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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第450話 いつもと違う慶介


 現在の慶介の冒険者ランクはCランク。

 対するビッグボアのランクはDなのだが、慶介はBランクも見えてきている位のレベルであり、実質的なレベルの差は大きい。


 しかしながら、まだ成長期真っただ中の子供の慶介と、大人の身長をも軽く超えるビッグボアとでは、どうみても慶介側に勝ち目はないように見える。

 魔物に襲われていた二人の子供のうち、震えながら剣を構えていた少年もそう思ったのだろう。


「お、お前ひとり置いて逃げる訳にいかないだろう!」


 相変わらず恐怖は拭えていない様子の少年だが、少しずつ体の震えは収まってきているようだ。


(ううん、出来るなら無理せずに逃げて欲しいんだけどなあ……)


 慶介はそう思いつつも、魔法の詠唱に入る。

 ビッグボアとの距離はそれほど離れていないので、突進されたらすぐにでも吹き飛ばされてしまいそうだ。


 実際に、左足を撃ち抜かれて頭に血が上っているビッグボアは、二人の子供のことなんかすでに忘れたかのように、慶介の方へ向けて"突進"を仕掛けてくる。

 これは歴とした闘技スキルの一種であり、ビッグボアのような体格の大きいものが使うとより効果を増す。


「危ないぞッ!」


 それを見て少年が注意を促すが、慶介にあせりはみられず冷静にこのままでは魔法の発動が間に合わないと判断を下す。

 そこで、詠唱を継続させながらも特殊能力系スキル、"ラムガスイツト"を前方の地面に向けて射出する。


 地面に張り付いたソレは、紫色の柔らかいガムのような見た目をしていた。

 この"ラムガスイツト"で生み出された紫色の物体は、とりもちのように強い粘着性を持っている。

 それを知らずに突進してきたビッグボアの足が、紫色の物体に触れた途端にみっちりと張り付いて、その巨体の動きを止めさせる。

 しかも勢いをつけて移動していた所を強引に止められたので、前脚には大分負荷もかかっていた。


「氷の茨で絡み付いて! 【アイスソーン】」


 身動きが出来なくなったビッグボアに対し、更に上級の"氷魔法"である【アイスソーン】で動きを固めていく。

 これは氷で出来た茨で相手を絡みつかせて「状態異常:拘束」にすると同時に、氷属性の継続ダメージを与え続ける魔法だ。


「プギイイイイイィィィ!!」


 体も動かせず、徐々にダメージを受け続けている現状に、ようやくビッグボアも怒りの感情よりも恐怖の感情が強くなり始めていく。

 フィールドに出現する魔物は、ダンジョン産とは違ってこういう状態になれば即座に逃げの選択を取ることがある。


「じゃあ、トドメいくよ。【ウォーターレーザー】」


 しかし"ラムガスイツト"と【アイスソーン】で二重に縛られている状態では、逃げることすら叶わない。

 慶介が上級"水魔法"の【ウォーターレーザー】をビッグボアの頭部に向けて放つと、少しの抵抗の後にそのまま頭部を貫通していった。


 この攻撃がトドメとなり、ビッグボアは完全に息の根を止めることになる。

 ダンジョンとは違いフィールドなので、倒しても光の粒子として消えていくことはない。

 ビッグボアは食材としても人気なので、一頭丸まる確保できると言うのは結構な人数分の食料にもなる。


「ふぅ、やった……かな……」


 上級魔法を連発してビッグボアを仕留めた慶介は、そう言いながらばったりと地面に倒れこんだ。


「お、おい!?」


 それを見た少年が、心配そうな声をあげながら慶介の下へ駆け寄っていく。

 元々睡眠不足であった所に、ダンジョンから出た後に無事を知らせる為に無駄にMPを消費。

 挙句に戦闘でもMPや特殊能力系スキルを使用したせいか、ついに慶介も限界を迎えてしまったらしい。


 スヤスヤと寝息を立てているのを聞いて、とりあえず問題なさそうだなと判断した少年は、大人の手を借りる為にもう一人の少女を慶介の下に残し、慌てて森を引き返していくのだった。






▽△▽△▽




「ん、んんん……」


 慶介が小さくうめき声を出しながら目を覚ますと、そこは先ほどまでいた森の中ではなく、どこかの建物の中だった。


「あれ……ここは……」


 慶介がベッドから起き上がり、周囲を確認しようと――するまでもなく、目の前で慶介を心配そうに見ていた少女がいることに気づく。


「よ、良かった……」


「えっと、君は?」


 そう問いかけつつも徐々に頭がハッキリしてきた慶介は、目の前の少女があの時助けた二人組の子供の内の一人だということに気づく。


「私の名前はリタ。あの時は助けて頂きまして、誠にありがとうございました」


 見た目の印象や丁寧な言葉遣いから、慶介はまるでどこかの貴族のお嬢様のように感じていた。

 まだ幼いながらも美人系の顔立ちをしている少女は、微かに頬を赤らめながら慶介を見つめている。


 ブロンドの髪は肩のあたりで揃えていて、彼女の顔立ちと相まって清楚な印象を受ける。

 大きな目にハッキリとした目鼻立ち。

 日本人とはまた違う西洋人の顔立ちをした少女は、まるでリアルに作られた高級なビスクドールのようだった。


「あ、あの……?」


 慶介が思わずリタに見とれていると、恥ずかしそうにリタが口を開く。


「あ、えっと……気にしなくていいよ。あれ位の魔物なら僕一人でも倒せるから」


「はあぁぁぁ……。ケースケ様って凄い御方なのですね。あの魔物はビッグボアというDランクの魔物だと伺いました。それをその年で御一人で倒してしまうなんて……」


 うっとりとした表情で持ち上げてくるリタに、慶介は心が湧き上がるのを感じていく。


「そ、そう……かな?」


 普段の慶介であったら、「でも僕よりも凄い人はいるんだよ」と謙遜していたことだったろう。

 しかしこの少女の前では、慶介もいつもと同じ態度ではいられなかった。


「ええ、そうですわ。だってお兄様ですら震えてしまって、剣もまともに持てていなかったんですもの」


「まあでもそれは仕方ないんじゃないかなあ? 誰だってあんな大きな魔物を見たら最初はそうなっちゃうよ」


「確かにお兄様は稽古は散々してましたけど、実戦は殆ど行ってませんでしたわ」


「なるほどね。ところでここは……」


 慶介がそろそろ話を本題に移そうとした所で、コンコンッというドアを叩く音が聞こえてくる。

 そして、部屋の中の二人の返事を待たず、すぐさま部屋に入り込んできたのは、あの時助けたもう一人の少年と一人の大人の女性だった。



「リタ、どうやらケースケの目が覚めたよう――」


「慶介くううううううん!!」


 少年が言いかけるのを遮る形で慶介の傍まで駆け寄っていったのは、慶介もよく見知った相手――陽子であった。


「よ、陽子さん……」


 駆け寄っていった勢いそのままに、欧米人のようにハグで抱擁を受けた慶介は、いつもより強い力で陽子を引き離そうとする。


「あ、ちょ、ちょっと慶介くうん」


 品を作ったような声で陽子が軽い抗議をするが、慶介はそんなことよりもリタのことが気になってパッとリタの方へと振り向いてしまう。

 するとリタは先ほどまでの心からの笑顔とはまた違う、営業用のスマイルみたいな表情に切り替えて、ただただ慶介と陽子の様子を黙って窺っていた。


「あ、あの。これは、その……違くて……」


「なあなあなあ、ケースケ! ヨーコから聞いたけどお前ってぼくと同じ年齢らしいな? それなのにあんなデケー魔物を一人で倒しちゃうなんてすっげえな!」


「ねえねえ、慶介君。エルランド殿下に案内されて森に行った時に、慶介君がそこにいたから私ビックリしちゃてね……」


「……ケースケ様はヨーコ様と仲がよろしいようですね?」


「だから、それは、その……」


 脇から話しかける少年――エルランドと陽子がしきりに話しかけてくるお陰で、慶介はどうしたものかと泡を食っている。

 普段は大人びた子供のような態度を取っている慶介だったが、どうしてか今はそのような態度を取れそうにない。


 そうした自分自身の変化に驚きつつも、慶介はこの少女が最初に自分の名前を知っていたのは、陽子らの知り合いだったからだということに気が付く。

 そして先ほどポロっと出た「殿下」という単語に、ますます拠点では何があったのかと、事態がさっぱり掴めなくなる慶介であった。

 


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