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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第451話 情報交換


 慶介が目を覚ましたのは、中央館内の来客用の部屋だった。

 ゼンダーソンが一時期拠点に滞在していた時に使用していたのも、この部屋になる。


 目を覚ました慶介は、リタや陽子らとのやり取りの後に会議室へと案内された。

 そこには信也らをはじめとしたクランのメンバーが揃っていたが、幾人か慶介の見知らぬ顔も混じっている。

 そこで慶介はこの拠点――というよりも、この国全体で起こっている騒ぎについての説明を受けることとなった。





「僕たちがダンジョンに潜っている間にそんなことが……」


「お陰でこちらはてんやわんやといった状態で、ダンジョンに潜ることもできていない」


 一通り説明を終えた信也は最後にそう締める。

 この騒ぎに信也達がこれまで取ってきた行動について。

 そして見知らぬ人物が実は王族関係者であり、慶介が出会った二人の子供もこの国の王子と王女であったこと。

 急すぎてすぐに話を呑み込めなかった慶介だが、少し遅れて瞳に理解の色が灯ると共に、リタへと声を掛ける。


「あの……、さっきはリタのことを王女とは知らずに普通に話してしまったんですけど、これってまずかったですよね?」


 祖父より礼儀正しく育てられた慶介が、まず気にしたのはその点だった。


「そのようなことはお気になさらず、最初の時と同じように接してもらって構いませんわ。ケースケ様は私の命の恩人なのですから」


「そうだぞ! ぼくらは確かに王族として生まれたけど、だからといって礼儀を知らないという訳じゃないんだ」


 エルランド兄妹は側室であるヴァシリーサの子であるが、ヴァシリーサからは生まれて以降冷遇され続けていた。

 そして同じく冷遇されているキリルが、兄として二人の面倒をよく見ていた為に二人はキリルにとても懐いている。


 その兄のキリルが貴族然として貴族ではなく、民衆の話なども交えてエルランドらに色々な話をしていたおかげで、二人は平民に対するありがちな貴族的意識が薄い。


 初めこの拠点に王族が訪れた時は、それこそ蜂の巣をひっくり返したような騒ぎになりかけたが、三人共がそうした庶民からも接しやすいタイプだったので、すぐに拠点のメンバーも慣れてきている。



「そう……なんですか? では、普段通りを心がけてみますね」


 相手が王族と知って、流石にすぐに気安い態度は取れない慶介。

 しかしふと視線をリタに移すと、リタが悲し気な目をしていることに気づき、ちゃんと気を付けようと慶介は意識を強くする。


「それで慶介。こちらの状況は先ほど話した通りなんだが、そちらは一体どうなっているんだ?」


 信也が本題を切り出すと、皆からの注目が慶介へと集中していく。

 特に咲良や由里香らからは、一言も聞き逃さないかのような気迫すら感じさせる。


「ええと、まずはその他の五人の状況ですけど……無事に全員ダンジョンを攻略してる途中です」


 まずは慶介から北条らの無事が伝えられ、ほっとした雰囲気が伝播していく。

 慶介が途中で少しだけ言い淀んだのは、楓のことが脳裏に浮かんだからだ。

 あの後北条から楓も無事だとは聞いているが、それを慶介は確認することはできないし、慶介に声を送ることができるのも北条だけだ。

 一応楓が"忍術"などを駆使して無事だったと説明は受けているものの、完全に拭いきれない不安がさっきはほんの少し出てしまった。


「それでどうして慶介くんだけ先に戻ってきたの? 帰らずのエリアに向かってたのよね?」


「それなんですが……、帰らずのエリア二十八層を探索していた時に急に悪魔が現れたんです」


「悪魔ぁ!?」


 慶介の話を聞いて、幾人かが素っ頓狂な声を上げる。

 この場にいる者達は例の悪魔司祭と関わった者も多く、悪魔という言葉は殊更敏感なワードになっていた。


「はい。ダンジョン内の部屋で野営をしようと準備を始めた時でした。僕を含めた全員が急に妙な気配を感じ始めたんです」


 その時の感覚は今でも覚えているほどで、慶介はとにかく尋常ではないその感覚をもどかしそうに言葉にして伝えていく。


「……しばらくその気配が続いたかと思うと、魔物が召喚される時のような魔法陣が現れて、そこに悪魔が……出現しました」


 ゼンダーソンとの会話の中で、ダンジョン内に悪魔が出てくるという話は聞いていた信也達であったが、まさかそこまで深くもない階層で悪魔が出るとは誰も思っていなかった。

 そのため最初に悪魔と聞いた時の驚きも大きい。

 と、ここで、これまで話を聞いていた一人の女性が口を開く。



「それは恐らく"はぐれ悪魔"と呼ばれるものだろう」


 凛とした声で発言したのは、腰まで伸びるプラチナブロンドの髪をしたエルフの女性――エスティルーナだった。

 彼女はキリルらの護衛としてこの町までやってきたが、その後はアウラやキリルらの護衛のようなことをしており、今もこの場に参加している。


「はぐれ悪魔……ですか?」


「そうだ。ダンジョンでは階層問わずに極稀に悪魔と遭遇することがある。出現するのは決まって通常タイプのダンジョンの部屋状の場所。通路やフィールドタイプの場所では出現例の報告はない」


「そういえば……大分前に聞いたことがあったかも。僕らが以前潜ってたダンジョンはフィールドタイプだったから、すぐに忘れちゃってたんだけど……」


 言われてみれば……といった感じでシグルドもかろうじてその話を知っていたようだ。


「そんなんが出るのかよ! おれらだけで行動してたらくそヤベーじゃねえか!」


 ムルーダは直接悪魔に接触したことはなかったが、それでも冒険者であるなら誰もがその強さは知っている。


「先ほども言ったが、はぐれ悪魔に出会うのは相当稀なことだ。それと、その異質な気配を感じてからすぐに部屋から脱出すれば、悪魔と遭遇せずに済む」


「なっ……えっ、そうだったんですか……?」


 あの悪魔との出会いを回避する方法があったと聞いて、慶介は思わず間の抜けた声を上げる。


「しかし慶介がこうして無事だったということは、その悪魔は倒したんだろう?」


「そうです。僕たちも少しだけ加勢はしたんですけど、ほとんど北条さん一人で倒してました」


悪魔殺し(デーモンスレイヤー)は伊達じゃないということか……」


 ほぼ一人で悪魔を倒したと聞き、エスティルーナはそのクールな顔に微かに驚きを浮かべながら言う。


「さっすが団長だな!」


「でも、ムルーダ。悪魔ってそんな一人で相手するようなものじゃないのよ?」


 特に深く考えていないムルーダにシィラが突っ込みを入れる。

 そこへ重い口調でライオットが質問を投げかける。


「……確かに悪魔となると竜種と並んで危険な相手。団長といえど厳しかったんじゃないですか?」


 ライオットは実際に悪魔と戦った経験があるので、その強さに関しては身に染みて理解している。

 今も慶介に問いかけるその顔は少し辛そうだ。きっとあの戦いの時のことを思い出したのだろう。


「そう……ですね。北条さんが戦ってる所は何度も見てきましたけど、いつもとは様子が違ってました。ゼンダーソンさん以外の相手に、接近戦であそこまでやられるのも初めて見ましたし……」


「ということはゼンダーソン並かそれ以上に、その悪魔は強かったということか?」


「……だと思います。幾ら瞬間移動が厄介だったからといって、それだけで北条さんをあそこまで追い詰めることはできなかったかと」


「……瞬間移動? それにゼンダーソンとは、もしやあの(・・)ゼンダーソンのことか?」


 気になるワードが飛び出し、エスティルーナが口を挟んでくる。

 普段はクールで冷静な彼女が、このように話の途中で口を挟むのは実は珍しい方だ。


「恐らくその(・・)ゼンダーソンで合ってると思います。瞬間移動というのは、後で北条さんから聞いたんですが、あの悪魔はどうやら"空間魔法"の使い手だったらしいです。それも結構熟練の使い手らしく、あの瞬間移動も多分"空間魔法"で……」


 一応レアなはずの"空間魔法"であるが、この拠点では北条の他に陽子もひっそりと覚えている。

 といっても、陽子の"空間魔法"の熟練度はそれほど高くはない。

 最近になってようやく【空間収納】の魔法も覚えはしたのだが、陽子には"アイテムボックス"があるので余り活用されていなかった。


「そしてあの悪魔を倒したと思った時。僕だけがその悪魔が死の間際に放った"空間魔法"で、別の階層に飛ばされてしまったんです。一人別の階層に放り出された僕はそれから……」


 それから慶介は一人飛ばされた後のことを語っていく。

 慶介の冒険譚を目をキラキラさせて聞いているエルランドに、一喜一憂しながら聞き入っているリタ。

 勿論陽子も、いつも以上に興奮しながら慶介の話を聞いている。


 こうして両者の情報交換が終了した頃には、すっかり陽も暮れ始めてきていた。



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