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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十五章

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第424話 ヴェナンド達との契約


 仲間との話し合いを終えた北条は、再び二人の下へと戻っていく。

 きっちり【遮音結界】で音は漏らしていなかったので、二人は話し合いがどうなったのか気にしているようだ。

 そんな二人に北条が話しかける。


「仲間と相談して、こちらの返答は決まったぁ」


「それで、どうなのかな?」


 北条の返答次第でどうなるか分からないという状況に、ヴェナンドはトイレに行きたいのを堪えているような顔をしている。

 そんなヴェナンドとは逆に、ファエルモの方はそういった内面の葛藤などを表に出していない。

 この二人ならば、ヴェナンドよりもファエルモの方が交渉事には向いていそうだ。


「条件付きで提案を受け入れよう」


「条件? いいよ、何でも言ってよ」


「お、おい。ファル……」


 何か言いだそうとするヴェナンドだが、ファエルモが右手を握りしめて威嚇するように翳すと、ヴェナンドはそこで押し黙ってしまう。


「……いいのかぁ? そっちの意思疎通が出来てないように見えるんだがぁ」


「いいの、いいの。ヴェルの用心深さも大事だとは思うけど、今はそんなこと言ってられる状況じゃないしね」


「そうかぁ、なら条件を伝える。まずは先ほどお前が言っていた、ドロップやら宝箱の中身を譲ってもらおう。なあに、根こそぎくれとは言わん。まあ実際どうなるかは、見てみないと分からんがぁ……」


「うん、わかったよ。それで、他の条件ってのは?」


「俺たちの能力について、誰にも言わないと誓ってもらう。ああ、それと一応付け加えておくが、この先入手したアイテムなどは我々のものとする」


「……条件はそれだけなのか?」


 ここで押し黙っていたヴェナンドが会話に加わってくる。

 思っていた以上にまっとうな条件に、訝しんでいるようだ。


「そうだぁ。この条件が破られた場合、お前達には奴隷契約をしてもらう」


「奴隷契約……」


 北条に奴隷契約の話を持ち出されたヴェナンドは、どういう意図で北条がそのようなことを言ってきたのか、考えあぐねていた。

 一方のファエルモはといえば、こちらは既に考えが決まっているようで、泰然としている。


「さっきから言ってるけど、悩む必要はないと思うよ。条件を守れば問題ないんだしさ」


「……そう、だな。ここはお前の言うことに乗るとしよう」


「ということは、二人とも同意したということでいいかぁ?」


「うん、ボクは構わないよ」


「私もだ……」


「よし、ではまずは最初の条件を確認させてもらおう。報酬として渡すもんは今持ち歩いているのかぁ?」


「一部は持ち歩いてるけど、残りは四十層へと通じる魔法陣の傍にまとめてあるんだ」


「ではそこまで案内してもらおう」


「うん、いいよ」


 こうしてひとまずは、全員で魔法陣の場所まで移動することになった。





▽△▽△



 目的地までは二時間程歩く必要はあったが、まっすぐゴールに向かって進んでいたようで、特に問題もなく魔法陣の下までたどり着くことが出来た。


 道中は、まだ北条が"契約魔法"を行使していないこともあって、龍之介らには余り能力を見せないで戦うように指示が出された。

 今の彼らなら切り札を伏せていても、この階層の魔物相手なら十分戦える。


 ヴェナンド達も普通に魔物と戦ってはいたが、本気で戦っているという感じではなかった。

 単純にペース配分を考えてただけかもしれないが、実力を隠そうとしたのだとしても、北条の"解析"スキルの前では無意味だ。


 結局魔物とは三回遭遇しただけなので、戦闘をみただけでは互いに本当の実力にまでは分からないままだ。

 ただ龍之介の剣技にファエルモが見惚れていて、戦闘後にしきりに龍之介へと話しかけていた。

 それ以外ではほとんど両者に会話はなく、静かな行軍は続く。



「……見えてきた。あれが次の階層へ続く魔法陣だ」


 そこはぽっかりと開けた場所になっていて、中心近くにはお馴染みの魔法陣が設置されている。

 そしてその近くには、土で作られたかまくらのような構造物が並んでいる。

 どちらもサイズはそれほど大きくはなく、二人か三人も中に入ればギュウギュウになりそうな大きさだ。


「あそこで暮らしていた訳かぁ」


「まあ、そういうことだ。魔法陣の傍には魔物は余り近寄ってこないし、いざとなれば四十層に逃げ込むことも出来るのでな」


「……なるほどなぁ」


 一瞬考え込んだ北条が、頷きながら言葉を返す。


(彼らの話では、次の階層にヤバイ魔物がいると言うことだった。なのに、敢えて海岸沿いにあった、前の階層に繋がる魔法陣ではなく、こっちに布陣していたというのは……やってくる冒険者を警戒して、か?)


 北条が考えていたのはそんな内容のことだったが、確かにこの帰らずのエリアでは下の階層から上って来る冒険者より、上の階層から降りてくる冒険者の方が、確率でいえば圧倒的に高い。


 ヴェナンドが北条のように、常に最悪を想定して動くタイプだった場合。

 万が一にも急に転移してきた冒険者に、寝込みを襲われるなどといった危険が伴うことは容認しないだろう。




「さー、お客さん。どれにするんだい? 良いもの揃ってるよー?」


 二つ並んだかまくらの内、一つが寝泊まりする場所で、もうひとつが倉庫として利用していたらしい。

 そこまで案内された北条らは、ファエルモが中から取り出してきたアイテムの前で、まるで露店を覗く客のように陳列された品を吟味している。


「とりあえずお前らで気になったものを選んでくれぃ。後は俺が適当に選んできめる」


 最初に北条がそう言っていたので、今は他の四人が前に出てあーだこーだ言いながら品物を手に取っている。

 並べられた品は魔物からのレアドロップや、宝箱から出たと思われるスクロール系やスターボールなどもあったが、中には明らかに使い込まれた装備品が含まれていた。


 それらの品を見つめるヴェナンドの眼は厳しい。

 鈍い龍之介でも流石にそれら装備品の意味を理解しているのか、そうした品を避けて選んでいる。


「オッサン、決まったぜ!」


「私はこれでいいわ」


「では、私はこれを……」


「……これ」


 メアリーだけは相手のことを気遣ったのか、余り高価でもなさそうな品を選んでいたが、残りの三人はそれぞれ自分なりに価値ありと見込んだものを選んでいく。

 ……のだが、実はメアリーが選んだ指輪が一番高価な品であり、それを選んだ時ヴェナンドの肩がガックシと落ちていた。


「ふむふむ、なるほどなぁ。では残りは俺が選ばせてもらおう」


 そう言って北条は、並べられたアイテムをがさごそと漁っていく。

 "解析"で価値や効果などを知ることができる北条は、数量ではなくレア的に五分から六分になる位に調整して、報酬の品をチョイスしていく。


「よおし、こんなもんだろう。これらの品をもらい受ける代わりに、お前達を迷宮碑(ガルストーン)のある場所まで連れていく。異議はあるかぁ?」


「いや、それで構わない」


「うん、いいよー」


「では最後の条件を改めて述べていくぞぉ」


 そうして秘密厳守の契約の条項を告げていく北条。

 今回の契約は、状況が状況だけに相互に秘密を守るというものではない。

 ヴェナンド側だけが秘密を厳守することになり、その代わりに彼らを助けるという契約だからだ。

 また今回の秘密厳守の内容だが、北条らの個人情報の他にもこのエリアに関することの口留めも含まれている。


 北条の口から朗々とそういった契約の条件が告げられていくと、ヴェナンドの心中に「少し妙だな?」と警戒心が高まっていく。

 何故そこまで明確に、この場で条件を口にする必要があるんだろうか?


 しかしそういった疑問も、北条が最後に「――以上の内容を誓うか?」と聞かれ、ファエルモに釣られるようにして「誓う」と言ってしまった後に、疑問はすぐに氷解していく。




「契……約……魔法、か」


「わー、すごいね! 冒険者で"契約魔法"使えるなんて人、聞いたことないよ」


 ファエルモは素直に驚いてはしゃいでいるが、ヴェナンドは驚きと共に、これまでの北条の態度にもある程度納得することができていた。


「また新たな犠牲者(契約者)が出てしまったのね」


「おおい、カタリナぁ。人聞きの悪いことを言わんでくれぃ。いつもニコニコ、安心と信頼がモットーの『北条契約』なんだぞぉ?」


「はいはい、そうね」


 咎めるような北条だが、カタリナはまともに取り合うつもりはないらしい。


 こうして正式に『契約』を結んだ両者は、改めて互いの状況について、話し合うこととなった。



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