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憤怒の代行者  作者: KKSY
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022 魔王様は笑う

 本日二話目。

 何事もなく無事に依頼を達成し、町へ戻る頃には夕方になってしまっていた。依頼は村に暮らす祖母に孫からの贈り物配達。中身は知らないが、そこで老人特有の長話を展開され帰還が遅れに遅れたのである。馬屋の管理人も短い時間で三度も顔を合わせる事になって苦笑していた。


 馬の世話には、塩塊を舐めさせ、飼葉を与え、全身をマッサージするという工程がある。その関係で、出掛ける貴族が馬の世話をさせる為に従者を付けるのは、ある種のお約束なのだ。


 酒場の店長に依頼達成の報告をして、報酬を貰う。お使いなどの依頼では、子供の小遣い程度だが、取り敢えずとして初依頼は無事完遂した。


「ふむ。キャン、記念に何か買うか。何が欲しい?」


「え? いいですよ。私などに使うより、もっと有意義に」


「有意義だ。少なくとも俺にとっては、これ以上にない程有意義だ」


 帰りの帰路での出来事。辺りは薄暗く、街灯が道を明るく照らしている。まだまだ外は明るい為、街灯の恩恵は少ない。

 道行く人はみな疲れた顔をしており、仕事帰りである事が窺える。赤レンガ造りの民家から芳ばしい夕げの香りが漂い、空腹に腹が鳴る。


 夕食は肉にしようと決め、魔王様は目についた本屋へと入店。別に本を焼いて肉を焼こうという訳ではないので勘違いしないように。


 来店を告げる鈴がなり、従業員の「らっせー」というなんともやる気のないマニュアル言葉が魔王様達を出迎える。定型文通りに言えよとツッコミたいが、ここはぐっと我慢。命拾いした従業員は暖気に欠伸をしている。


 紙の匂いが店内に充満していた。どちらかと言えば小規模の店内には所狭しと本棚が立ち並んでいる。新書なのか平置きされている書物の数々。こっそりと懐に入れたら簡単に盗めそうだ。そんな卑しい真似をするつもりは毛頭ないが。


 さてさて魔王様が本屋にやって来た目的は童話である。古今東西、子供に伝え聞かせるまず最初の本は童話と決まっているのだ。何かキワモノはないかなと見て回り、やがてひとつのタイトルに視線が吸い寄せられる。


 タイトルは『ゴブリンの逆襲』しかも絵本形式の童話である。


「これにしよう!」


「魔王様のぶっ飛んだセンスにわたくし涙が隠せません」


「口調が変だぞ」


「それぐらい頭に来てるんですっ。届け! 私の想い!」


 当然「むむむ」と念じたところで想いが届くはずもなく、無情にも会計を済ませて図書を購入。キャンはがっくりと項垂れた。


 なお、キャンは『ゴブリンの逆襲』のファンになった模様。


***


 早朝、仕度を整え、完全武装を済ませてのダンジョン前広場。有りとあらゆる露店が立ち並び、冒険者を呼び込む為の開店準備をしている人達の姿がそこにはあった。


 武具店に雑貨屋、換金所にアクセサリー店、薬屋にポーション屋と様々だ。因みに、薬屋とポーション屋の違いは病気か怪我の違いである。


「なんですかこのポーション……」


 得体の知れない物を触る手付きで、青い液体の入った瓶をちゃぷちゃぷさせる。試しに一本購入した物だ。


「店の店主に聞くところによると、また勇者だ」


「またですか」


 錬金術に長けた勇者が召喚されたらしく、当時「ポーションが無いファンタジーなんて砂糖のないケーキだ」と言って開発されたものがポーションである。当初はその錬金術でしか作れなかったらしいが、その後誰でも簡単ポーションレシピ集なるものが普及され、今でも改良が続けられているとのこと。


 朝方からダンジョンに入る冒険者は居ないらしく……、というよりもダンジョンが駆け出し冒険者用だとかで人気がない。難易度がゆるく、すぐに攻略出来て物足りないとの声が後を絶えないらしい。


 なので、駆け出しで中級ダンジョンに挑んでは命を落とすとのこと。完全に自業自得である。


 ひとが居ない内にさあ行こうとするが、


「…………」


(臭い。この臭さは間違いなく天使のものだ)


 自称神聖な悪臭を撒き散らす天使。その臭いがダンジョンの入り口から漂っている。


「――――」


 何故なのかは分からない。ダンジョンから何故天使の臭いがするのかも、何故ダンジョンが自身と敵対するのかも。


 入り口から槍が飛来する。到底ひとの貧弱な知覚領域では捉えきれない速度で魔王様に迫り、キャンの手によって掴み取られる。軽装モードの鎧に激突したところで、軽い音を立てて弾かれるだけだったであろうが、キャンには見過ごせなかったのだ。


 赤黒い瞳を爛々と輝かせ、知らず知らずの内に拳を握り締めていた。


 自身を敬愛する侍女が入り口を警戒する。開店準備を進めていた人間共が何が起こったのか分からず騒然とする。


 その中心で、魔王様は深い笑みを刻んでいた。


(彼女は生きている)


 握り拳が震えている。


 緊張? 恐れ? いや違う。これは歓喜だ。先代が討ち取った筈の神が生きている事に対する無上の悦びだ。


 魔王とは、神を討つ為に存在するのだから。


 深く、深ーく深呼吸を数回。適度に体から力を抜いて、ベストコンディションに整える。


 魔王の体は特別製だ。病気もしないし怪我もすぐに治る。意図的に体の調子を整える事も簡単だ。そういう風につくられているのだから。


「キャンよ。ここから先はダンジョン特有の罠満載、ダンジョンモンスターもこれでもかと用意されているだろう。覚悟は良いか」


「覚悟なら、貴方が目覚めたあの日に済ませました。それに私は付き従う者。貴方が行く所がどんな所であろうと、貴方と供に」


 愚問だったな、と唇の端を吊り上げる。


 小柄な少女は手に掴んだ槍を、万力の如くギリギリと締め上げ、ベギッと柄からへし折る。その細い腕の何処にそんな力が有るのかと傍観者が息を飲み、入り口から「入店お断り!」と言うように刃物が瀑布の如く降り注ぐ。


「キャン!」


「はいっ」


 侍女が前に飛び出す。しなる弓から放たれる矢のように、止まる事なく突き進む。


 絶対の支配者は悠然と歩き出す。


 王者に焦りは似合わない。故に彼女を先に行かせた。


 もしかしたらの懸念はない。


 それだけの信頼を寄せているというのも勿論だが、それよりも、


「この魔王の眷属が、そう易々と倒れると思うなよ」


 災厄の魔王は邪悪に笑う。心の底から愉しそうに、愉しそうに、凶相を浮かべてせせら笑う。


 笑う。笑う。愉しそうに、



 ――笑う。

 スマホの変換、その種類ガガガ。素直に変換されてつかーさい。

 今回は展開早いかな。でも自分の貧弱な発想力だとこんなもん。

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