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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第455話 アルザス攻防戦 前編


 街壁を挟んで対峙する両軍。

 貴族派は街を包囲することなく、南門の方に戦力を集中させている。

 数の上では貴族派の方が二倍近くも多かったが、街を包囲するには人数が足りていない。


 しかも、これだけの人数の兵站を確保できなかったので、包囲してのんびりと攻める余裕もなかった。

 そのため南門からの一点突破を狙っており、そのための大雑把な作戦も用意されていた。


 両軍の戦いは初め、弓矢、投石器、魔法部隊による魔法などが飛び交う遠距離戦から始まった。

 野戦ではそこから接敵して兵同士がぶつかることになるのだが、今回は拠点での防衛戦だ。


 貴族派はこの遠距離戦をしかけながら、破城槌を前進させ南門をぶち破ろうとするが、王家派もそれだけはさせじと、攻撃を破城槌に集中させる。

 しばらくはそういった、本格的に両軍がぶつからない戦いが続く。



 王家派は南門はどうにか死守してはいるものの、途中シルヴァーノが放った"轟雷魔法"によって、街壁の一部が大きく崩れる事態になった。

 元の街壁の一部と瓦礫も多数残っているので、軍隊がそのまま通れるような状態ではなかったが、Cランク位以上の者なら崩れた街壁を上って侵入出来る位にはなっている。


 そこから二百人ほどが街の中へと進入し、街中での激しい戦闘が行われることになったが、王家派はどうにかこれらを撃退し、破壊された街壁を"土魔法"で応急処置を施した。

 しかし脆くなってしまっているので、再び突破されてもすぐに対処できるように近くに守備兵を配置する。



 戦いが始まってから数時間が経過した頃。

 貴族派は南門突破の為に用意していた策を実行する。


「ヨーリスらをリンジーナの下に集結させろ。これより、先ほど崩した街壁に集中的に攻撃を仕掛けて敵の注意を惹きつける。その間に作戦決行だ」


「ハッ!」


 総司令官であるシャルルの命令は、すぐ様現場へと伝達されていく。

 そして指示通りに街壁の一部に再び攻撃を集中させ始めると、王家派としてもそこを重点的に守りはじめる。


「ほな、行きまっせ」


 オレンジに近い髪色をした短髪の女性――リンジーナが回りの準備が整ったのを確認すると、懐から小さな横笛を取り出して吹き始める。

 その音色はただ綺麗なだけではなく、魔法的な響きも伴っていた。


 彼女の周りには騎士、兵士、冒険者などから選ばれた高レベルの者達が集結している。

 その中には第二軍団の副団長であるヨーリスの姿や、冒険者部隊の隊長であるシルヴァーノの姿もあった。


 リンジーナが笛を吹いて少しすると、上空から三つの黒い点が近づいてくる。

 その三つの点が近づいてくるにつれ、その正体と大きさも明らかになっていく。

 それは三体の巨大な空飛ぶ魔物――ワイバーンであった。


 見た目は竜種に近く、亜竜とも翼竜とも呼ばれることがあるBランクの魔物だ。

 竜種のようにブレスを吐くことはできないが、強力な毒を持つサソリの尾を持ち、硬い皮膚による防御力と強靭な牙による噛みつき攻撃は脅威だ。


 地上へと降り立った三体のワイバーンは、しかし周囲の人間に攻撃を仕掛けることはなかった。

 それも当然だ。何せこの三体のワイバーンは魔物使いであるリンジーナが使役しているのだから。


「行くぞ」


 ヨーリスが短く合図すると、集められた高レベルの者達は次々とワイバーンの背に乗っていく。

 鞍などという気の利いたものは据え付けられていなかったが、皆が皆高レベルの冒険者なので、バランスを崩して落ちるなどということもない。


 一体のワイバーンにつき五人程が乗り、最後にリンジーナが背に乗ると、ワイバーンへと指示を出す。

 大きく翼を羽ばたかせたワイバーン達は、背に武装した数人の男を乗せつつもふわりと飛び上っていく。

 それは明らかに翼の羽ばたきによるものだけではなく、何らかの力も加わっているものだ。


 一定の高さまで達したワイバーン達は、次にアルザスの街……南門入ってすぐの辺りに向けて降下していく。

 そして兵士達を押しつぶすようにして着地すると、すぐさま背に乗っていたヨーリスらはワイバーンから降り、南門へと向かっていく。

 リンジーナも周囲の兵士にワイバーンを嗾けて牽制を行う。


「あの者らを押さえろ!」


 ヨーリスらの目的を察した王家派の守備隊長が、慌てて行動を阻止しようと指示を出す。

 しかし選りすぐりの精鋭……Bランク以上で構成された集団を止めることはできない。


 また近くにはワイバーン三体を率いるリンジーナもいる。

 Bランクのワイバーンをテイムしているということは、リンジーナ自身もBランクかそれ以上のレベルであることを意味しており、実際にワイバーンの背に乗りながら投擲攻撃で的確に敵を討ち取っていく。


 そして南門の開閉装置のある場所までたどり着いたヨーリスらは、巨大な落とし格子の巻き上げ装置を動かし、南門を開いていく。

 通常であれば十人ほどの力を必要とするこの作業も、彼らであれば二、三人もいれば問題はない。


 とはいえ、開閉装置の場所は二か所存在している。

 門の入り口部と出口部に落とし格子が設置されているからだ。

 そのためただでさえ少ない人数を半分に割いて、開門作業を行っていく。



「チッ、次から次へウジャウジャ湧いてきやがる」


 口汚く罵るシルヴァーノだが、まだまだその顔には余裕が見られる。

 それは他の面子も同様だ。


「だが……それにしても……」


 逆にヨーリスは敵兵の動きにちょっとした違和感のようなものを感じ、深刻そうな顔をしている。


「ま、この調子なら楽勝じゃねえかあ?」


 斧を手にした冒険者の男が、そんなヨーリスの呟きに反応する。

 その巨大な戦斧はすでに血まみれであり、それを持つ男もまた全身が真っ赤に染まっていた。


 そして斧持ちの冒険者が言うように、十分程かけて人が通れる位まで格子戸が引き上げられると、貴族派の軍勢がここぞとばかりに街中への侵入しようと試みる。


 とはいえ、落とし格子を上げることには成功したが、先入したヨーリスらの人数は少なかった。

 その為、南門施設を全て制圧出来ていた訳ではない。

 落とし格子が開いたことで我先にと殺到する貴族派の兵であったが、南門通路の天井部や左右の壁に設けられた殺人孔からは、容赦なく矢や石。焼いた砂などが投げ入れられる。


 それらの攻撃は当初一定の効果を齎した。

 だが門を開けたことで手が空いたヨーリスらが、南門施設に詰めていた兵士を討ち取っていくと、状況は一転した。


 そこからは一般兵達が門へと殺到し、門を通り抜けた先の扇状に築かれた防衛陣で、激しい戦闘が繰り広げられることになる。

 リンジーナ率いる三体のワイバーンは、ある程度ダメージを負っていたので既に飛び去った後だった。


 南門での戦いは死体の上に死体が積み重なる状況であったが、それと同時に最初に崩した街壁からの侵入も同時進行していた。

 すでに街壁の上にいた守備兵は粗方討ち取られ、今は木製の梯子を掛けられて街中へと兵が侵入している所だ。



「……脆いな」


 戦況を見てシャルルが小さく言葉を漏らす。


 元々兵力の上では勝っていた貴族派であったが、徹して街で守りに入られれば、そう簡単に落とせないとシャルルは思っていた。

 元々ここに進軍してくるまでに奇襲を受けたこともなく、完全に守りに徹するのかと考えていただけに、あっさりと門が落ちたことは想定外だ。


「これはもう落ちたも同然ですな」


「グリークならまだしも、この街の内部にはもう大した防衛設備はない。さて、そろそろ私も兵を率いて出向くとしますかな」


 シャルルのいる本陣では、門が落ちたことですでに戦勝ムードが漂い始めている。

 この本陣にはシャルルは勿論、貴族派の子爵や男爵が待機していた。

 彼ら末端貴族がこの場にいるのは、この場所が一番安全だと思っているからだ。


 彼らは今回の戦に参陣するにあたり兵も引き連れていたのだが、今は代わりの者に指揮を任せている。

 そして安全な本陣で戦の推移を見守った後、勝勢となった今、手柄と略奪を行うために自ら率いてきた兵の下へと戻っていく。


 しかしそんな貴族らの心胆を寒からしめる伝令が発せられる。


「西から敵騎兵隊が我が本陣へと迫っております!」


 この伝令兵の言葉に、周囲の末端貴族からは悲鳴が沸き起こるのだった。

 


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