お別れはいつも突然に
おや、目が覚めたかな?
あのあとは半日近く医務室でダウンしていたらしく気がつけばもう深夜、日付も跨いでしまい心がなんかモヤモヤする。
でも体の節々はまだまだ若干鈍痛が走りベッドからは降りられそうにはない。
私が倒れてからその後どうなったのかパソコンの配信をで確認して見れば、港の完成セレモニーを行ってはいるものの私の姿はどこにもない……というか遺影のようにパソコンの画面に私を写して椅子に置くな。
私が一番頑張っておきながら祝賀パーティーには呼ばれずじまいか、あぁ……楽しくないしつまらない、そう思った矢先だ。
枕がモゾモゾと動いては可愛らしい声が耳元に小さく響き渡る。
「め……冥綾よ。 目が覚めたのか?」
どこかで聞き覚えのある言葉が耳に通ってくるが寝起き直後だからだろうか、意識があまりうまく働かず断片的にしか聞こえない。
それでも誰が喋っているのかはわかる。
「あぁ、スクナミコ……か。」
「おおっ、そうだぞっ!! 余は身長3センチのギルドマスターのスクナミコなるものぞ!!」
私も認識できるぞ……この生命を冒涜したような小さな人間。
まだ本調子じゃないが少しずつ起きられるようになってきた。
……というよりはお腹が空いているからだろうか、美味しそうな香りがどこからともなく。
そういえば昼御飯以来何も食べてないから空腹だ、人はこれには勝てん……腹の虫も煮えを切らしているようだな。
「腹がすいておるようだな!! だが安心せい、飯を持ってきたぞ?」
懐からチーズの欠片を取り出したスクナミコは私の口にチーズを放り投げたが、爪の垢よりも小さなチーズで腹が満たされるものか……それでもとても美味しく感じられる。
なにより私のために食べるものを持ってきて……なっ、スクナミコっ!?
「そう驚いた顔をするな、港の建設というクエストが終われば余も用済み……リリアスに帰還するのが定めというものよ。」
そうか、そうだよな……私は大切なことを忘れていたな。
スクナミコは七刻に生きる存在ではないのだ、私だってわかっていたのに消えるのが早すぎる。
今日はゆっくり休んで明日にでも消えてくれてくれたってリリアス王国側でも誰だって文句はない、否……いうヤツは私がこらしめてやっても構わないのだ。
「冥綾よ、ナデナデしてくれんか……。 」
スクナミコだって別れが寂しいのだろう、言わなくても私にはわかる。
泣き目を我慢して顔を赤く染めて……誰にも見られまいと下を向いて。
「好きなだけしてやるよ。」
人差し指で髪の毛をグリグリとしてやると半泣きしている顔を嬉しそうに上げては微笑みを見せてくれる。
涙が伝っていたってもうお構いなし、私だって泣きたい気持ちは押さえられないのだが泣いてたまるかって話だ。
「うむ……うむ、心置きなく帰れるぞ。」
スクナミコが半透明になっているのが強くなっているとなるともう七刻に滞在できるのは長くはないだろう。
だが私は何も言わないぞ? なぜだかわかるか?
……サヨナラは別れの言葉だからだ。
また会える気がするのにそんな言葉なんてらしくないじやわないか?
だから私は言わないのだ。
「……サヨナ……むぐっ!?」
「また会えるっ、だから言うな。」
スクナミコの口をとっさに塞いでやってビックリして驚いたような顔をしているがとても傑作だろうな、カメラに納めておきたい1枚だがあいにくそんなものは持ってなくてな、すまん。
でもサヨナラを最後まで言わせてくれなかった理由はきっと察したのだろう、コクンとひとつ頷くとスクナミコは完全に焼失し私の指先には髪の毛の感触が消え失せた。
でも歪みはまだまだ複数確認できるとなると他の世界からやって来る人は何人もいる。
スクナミコの別れは次への出会いの始まりだ、さて……次は月曜の荒野、夜朧地方の開拓。
けどその前にもう一休み、スクナミコもお疲れ様……あっちの世界で土産話として七刻を広めておくれよ。
これにて陽光は完了




