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憤怒の代行者  作者: KKSY
33/38

33 魔王城にて

 やる気が湧いている内に、ちまちまと書いて行きます。

 なお、伏線回は続いている模様。

 ロサンティーヌは頭を抱えていた。


 白衣に袖を通し、赤い髪を頭の上で結わえている彼女は頭を抱えていた。


 彼女が現在居るのは勇者に割り当てた部屋の中だ。ここ二週間程、貴重な食料をしこたま持ち込んで引き籠る勇者をいい加減引っ張り出そうと足を運んだ次第である。

 なお、頭を抱えている事から分かる通り、酷く後悔している模様。


「……はぁ~~」


 長い溜め息から分かる通り、彼女は酷く疲れている模様。

 続いて、自分に言い聞かせるようにぶつぶつと呟き始めた。


「うん、現実を見よう。見たくないけど見よう。でも、これは、うん。……見たくないな~もう~~」


「おいこら、ひとを見て固まったと思ったらなんか酷いぞお前」


「酷いのはあんたよ! えぇっ!? 何がどうしてそうなった!?」


 髪を掻き乱し、ふしゃー、と眼前で不満顔を晒す少女を威嚇するロサンティーヌ。


 少女の見た目は十三歳程だろうか、ピンク色の髪をボブカットにし、大きな丸眼鏡を掛けている。寸胴体型ではあるが、腰のくびれははっきりとしていて、女の子らしい。

 ただひとつ、その容姿にそぐわない格好を除けば、であるけれど。


 もう一度言うがここは勇者に割り当てた部屋である。当の勇者は男であり、長年鍛えて筋骨隆々な肉体を持ち、年齢も壮年の域に達している。性別が女でなければ若々しくもない。

 何故こうなったのか。

 思い当たらない事もないロサンティーヌとしては、敬愛する魔王様にどう報告しようかと頭を悩ませる思いである。


 そう、驚く事に、勇者は性転換の秘技を発明してしまっていたのだ。しかも肉体改造のおまけ付きである。


「いや、どっちかって言うと性転換の方がおまけなんだけどな?」


「うっさいハゲ」


「ハゲてねぇーし! はぁ、いいや、戻るぞ」


 言うと、言霊が作用したのか、ひとつの魔術陣が勇者の爪先から頭の天辺まで通っては消える。

 するとそこには筋骨隆々の黒髪勇者が居た。


「あ、十円ハゲ見っけ」


 勇者が引き籠る以前は、研究室で共に魔術の開発に魔物の研究を進めていた仲である。それなりの関係を築けていると自負しているし、実際『地球』という別世界の話を聞かされていた。

 その中で出てきた単語のひとつが『十円ハゲ』で、知識欲が溢れ出ているロサンティーヌが、早速使ってみると、勇者は涙目になった。


「ハゲてねぇーし!」


 さっと頭部を手で隠す勇者。指先でどこがハゲているのかを確認し、絶望した。脱力したらしく、四つん這いで項垂れている。


「嗚呼、ずっと缶詰めだったからストレスで、マジかー、マジかー……」


「籠って何をしているのかも思ったら、もう」


 呆れて何も言えない。


「いやさ、肉体改造まで出来たから、後はホルモンバランスを弄くって、食事制限すれば筋肉が落ちて女性的な体に出来上がると思ってたんだよ、最初は。でも暇だったから有り余る時間を使って肉体改造の研究を進めてたら、性転換が出来ちゃったのよ。ふっしぎー!」


 話している内に気力が回復したのか、最後はおどけて見せる余裕が窺える。

 復活した気力をボッキリ折ってやろうかとほのぐらい思いを抱きながらも、ロサンティーヌは取り敢えず、


「そういうのは前もって言いなさい!」


「ぅえ!? ちょ、あびゃあぁぁぁぁーーーー!!??」


 心配をかけた代償として、勇者を窓からぶっ飛ばした。




 受け身を取った際、頭を強打したらしく、気絶する勇者を片手で引き摺り、魔王城の廊下を歩くロサンティーヌ。

 魔王城の掃除に精を出すゴーレムが敬礼をしようとするのを、片手をあげる事で制する。人間の魂が入ったゴーレムは業務に戻った。


 幾ら人間の魂が入っているとは言え、ゴーレムに命はない。だと言うのに、ゴーレムには生前と変わらない意識がある。魂の残滓。命の残留思念。魔力の記憶と諸説あるが、魔王城にある図書館では分からなかった。

 魔王城の図書館は魔王様の知識そのものである。そこに何もないと言うことは、魔王様も知らない概念である事に違いない。


 だからこそ研究意欲を刺激される。


 魔王さえ知らない知識を生産する。その瞬間を想像するだけで体の芯が喜びにうち震えた。


 だが、と熱した頭に冷水を掛けられた様に興奮が収まる。


 図書館の奥深くに、ひとつの扉があった。それを見つけた時、ロサンティーヌはなんとかして開けようと努力したが、結局は無駄に終わっている。


 図書館にある、開かずの間。


 ――もしかしたら、

 世に出てはならない知識が、そこに有るのかもしれない――


(……なんてね)


 そして、件の図書館の前に差し掛かり、ロサンティーヌは足を止めて扉を見つめた。


 もうひとつ、不思議なものが胸につっかえていた。


 十数代にも渡る魔王の歴史。何千年、何万年と積み重なった魔族の歴史。


 魔王には、一代にひとつ、特殊な能力がある。


 『死霊術』『魔導師』『以心伝心』『超直感』『芸術家』『繋がる力』『手繰る運命』エトセトラ。そして、神を殺し、世界を手にした先代の魔王『憤怒の代弁者』。


 幾つもの代を重ね、数万年もの時を刻み、それでも、分からない事がある事実が、不思議で堪らなかった。

 プロローグが、行く先を暗示していると誰が言った?

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