17 私の名前はイーリア(第2部・終)
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「お前は、年齢の割にかなり肝が据わっているな」
突然の皇帝の言葉に、キリアは驚きを隠せなかった。
「仮にも、ここまで自分を育ててくれた相手に対して、情けも温情もないとは…流石にこの俺も驚いた。だが、それは中々に面白い。何しろ、一応は“親”だった者たちだからな」
キリアはすかさず返す。
「言ったはずです。親などと思ったことは微塵もありません、と。それに、私にとって生まれてから今までも、これからも親となるのは――ヴァロス様だけです」
皇帝は息を吐くように笑い、何故か真摯な眼差しでキリアを見つめる。そして、こうこぼした。
「これからも、か・・・」
(この人は、私を娘だと認めた訳ではないわ。ただ、珍しく面白いと思って下さっただけ。それでも、この国を離れられるのだから文句はないわ…)
キリアは皇帝の冷たい表情を意識せず、元気に明るく言った。
「うん!私にとってのパパはパパ一人だけだもん!パパ以外に私のパパに適任な人はいないわ!」
(ちょっと攻めすぎたかしら…?)
しかし、杞憂だったらしい。ヴァロスは一瞬、面食らった表情を見せた後、豪快に笑った。
「はっはっは、やはりお前は面白い。この俺のことを馴れ馴れしくそう呼ぶのも、お前だけだろう」
(良かった〜!殺されるかと思ったわ…)
そう心の中で安堵していると、ヴァロスが再び視線を向ける。
「パパ、なぁに?」
「皇族には神々から神力を授けられる。そして、皇族の名前は守護神に何かしら関係のある名前を付けることが義務になっている。だが、お前はその名ではない名前で、あの無礼者どもから呼ばれていたな」
キリアはヴァロスの意図を察した。守護神の判定が下るまで、正式な名で呼ぶことはできないのだ。かと言って、親だと微塵も思っていない相手が使っていた名前で呼ぶのは、彼でも気が引けるらしい。
「うーん、それならパパ、私のことはイーリアと呼んで!守護神が分かるまでの間だけ!」
ヴァロスは少し考えた素振りを見せ、やがて頷いた。
「イーリアか。悪くないな。守護神が分かるまではそれで行こう」
キリアは笑顔を咲かせ、勢いよくヴァロスに抱きついた。
「嬉しい!パパ、ありがとう!」




