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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十七章

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第465話 咲良捜索


 まずは『プラネットアース』の面々に慶介を加えた異邦人組。

 次に先ほど名乗りを上げたシグルドら、『リノイの果てなき地平』の六人。

 エスティルーナには他にライオットとシャンティ、あとはロアナが加わる。

 そこへ更に守衛組からナターシャ、それとやる気みなぎらせるアーシアが加わって臨時にパーティーを組んだ。


 そして拠点内に散らばっていたメンバーを集め、数日分の食料を用意。

 それらの準備だけで三十分近くもかかってしまい、信也の気はどんどん逸っていく。


「シンヤ、無理にでも心を静めるのだ。焦りは判断ミスを招くぞ」


「……エスティルーナ」


 エスティルーナに冷静に指摘されたことで、心の焦りを若干抑えることに成功する信也。

 リーダーたる信也が落ち着きを見せたことで、由里香や芽衣らの不安も少しだけ和らいでいく。


「気を付けてくださーーい!」


「無事に助け出してくれよ!!」


 拠点を発つ三組のパーティーに、残留組からの声援が寄せられる。

 こうして咲良捜索班はシルヴァーノらが逃げた先――《マグワイアの森》へと向かうのだった。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「足跡が入り乱れて分かりにくいんだけど、新しい足跡が左側と右側に分かれて森へと向かってるね」


 捜索班の中では最高レベルの盗賊職であるケイトリンが、"足跡追跡"のスキルで逃亡者たちの行方を見た所、このような結果が出た。

 今はまだ森に入ってはいないのだが、すでにこの段階で二手に分かれてしまっているようだ。


「二手に分かれて逃げているということ?」


「んー、どうだろうね。左に続く足跡からは焦りのようなものを感じる。どっちかってと、右側の方が隊列を組んで歩いた形に近い。まあそれでも大分乱れてはいるけど」


「では私達は左の方に向かおう。お前達は右の方を任せた」


「分かった。ではここで二手に分かれよう」


 エスティルーナの提案に即座に回答する信也。

 二手に分かれた捜索班は、森の中を足跡に気を付けながら先へと進んでいく。

 元々魔物の数が減少傾向にあった森だが、軍隊が進軍してきたせいもあってか、いつも以上に魔物の数が少ない。

 だけでなく、動物もほとんど見かけないような状態だった。


「……静かな森だ」


「そうさね。獲物の気配も感じない」


 森の左の方へと続いていた足跡を、追跡しているエスティルーナ達。

 すでに捜索を開始してから二時間余りが経過していたが、特に進展はない。


「足跡はまだこの先に続いてるね」


 "足跡追跡"の他に"方向感覚"などのスキルも持っているロアナは、随時足跡に気を使いながら移動をしている。

 一人、二人の足跡ならもう少し慎重に探らないといけないが、相手は集団で移動しているので、それなりの速さで移動しながらでも足跡の確認は取れていた。


「相手は集団で移動しているから、このペースでいけば追いつけそうですね」


 ライオットは魔術士であり、体力は前衛よりも少ない。

 だがBランクレベルともなると、それだけでDランクの前衛と同じくらいの筋力や体力を備えている。

 それに集団で移動する場合には、基本的には足の遅いものに合わせて移動することになるので、歩みはどうしても鈍くなる。


 エスティルーナらの移動力であれば、そうした相手に追いつくのは時間の問題だ。

 黙々と足跡を追うエスティルーナらは、その日の夜遅くになってようやく足跡の主に追いつくことに成功した。




「ダメね。サクラらしき姿は見当たらなかったわ」


 夜になり、森の中で野営をしている兵士達の下に忍び込んだロアナが、残念そうに報告をしてくる。


「ということはシンヤ達の方が正解だったということか……」


「みたいですね。それで、どうしますか?」


 森の中で野営をしているのは百人に満たない集団だった。

 隠密行動をするなら本来は火など焚くべきではないのだが、この冬の寒さのせいか幾つか焚火をして暖を取っているようだ。


「あの数なら問題ない。やろう」


「ああ。ついでにサクラのことを知らないか尋問するのに、生かしたまま何人か捕らえようか」


 まるでちょっとゴブリンでも狩ってくるといった様子のエスティルーナ。

 それに対するナターシャも大分物騒な発言をしている。

 そして蹂躙は速やかに実行された。

 数人は取り逃したものの、尋問用に捕らえた数人以外を全て討ち取ることに成功する。


「で? お前達はサクラの行方については知らないってのかい?」


「ふぁひ! わだぢたちはほんだいとははなれていで……」


 元の顔の形が分からない位にまで変形した兵士の話によると、彼らは拠点の西門や町の方を襲っていた兵だったらしい。

 撤退の魔法道具が未発動になったせいで本軍と合流することもできず、彼らは本軍から少し遅れて撤退を開始していた。

 そしてとにかく貴族派軍の本営まで逃げようと森を行軍してた所を、エスティルーナらが襲撃したという流れだ。


「エスティルーナさん、どうします?」


 ライオットが問いかける。


「……ひとまずこの生き残りの連中を拠点まで連れていこう。今からだとシンヤらに合流しようとしても遅いだろう」


 そもそもこの広い森の中で合流するだけでも難しい。

 そこで仕方なくエスティルーナは一旦引き返すことを決定した。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一方信也達とシグルドの集団は、順調にもう片方の足跡の追跡を進めていた。

 途中、森の中を流れる川の部分で足跡を見失うハプニングはあったが、少し時間をロストしつつも無事続きの足跡を発見することができた。


「わざわざ川の中を移動して足跡を誤魔化すなんて、相手にはそれなりに頭が切れる奴がいるみたいだね」


「というより、僕らの同業者じゃないッスかね? この発想は」


 川を渡ったところで途切れていた足跡は、数百メートルほど上流に上った先へと続いていた。

 これは足跡を見失ったロベルトとケイトリンが、川を渡った先で上流と下流に分かれて川辺を探索。

 そして上流を調べていたロベルトが、集団が通った足跡を発見したという流れだった。


 種が割れれば大したことない偽装だが、それだけ相手も余裕がないということだろう。

 百人単位での集団で動いているのだ。痕跡を隠しきれないのも当然だ。


 そして、実質的にはBランクに近い信也らと、実際にBランクであるシグルドらが追跡を続ければ、相手に余程の特殊な能力でもない限り追いつくのも必定。

 陽が暮れてからも捜索を続けた信也らは、ついに逃亡中の集団に追いついた。




「中の様子までは調べられなかったけど、天幕が並んでる所は怪しいね」


 "暗視"スキルを持つケイトリンは、この夜の暗闇の中でもある程度視野が効く。

 この先で野営している集団は、この凍えるような寒さの中、暖を取るための焚火すら焚いていなかった。

 最も幾つか設置されている大き目な天幕からは、煙が立ち上がっている。

 それらの天幕の中では恐らく火が焚かれているのだろう。


「だけどね。そんな天幕の中でも一つだけ、煙の上がってない奴があったんだよ」


「そこに今川が捕らえられている、と?」


「多分ね。ついでに言うと、その天幕の入口には見張りが二人ついていて、あたいの"空間感知"によると中には人らしき反応が一つだけある」


「人らしきってのはどういうことだ?」


「ほとんど動きがないのさ。大きさや形状からして人なのは間違いない。恐らく拘束でもされてるんだろう」


「……それは確かに可能性が高そうだ」


 ケイトリンからの情報を基に、この後の計画を立てていく信也達。

 すでに現時刻は日を跨いでおり、このままグズグズしていたら夜が明けてしまう。


 差し迫った状況の中、信也達が取った作戦は陽動役と救出役に分けるというものだった。

 野営してる兵の数は、ざっと数えた所でも三百近い数が確認されている。

 しかもこの集団の中にはAランク冒険者であるシルヴァーノも混じっているのだ。


 シルヴァーノだけであるなら、シグルドらで抑えることはできるだろう。

 しかしそれ以外にも厄介な相手がいることを考えると、まともに正面からぶつかるのは愚策だ。


 作戦を立案してから数分後。

 救出役の三人が配置に就き、陽動役の準備が整う。



「さあて、ケイドルヴァの深淵なる"火魔法"でこんがり焼きの出来上がりだよ。【ファイアウェイブ】」


「ちょっとケイドルヴァ! こんな森の中で使う魔法じゃないでしょ!」


「でもディズィー。陽動にはピッタリだと思わないかい?」


「……それもそうね。なら、『ヴァスダ』。お前も暴れておいで」


 ケイドルヴァの放った上級"火魔法"の【ファイアウェイブ】によって、野営をしていた敵陣営に炎の波が襲い掛かった。

 効果が広範囲に及ぶこの魔法は、敵兵士だけでなく物資や草木をも巻き込んで夜の闇を明るく照らしていく。


 そしてディズィーが追い打ちをかけるかのように、火の下位精霊であるヴァスダを放ち、更に火のないところにも火をつけていく。


「敵襲だああ!!」


「なぁ!? おい、火を消せ!」


「ゴホッゴホッ……、煙が……」


「敵はどこだあああッッ!?」


 ケイドルヴァの初手だけでもかなりの混乱が出ているようだが、そこに更に信也、芽衣、慶介の魔法が拍車をかける。

 慶介などは初手に魔法を放った後は、とっておきの"ガルスバイン神撃剣"まで使用していた。



「陽動が始まったみたいッスね」


「ボサボサしてないで早く行くよ!」


「わっ、待って欲しいッス!」


 あくまで小声で会話しているロベルトとケイトリンだったが、すでに周囲は大騒ぎになっているので、普通に話しても気に留められなかったかもしれない。

 ケイトリンの後ろには、ロベルトより先に動いていたラミエスが後に続いている。


 ロベルトも母譲りの"神聖魔法"が使えるとはいえ、母の熟練度は中級レベルにも達していなかった。

 これでは咲良の状況によっては、対処できない可能性もある。

 そのためリノイのヒーラーであるラミエスも、救出班に加わっていた。

 彼女の場合は、いざとなったら三体の魔獣を呼び出すことも可能だ。


 ケイトリンを先頭に、調査の段階で怪しいと睨んでいた天幕の下まで無事辿り着く三人。

 天幕前には情報通り二人の見張り番がいた。

 この混乱の中でも見張りの役割を放棄せず、今も死角から近寄ったケイトリンに辛うじて反応し……しかし、次の瞬間にはケイトリンの持つ短剣に喉元を掻っ切られて絶命する。


「て、てき――」


 それを見たもうひとりの見張りが異変を知らせようとするが、それはロベルトによって途中で強制的に途絶えさせられる。


「ちょっとぉ、もう少し早く――」


 ロベルトの口封じが少し遅れたことに、ケイトリンが文句を言おうとしたその時。

 救出班の耳に、隣の天幕の傍の木箱に立てかけてあった武器が、何本もまとめて地面に倒れる音が聞こえてきた。


「っ! 時間がない! さっさと中に入るよ!」


 先ほどの少しだけ遅れたロベルトの口封じに加え、今の武器が倒れ落ちる音はそれなりに目立つ。

 少なくとも、隣の天幕の中にいる奴には聞こえただろう。


 慌てて目的の天幕の中へ侵入する三人。

 この天幕は他の天幕に比べてサイズが小さく、数人が横になったらもう一杯という位のサイズしかない。


 だから、見逃すはずはないのだ。


「誰も……いない……?」


 確かにケイトリンが調査した段階では、この天幕の中にほとんど動きを見せない何者かがいたはずなのだ。


「ついさっきまで人がいたのは間違いないッス」


 "嗅覚強化"を持つロベルトが、天幕内の匂いから人がいた気配を感知する。

 流石に個々人の匂いまでは識別できないが、ロベルトは体臭の他にも強い血の匂いを感知していた。


「おい! 見張りの連中が倒れているぞ!」


 天幕の中に誰もいないという状況に、動きが止まっていたロベルト達。

 そこへ異変に気付いたらしい男の声が聞こえてくる。


「マズイ! 逃げるよ!」


「で、でも、まだサクラさんが……」


「いいから早くしな!」


 心残りのあるロベルトの動きは鈍かったが、天幕を抜けて逃走するには十分だった。

 追手を撒き、少し余裕が出た所でケイトリンが合図用の【雷の矢】を上空に放つ。


 ケイトリンの合図を受けた陽動班は、即座に撤退を開始。

 すでに陽動班の下にはシルヴァーノが駆けつけてきていたが、流石に六人のBランク冒険者相手では攻めきれずに膠着状態が続いていた。


 初めは撤退していく陽動班を追おうとしていたシルヴァーノだったが、副官の男に止められて追撃を断念。

 無事に逃げおおせた陽動班は救出班と合流を果たしたものの、肝心の咲良救出は失敗に終わったのだった。




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