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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十五章

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第421話 悪臭再び


「無事倒すことが出来ましたね」


「ああ、そして一つ判明したことがある」


「何でしょう?」


「今のシーサーペントの強さからして、恐らく『青き血の集い』の連中はもう生きてはいないだろうということだぁ」


 ロアナが元々所属していた冒険者パーティーであり、以前異邦人と揉めたこともあった『青き血の集い』。

 彼らがこのエリアに入っていったのはもう大分前の事だ。


 もしかしたら、途中のフィールドタイプの階層で生き延びている可能性もあるにはあるが、その可能性も薄いだろうと北条は思っている。

 今回は急ぎで探索しているので階層を隈なく探し回った訳ではない。

 だがそれでも、従魔を使って派手に探索をしていたのだ。

 もし奴らが生きていたのなら、こちらに気づいて接触してくる可能性は高い。


「……そして、彼らの実力ではこのシーサーペントは倒せない。……ということですか」


「そうだぁ。他にもこのエリアには何組も冒険者パーティーが挑んでいるはずだがぁ、彼らの痕跡もまったく見当たらなかった」


 ダンジョン内では、一定期間が過ぎると異物となるものが吸収され消えてしまう。

 生物などは例外になるが、冒険者の死体などは跡形もなく消えてしまうのだ。

 そして身に着けていた装備などは、ダンジョン内で時折見つかる骨で出来た箱の中に納まった状態で発見される。


 今回の探索では、今のところ骨の箱は見つかっていない。

 というか、必ずしも死んだ場所と同じエリア内に出るとは限らないので、もしかしたら別の場所に、このエリアで亡くなった冒険者の骨箱が設置されているかもしれない。


 これら骨の箱の遺品には、大抵は冒険者が所持していたギルド証も含まれている。

 そして発見者は、冒険者ギルドにそうしたギルド証を持っていくと、いくらかの金銭を報酬でもらえる。

 今のところ帰らずのエリアに入ったと思われる冒険者のギルド証は、ギルドに届けられていない。


「痕跡って……そんなことが分かるのですか?」


「まあ時間が経ちすぎてるとダメだけどなぁ。ダンジョン内の構造物は、破損したりしても時間経過で修復されちまう。だがぁ、すぐに元通りになる訳ではない。焚火をした跡だったり、下草を払いのけた跡だったり、そういったもんでもある程度判別できるのよ」


「そんな細かいところまで見ていたんですね」


「見ていたというかぁ、スキルを色々と持っていると自然とそういった情報も仕入れてしまうんだよ」


 北条がメアリーと話をしていると、そこへ龍之介が大きな声で北条を呼ぶ声が聞こえてくる。

 どうやらドロップを回収してくれと言っているようだ。


「じゃあ俺はアレを回収してくる」


「はい」


 そう言って北条は龍之介の下へ向かう。

 そこにはシーサーペントの肉や鱗、それから牙などがひと塊になって小さな山のように積まれている。

 領域守護者(エリアボス)などのボス系は、通常ドロップの量も増える傾向にあるが、それにしても元が巨体だったせいかドロップ量も多い。

 肉などはドロップ品だというのに、軽く百キロ単位でドロップしていた。


「……こいつは食いでがありそうだぁ」


「こいつの肉ってウメーのかな?」


「基本的に蛇っぽいから、グローツラングの肉とそう変わらんのじゃないかぁ? ランクも同じCランクだし」


「ってことは、味には期待できそーだな!」


 最初の頃はろくに説明もせずに、魔物ドロップの肉を食事に混ぜていた北条。

 だが最近ではよほどキワモノ食材でない限り、予め伝えるなり聞かれたら答えたりはしている。

 なんだかんだで龍之介たちも蛇肉だとか熊肉だとか、そういったものにも大分慣れてきているようだ。


「こんだけありゃあ、唐揚げもたくさん作れそうだぁ」


「うひょお、たまんねーな!」


 今にも涎を垂らしそうな龍之介をよそに、北条がドロップ品を"アイテムボックス"に収納していく。

 今回は残念ながら宝箱のドロップはなかった。


「さて……。この島状の部分からは、俺達が入って来たのとは逆方向にも道が続いている。今いる場所には魔法陣が見当たらないから、恐らくはそっちの道の先にあるんだろう」


「だろーな。んじゃ、ドロップも回収したしさっさと行くべ」


 先へと続く魔法陣を捜すために、もう一方の道を少し先に進んでいくと、そこには予想通りに次の階層への魔法陣があった。

 結局この階層には、大きな地底湖と領域守護者(エリアボス)が出てくるだけで、他には魔物の姿もなく、休憩を取るにはもってこいの階層だ。


「ウミヘビにはそんな時間もかからなかったし、ちょっとここで休憩したらさっさと次の階層いかね?」


「まあ、そうだなぁ。それでもいいと思うがぁ、恐らくは次の階層からは魔物の強さも変わってくると思う。油断はするなよぉ?」


「そうね。領域守護者(エリアボス)なんて配置してある位だし、一味違う感じになりそう」


 恰好の休憩スペースではあったものの、それほど消耗していなかった彼らは、軽い休憩の後に次の三十一層へと転移していった。





▽△▽



「げっ……。またかよ……」


 転移が完了するなり、龍之介からゲンナリとした声が漏れる。

 転移した先は人工的な石造りの地下迷宮タイプで、壁には松明の明かりが照らされている。

 一見しただけではなんら特徴のない場所に見えるが、別の感覚器官がこの階層特有の情報を伝えてくる。


「……はぁ。またアンデッド祭りね」


 カタリナもうんざりとした声で肩を落としながら言う。

 転移した早々に全員のテンションが爆下がりしてしまったが、だからといって探索をしない訳にはいかない。


 テンションがダダ滑りになりながらも探索をしていくと、二十九層以下とは違って出現する魔物のランクが上がっていることに気づく。

 オーガゾンビやゾンビトロール、ドラウグルエリートやワイトなど、Dランクのアンデッドが主流になっているのだ。


領域守護者(エリアボス)のいる階層を突破して、出現する魔物のランクは上がっているがぁ、これならまだ問題はなさそうだなぁ」


「強さ的には問題ねーけど、臭い的には問題大アリだぜ!」


「でもそろそろお前らにも、"悪臭耐性"スキルが生えてくるんじゃないかぁ?」


 最初このスキルを覚えた時は、別にわざわざスキルでそんなん用意せんでも……と思っていた北条だったが、今では先んじてこのスキルをゲットしていて良かったと思っていた。


「そんなスキル覚える前に、さっさとこっから抜け出てえよ!」


 このアンデッドエリアの性質の悪い所は、いくら同じ臭いをかぎ続けても北条のように"悪臭耐性"のスキルでも覚えない限り、慣れることがないという点だ。

 本来人の体に備わっている嗅覚疲労という機能が、ここでは通用しない。


 とはいえ、迷宮タイプの階層だったので、そこまで探索に手間取ることはなく、『サムライトラベラーズ』は二日でこの階層を抜けることに成功した。






▽△▽△



「オッサン! あれ頼むぜ」


「はいよぉ」


 北条が消臭用アイテムの〈ムシュール〉を取り出すと、皆群がるように北条の下に集まっていく。


「にゃあ……」


「きゅうぅぅぅ……」


「よーしよしよし。お前らにも使ってやるからなぁ」


 二匹の従魔もアンデッドエリアには参っていたようで、次の三十二層に着いた途端に喜びの鳴き声を上げていた。


「おー、お前らも消臭してもらったのか」


 北条が、消臭の終わった二匹の従魔とじゃれていると、同じく消臭し終わった龍之介が近寄ってきた。


「にゃにゃにゃ……」


 ラビの方はそこまであからさまな反応は見せなかったが、ニアの方は龍之介を避けるように、北条を壁にして隠れる。


「うっ……。そんな露骨に逃げるなよぉぉぉぉ……」


 悲しそうな声を出す龍之介だが、ニアはまったく気にも留めていない。


「ジェンツーに対してもだがぁ、お前は可愛い系の動物に接する時にグイグイ行きすぎなんだよぉ」


「いや、だって仕方ねーだろ! こんっなに可愛いんだからよお」


「でもそれで相手から嫌われたら、元も子もないじゃない」


「ぬっ、ぐぐぐ……。だけど、心の底から湧き上がってくるもんはどーしよーもねーんだ」


 北条と龍之介が二人で会話していると、途中からカタリナもそこへ加わってきた。

 ようやく新しい階層に到達して悪臭から解放されたことで、気分が開放的になっているのか、ちょっとした雑談タイムが始まる。


 慶介の無事が確認出来てからは、こうした和気あいあいとした雑談も復活してきた。

 しかし依然ゴールの見えない探索に、迷宮碑(ガルストーン)はいつ見つかるのかと不安に思う心も強まっていく。


 彼らの探索はまだまだ続く……。


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