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憤怒の代行者  作者: KKSY
37/38

37 始まりは強制的に

 それは、神藤(しんどう)祐介(ゆうすけ)達が召喚されて、数日も経っていない時の出来事である。


 世界の情勢を把握する為に、勇者達は集まって歴史の勉強をしている時に、その話題は出てきた。


「何故異世界の犯罪者は美男・美女が多いのか、甚だ疑問である」


 と、苦虫でも噛み潰した様に早美(はやみ)涼太(りょうた)が言う。


「答え、はっちゃけるお年頃だから」


 と、肌を焼いたギャル風の女、高坂(こうさか)(みなみ)が面倒臭さ100%な口調で答えた。


「所でネクラマンサー」


死霊術師(ネクロマンサー)だ。お前今俺の前髪で呼んだろ!」


 早美涼太の前髪は長く、右側に纏めて寄せている今完全に目が隠れている。毎度の事ながらそれで見えているのだから祐介は不思議で堪らない。


「じゃあ切れば? 鬱陶しいしキモい」


「その歯に衣着せぬ物言い……。鬱陶しいのは俺も感じてるがキモいは酷いだろ」


「なら皆に聞いてみる。キモいと思うひとー?」


「そんな子供みたいな聞き方、って! お前等手ぇ挙げんなよ! 優しさの欠片もねぇな!」


「ほら、キモいじゃない」


「はぁ。分かった、分かりましたよ! 俺はキモいよ、これでいいか!」


「うわ、自虐とか引くわー」


「うがー!」


 死霊術師が理性を無くし野生化したが、高坂南のビンタで人間へと戻った。


「こいつ、手加減しなかった……!」


 涙目、というか普通に泣いていた。頬は既に腫れ始めており、響いた音から男女ともに関係なくゾッとしている。


 しくしくと泣き崩れる早美涼太に苦笑いを浮かべながら、歴史の教科書に目を通す。そこで、ひとりの犯罪者に目が止まる。


 ソフィリナ・フォン・リッケンベルク(当時17歳)。彼女は魔物の研究をしており、歴史的な発見をしたにも関わらず、発表直後にその記録の全てを抹消した重罪人である。当時、彼女は一組の男女と行動を共にしていた記録があるが、詳しくは不明である。


「十七才で研究者か」


「よくある、触れてはならない禁忌に触れたとかなんじゃないか?」


 復活した早美涼太が頬を押さえながら言った。


「でもさ、魔物って偶発的に生まれる奴だろ? 別件の線は考えられないか?」


「考えられないな。だって、発表してからその記録消したってあるだろ? 研究結果がやべぇって気づいたのは発表した後って事じゃん、違う?」


「それは……、そうか。でもじゃあ、なんで消したんだろうな」


「知らね。でも分かる事があるとすれば、今でも魔物の研究がされているにも関わらず、何も分かっていないって事はだ。ソフィリナって奴はすげぇ天才だったんだなって事だな」


「そっか、十七才だもんな、うん。……あ! 過去のひとなら早美の力でどうにか出来ないか?」


「無理。死霊術師ってのは死霊を使役する訳じゃないっぽい。それに本人の墓が何処なのか分かんないとそもそも不可能だ」


「なんで墓?」


「ん? んー、魂は墓に眠る、から?」


「そういうもん?」


「そういうもん。死霊術師的な観点から言うと、輪廻天性とかは迷信なんだなって。魂はひとつの器にひとつだけ、生まれ変わりなんてないんだ。……ない、筈になるんだが」


「なんだよ、歯切れが悪い」


「んー、あー。……可能性、飽く間でも可能性で、死霊術師の俺からすると有り得ない事なんだが、拓斗だしなって事で、言うぞ」


 繰り返される前置きに、自然、祐介はごくりと喉を鳴らす。


「あいつの魂がこの世界に在る。でも生まれ変わってる可能性もあるし、到底見付けられない」


「――――」


 二呼吸程、祐介は放心していた。彼が我に帰った時、言葉に出来ない衝動のままに任せて早美涼太の肩を掴んだ。


「どこ! タクは! あいつは! どこに!」


「落ち着けって! 飽く間でも可能性の話だ! 死霊術師的には有り得ない事なんだ! でも拓斗の消え方は普通じゃなかっただろ! もしかしたらの可能性でしかないし、この世からどうなってるか分からない魂を特定するのは無理だ! この眼で視なきゃ的な意味で!」


「居るんだな!? 在るんだな!? タク本人じゃなくても魂ってのは確かに存在してるんだな!?」


「バカじゃないの?」


 不意に襟首を掴まれ、祐介は引っ張られるがままに転がされる。見上げると、瞳に暗い光を湛えた高坂南が居た。


「アンタ、アイツの魂っての見つけて、それでどうするの?」


「どうって、生まれ変わってるなら、見守りたい。物語みたいに姿がそのままなら、嬉しいけど」


 前者は兎も角、後者は有り得ない。言っていてそう感じた。それは高坂南も同じなのだろう。彼女は後者に言及せず、吐き捨てる様にこう言った。


「くだらない、結局は別人じゃない」


「俺だって、くだらないとは思うよ。もしかしたらの可能性で、タクは俺達と全く関係ない人生を送ってるかもしれない、そこに顔を突っ込むのは迷惑なのかもしれない、けど! それでも俺は一目会いたい! そう思っちゃダメなのかよ! 友達を、親友を求めちゃダメなのかよ!!」


「良いんじゃない?」


「……え」


「良いんじゃない、て言ったの。会いたいなら会えば良い、別にその想いを否定しないから」


「じゃあ、なんでくだらないなんて」


「……ワタシは」


 そこで、高坂南は自分の手を見つめた。祐介は疑問に思ったが、彼女はすぐに自嘲する様に鼻で笑う。


「ワタシはもう割り切ったのよ。割り切って、切り捨てて、でも想いは残ってるから、これはただの八つ当たりなのかもね」


「南……」


 異世界へ召喚された直後、いの一番に取り乱したのは紛れもない、彼女である。泣き喚き、叫び散らし、全員で取り押さえなければそのままこの国の姫を殺していただろう。


「ごめん。冷静じゃなかった。部屋、戻るわ」


 高坂南が部屋を辞した後も、なんとも言えない空気に満たされていた。全員、理解出来るのだ。納得も出来るのだ。ただ、受け入れられないだけで、彼女が間違っている訳ではないのだ。


「悪い、勉強するムードじゃなくなったな。今日はもう、終わろう」


 絞り出す様にして、どうにか告げる。


 全員、何も言わず部屋を辞する。数人、励ます様に祐介の背中を叩く者が居た。最後に残ったのは、早美涼太だった。


「すまん、余計な事言った」


「……いや、いいよ。全然」


「神藤、俺さ、この国を出るつもりだ」


「え?」


「この国を出て、拓斗の魂を探すつもりだ。なんだかんだで、俺が一番拘ってるんだと、自分では思ってる」


「お前……」


「一緒に、来ないか?」


「俺は――」


 それは、まだ神藤祐介が己の誓いを守れていた頃の出来事。それから先、幾度もの惨劇を目の当たりにし、何度も心を折られ、挫けながらも、長い時をさまよう始めの一歩。


 彼の望みの為、敷かれた(定められた)レール(運命)は長く続く。立ち止まる事の許されない、長く険しい道程は、まだ、始まったばかりなのだ。

『繋がる力』、他人から力を借りる程度の能力。

 神藤祐介に発現せし能力である。

 勇者向けの能力として、女神が外付けで魔王に足した力であり、魔王本人は気持ち悪がっていた。曰く、存在意義に関わる、とのこと。

 この話の時点で繋がる先はひとりのみ。ただし神藤祐介にその自覚はない。

 ついでに言うと、時限斬は神藤祐介の能力となんの関わりもない。借りているだけである。

 繋がる先のネタバレは控えるが、あだ名でタクと呼ばれる事になる人物である。

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