21話 能力模倣の進化2
◆ギフト創造◆
《………………》
《【小さな世界】,【硬化】,【火炎柱】を消費してギフト創造 を行いますか?
YEA/NO ※消費したギフトは使用できなくなります 》
一瞬迷ったた。だが――もう賭けるしかない。
「YESだ!」
《……ギフト創造 を開始します。完了予定は十分後》
「…十分後??」
これまでのようにすぐできると思っていた。
だからこそ、その“たった十分”が、永遠にも思えた。
地の底から響くようなゴゴゴゴ……という震動が足元を揺らし、続いて、木々がまとめてへし折られるバキバキッ!という音が森の奥から迫ってきた。
耳をつんざくようなフレイムベアの咆哮が重なる。
1匹なら、まだ勝機はある。だが――今、森の影から現れつつあるのは10匹以上。
その巨体が、まるで地鳴りの波のようにこちらへ向かって集結してくる。
さらに、フレイムベアの動きに釣られ、森の魔物たちまでもが一斉に移動を始めていた。
最悪の状況だ。 だが、不幸中の幸いと言うべきか。
魔物たちの進行方向に、ラホ村は含まれていない。――村は守られた。それだけは確かだ。
僕はラピスとリックさんへ向き直り、一言感謝の言葉を伝えた。
「ラピス、それにリックさん、巻き込んじゃってごめん。それに戦えそうなギフトを借りてきたのも無駄にしちゃったし、僕、完全にお荷物だね」
「いいえ、そんな事はありません。私こそ最後まで坊ちゃまを守り抜く事ができず、メイド失格です」
「冒険者なんて、どっかで 野垂れ死ぬ運命だ、坊ちゃんが気にする事じゃねーよ」
二人に感謝の言葉を伝えていると、――地鳴りがした。
最初は風かと思った。だが違う。足元の土が、低く唸るように震えている。
◆フレイムベア襲来◆
「……来たか」
リックが短く息を呑む。視線の先、木々の隙間が赤く揺れた。 次の瞬間、森の影を押し分けるように、巨体が姿を現す。
燃えるような体毛。吐き出す息は白煙となり、地面を焦がすほどの熱気を帯びている。
フレイムベアが、こちらへ向かって一直線に迫ってくきていた。 距離はもう、目で追えるほど近い。
「【ギフト剣豪】!」
燃え盛る赤い刃を作り出し、リックさんが自身剣に重ねた。炎の剣豪のギフトはリックの攻撃力を引き上げた。
「【絶対切断】!」
漆黒の刃が出現し双剣の刃に重なる。絶対切断のギフトは触れる全てを真っ二つにするほどの切れ味を発揮した。
「坊ちゃま、私の側を離れないでください」
炎を纏ったリックさんの剣が一匹のフレイムベアを斬りつけた。しかし斬撃は火花を散らして弾かれた。 別のフレイムベアの巨体が地面を踏み砕き、爆ぜるような衝撃がこちらに伝わって来た。
僕の視界いっぱいに丸太のような腕が、唸りを上げて振りかぶられる。 落ちてくる軌道は、まるで逃げ道を最初から奪うために描かれた“死の線”だった。
「坊ちゃま、危ない!」
ラピスの声が耳を裂くように響き、次の瞬間、彼女の身体が僕の前へ飛び込んできた。
フレイムベアの爪が振り下ろされ、空気が悲鳴を上げる。
バシュッ!
嫌な音がした。
ラピスの背中が衝撃でのけぞり、服が裂けた。赤く腫れ上がった傷が、瞬く間に浮かび上がる。 爪で深く抉られたわけではない。だが、焼けた鉄で叩きつけられたかのような凄まじい衝撃が、彼女の身体を容赦なく打ち抜いた。
「ラピス!」
彼女は息を詰まらせ、膝をつきながらも僕を庇う姿勢を崩さない。 肩が震え、呼吸が浅く乱れている。 背中には爪の軌跡が赤黒く浮かび、触れれば痛みが跳ね返ってきそうだった。
フレイムベアはさらに吠え、地面を焦がす熱気が押し寄せる。 リックさんも体勢を立て直そうとするが、別のフレイムベアが横から割り込み、彼の進路を完全に塞いだ。
力が足りない。技もない。覚悟すら、今の僕には足りていない。
こんな時に、何一つできないなんて。
ラピスの背中に浮かぶ赤黒い傷跡が、僕の無力さを突きつけるように目に焼きついて離れない。
――僕がもっと強ければ。――僕に、彼女を守れる力があれば。
悔しさと情けなさが混ざり合い、胸の奥でぐちゃぐちゃに渦を巻く。
自分の弱さが、痛いほど突き刺さった。
◆獄焔鏡牢◆
『ギフト”獄焔鏡牢”の創造完了』
視界の隅に、そんな文字が走った。
僕はダメもとで出来たばかりの獄焔鏡牢を発動した。
「獄焔鏡牢!」
すると――僕の視界いっぱいに、いくつもの魔方陣が花開くように浮かび上がった。
赤黒い光を帯びたそれらは、まるで生き物のように回転し、重なり、空間を震わせる。
次の瞬間、魔方陣の中心から“檻”がせり上がるように出現した。 鋼鉄でも木でもない、光と炎と鏡面が混ざり合ったような異質な構造物。 それが一斉にフレイムベアへと伸び、逃げる間を与えぬ速度で拘束した。
捕らえられたフレイムベアは怒り狂い、 ドンッ! ガンッ! と檻へ拳を叩きつける。
だが――その瞬間だった。
檻の表面がギラリと光を反射し、次いで内部から ゴォッ!と炎が噴き上がった。
まるで檻そのものが怒りを返すかのように、フレイムベアを内側から炎の牢獄へと変貌させる。
フレイムベアは燃え盛る炎に包まれ、
「グォォォォォォ――ッ!!」
と断末魔を響かせながら、影が崩れるように燃え尽きていった。
フレイムベアが消え去った瞬間、あれほど耳をつんざいていた咆哮も、地面を揺らす振動も、嘘のように止んだ。
森に、静寂が落ちる。ただ、檻が消えたあとに残った淡い光だけが、夜気の中でゆらゆらと揺れ、やがて風に溶けて消えていった。
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