたしはシュガー。レティの友達。元人間の、魔物。ユニーク個体の、ヴァイスフックス。

うん。もう大丈夫。


「ちゃんと正気に戻ったわ」

「良かった。全力で叩いたおかげだね」

「最初の一発で大分正気だったんだけどね…」


最後に小さく呟いた言葉はレティには聞こえなかったようだ。





「とりあえず、模擬戦の途中なのよね」

「そうだったね」


離れたところで様子を窺っている四人に手を振ってみる。

すると意図が伝わったのか、一度武器を下ろし、手を振り返してくれる。

そしてもう一度武器を構えなおした。


ああ、ちゃんと意図は伝わったらしい。


「再開ね」

「うん」




「あ、レティ。鑑定してみてくれる?」

「いいよ」


キツネの姿に戻る。この姿じゃないと鑑定できないの面倒ね。




名前:シュガー

種族:ヴァイスフックス(ユニーク)

性別:雌

状態:普通

HP:442/950

MP:460/855

魔法属性:水(Lv4)、土(Lv4)、光(Lv4)、闇(Lv1)

スキル:変化(Lv6)、並列思考(Lv1)





「上がってる」

「おおー。さすが闇魔法」

「闇魔法も習得してるね。あと、新しいスキルがあるよ」

「そんなに? 怖いくらい上がるわね」


並列思考か…便利そうね。これで手足代わりの尻尾をもっと効率良く動かせるようになるんじゃないかしら。


「早速使ってみましょう。それじゃあレティ、イケるわよね?」

「もちろん」


四人…いや、すでにクレアさんがいないので三人に、構えて向き直る。



さーて、狩るか、狩られるか、楽しみましょう!





尻尾は…4本!


「ウィンド・エレメント!」


レティの風魔法がわたしを包む。


なんだかテンション上がるわね!!


「テイルナイフ!!」


4本の尻尾を乱れるように振り回す。その全てから風魔法付与効果による斬撃が飛ぶ。

地面をえぐるような威力がある斬撃、当たれば相応に怪我をするだろう。

でも、あの人達はそれを避け、防いでいる。掠っても直撃などしない。避けて、はじく。スキルレベルが上がったからその分、動きも強さもさっきまでとはまるで違うはずなのに。


そして、無視できないものが出てくる。



超頭痛い。



スキル・並列思考を使ってみたら頭痛がすごい。確かに動きは前に比べて格段に良くなる。尻尾の本数を増やしても問題ない。

でもその分脳への負担が凄まじいのか、激しく頭が痛い。

これは長続きしないかも。



でも、まだまだイケる!


「はあ!!」


続けてテイルナイフを飛ばす。確かに頭は痛いが、まだ平気だ。使えるものは使っていかないと。

しかし、それだけしながらもあの人達はそれを超えてくる。

斬撃の嵐をかいくぐりながらヴィックさんがこちらに近づいてくる。

スキル・直感のおかげなのだろうか。あの人は未だにまともに攻撃を食らっていない。


できれば近寄らせたくない。尻尾で地面すれすれの位置を薙ぎ払う。ヴィックさんがジャンプして躱したところに2本目をぶつける。

空中で躱せないヴィックさんは剣で防ぐが、後退していく。


「エアショット」


後退したヴィックさん目掛けてレティの魔法が飛んでいくが、ルースさんが斬り伏せる。


どうやら多少ステータスが上昇した程度では、あの人達を倒すのは難しそうだ。



「ストーンバレット」


セレーナさんが唱えた魔法が上空から降り注ぐ。

一つ一つは小さな石だけど、セレーナさんのスキルのせいで量が桁違いだ。

わたしはそれを巨大化させた尻尾で傘を作るように防ぐ。所詮は小石だ。硬質化させた尻尾ならば痛みはない。


「ウォーターアロー」


レティがセレーナさん目掛けて魔法を飛ばす。

しかし届く前にルースさんに叩き斬られる。

魔法を斬るってすごくない? できるできないっていうか、まずやろうとしないと思うんだ。失敗したら大惨事じゃん。怖いよ。



なんて思いながら相変わらず尻尾で攻撃を続けていたところへ。


「みーつけた」

「う!?」


近くまで来ていたクレアさんを見つけた。

逃げられないよう尻尾を巻き付けるように捕まえる。

並列思考で分裂させた思考の一つに、聴力だけに集中をさせてクレアさんを探したのだ。

闇魔法習得前に比べて聴力やその他の身体能力が上がっているのも見つけられた要因かな。


「クレア!」

「ブーストライト!」


ヴィックさんの速度が上がった。尻尾で防ごうとするが、速い。爪も尻尾も総動員させて漸く速度が落ちる。

早いとこクレアさんをどうにかしないと。尻尾が1本減る上に、クレアさんがザクザクと尻尾にナイフを突き立てているから痛い。

レティがルースさんとセレーナさんに魔法を飛ばしているが、ルースさん一人で捌けている。

これでは手数が足りない。


クレアさんを捕まえている尻尾を大きく振りかぶり、クレアさんをルースさんとセレーナさんの方まで投げる。


「きゃあああああ!!」

「と、トルネードウィンド!」


セレーナさんが発生させた竜巻にクレアさんが巻き込まれる。そのままゆっくりと竜巻は小さくなり、クレアさんが地上に着地する。荒っぽい助け方だけど、怪我はなさそうだ。酔ってそうだけど。




「レティ」

「何?」

「そろそろ時間がないんだけど…」


スキルの使用時間が長すぎる。もうこれ以上は無理だ。

尻尾のおかげで近寄られていないが、スキルが使えなくなればただの尻尾でしかなくなる。


「うーん…じゃあ最後に、ウィンド・エレメント、アクア・エレメント」


いつも通りの魔法付与をされたので、いつも通りに決めましょう。


「よし…テイルナイフ!!」


4本の尻尾を今まで以上に大きく、重く、硬くして、四人に叩きつけた。



ドオオオン!!!



さっきまでとは比べものにならないほどの大きな音が鳴った。




砂煙があがっていたけど、徐々に晴れてきて、四人の姿が見える。

四人とも立っていた。すごいな。まあ、尻尾が地面につく前に何かに触れた気がしたから、何かしらの方法で防がれたんだろうな。


どうやら次は向こうの番らしい。

ヴィックさん、ルースさん、セレーナさんの三人が魔法を唱えるようだ。クレアさんは魔法を使えないようだから不参加みたい。


「怖いのきそう」

「魔法を唱えておきましょう」


アクア・エレメント、アース・エレメント、ライト・エレメント、ウィンド・エレメント、といった魔法類を唱えてせめてもの防御だ。

あとはどうにか直撃をさけるしかない。


「ライト・エレメント!」

「フレイム!」

「トルネードウィンド!」


熱線と炎が混じった竜巻がわたし達を襲った。

これ当たったら死ぬ!

レティを抱えて必死に走った。





必死に逃げ回った結果、どうにか生き延びられた。


「レティ…生きてる?」

「…なん、とか」


なんとか直撃は防いだが、熱いし痛いしでダメージが大きい。

ふたりで地面に倒れこんだ。


今後は平日のみの更新となります。たぶん。

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