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死んだソーダは今日も教授の元で働いている。  作者: 有馬とお
事件

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3/5

第3話 教授と狭間先生


 ソーダが警察と話した次の日に、教授の家に狭間先生が来た。

 西に傾いた陽の光を受ける庭の、アプローチを望む窓に狭間先生が見えた時、ソーダは姿を消した。

 狭間先生は受付に座る僕の顔を見ると


「おう、吉田じゃないか」


 と言った。

 ソーダを殺したから、というわけではないが、僕は狭間先生が苦手だった。


 狭間先生は展示室に入って行った。

 教授の展示室は教授がいる時は解放されていて、ぽつりぽつりと人がくる。

 僕は教授に耳打ちしに行った。


「狭間先生が来ています」


 教授はソーダと台所で紅茶を入れていた。

 教授は穏やかな表情を浮かべた。


「狭間先生にお茶をご一緒しましょうと伝えて」


 僕は内心で驚いた。

 ソーダを見ると頷いた。

 目元は弧を描き、口角は上がっていた。


 狭間先生に声をかけに行く。

 狭間先生はオオミズアオの前で腕を組んでいた。


「狭間先生、お茶を飲みませんか?」


 狭間先生は腕を解き、笑った。


「サービスがいいな」


 応接室に案内する。

 六人掛けの円卓には、すでにお茶とお菓子が用意されていた。


「お越しいただきありがとうございます」


 にこやかに教授が言った。


「面白いところですね」


 狭間先生はそう言って椅子に座った。

 教授がティーポットから紅茶を注いだ。


「吉田君も座って」


 促されたので、教授の隣に座った。

 紅茶を半分飲んだ頃、狭間先生が切り出した。


「すぐそこの林で、死体が発見されたのはご存知ですか?」


 教授の目が細められた。


「ええ。 通報したのは、私ですから」


「何か見たのか」


 狭間先生が急に低い声を出した。

 教授が身構えた。


「あなたの学校の生徒だったとか」


「俺が教師だと知っているのか?」


「犯人はあなたですね」


「何を根拠に?」


「今の反応です」


 狭間先生が舌打ちした。

 教授が僕を庇うように腕を伸ばした。

 僕は椅子ごと身を引いた。


「警察に言ったのはお前だな。

 お前のせいで俺は取り調べを受けた」


「何をですか?」


「お前、見たんだろ」


 狭間先生がそう言った時、ソーダが姿を現した。


「見たよ」


 狭間先生の目が見開かれた。


「お前……っ」


「僕を殺したね」


 狭間先生が咆哮を上げた。

 僕と教授は立ち上がった。

 教授が僕を背中に入れる。

 椅子が倒れた。


「死んでからも俺を苦しめるのか!」


 狭間先生がソーダに掴みかかっていった。

 教授がソーダに手を伸ばしたが、その手はソーダを素通りした。

 ソーダは軽快なステップで狭間先生を躱した。

 狭間先生はテーブルに阻まれていた。


「クソが!」


 ティーカップが投げつけられる。

 ソーダの体を通り抜けたそれは、壁に当たって砕け散った。


「吉田君、警察を呼んで!」


 僕はスマホを掴み取った。

 狭間先生が向かってきた。

 教授がタックルする。


「外に出て!」


 僕は急いで外に出た。

 ガチャン、バタンと音がする。


「家で人が暴れてて、すぐに来てください!」


 僕の声はほとんど悲鳴だったと思う。

 長い時間待って、サイレンが聞こえ、警察が来た。

 待っている間、争う音と狭間先生の獣のような声がずっと続いていた。


 警察と一緒に踏み込むと、狭間先生は教授と一緒に床に転がっていた。

 逃げようとする狭間先生に教授が食らいついていた。

 ソーダが狭間先生にものを投げていた。

 流れ弾が教授にも当たっている。

 地獄絵図だ。


 狭間先生は警察が来ても暴れていたが、なんとか押さえつけられて連れて行かれた。

 教授はボコボコにされていて、頬が腫れ、鼻血が出ていた。


「無茶しましたね」


 僕が声をかけると、弱々しく笑った。


「逃がすものかと思いました」


 警察に言われて、救急車を呼んだ。

 教授は救急車に乗って行った。

 僕はまた、事情聴取された。


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