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第9話

最後に投稿してから大分経ってしまって申し訳ないです…

読んで頂ければ幸いです。

無意識に手をとってあの場から離れてラースは内心溜め息をつく。別に何か考えがあるわけでもなく、シラの言葉にじゃあ、と思っただけである。

ラース自身元々結婚する気なんてさらさらなかったし、ハデルに来たのだって王命に従っただけなのだ。そもそもラースは適当に会って話して、相性が悪いだの、他に好きな人がいるだの、なんとかかんとかして、この話をなしにするつもりだったのだ。

なのに。

いざ来てみれば何故か相手の姫に待たされ、会えば会ったで、微妙にピリピリした空気になり、挙げ句に結婚しない宣言までされてしまった。

そうなると、イラッとしたのも事実で、それが元での先程の会話になったのだろうとラースは考える。

「…ねぇ!どこまで行く気?」

後ろから聞こえた声に足を止めて振り返れば、その姫様が睨むようにこっちを見ている。

整った目鼻立ち、褐色に艶めく肌の長い手足。金の髪は短い。ラースの国、ジーナでは女性は皆髪が長い。まるでそうでなくてはならないように、皆そうである。だからラースがシラを見た時、あまりの髪の短さに驚いた。でも、その短い髪がシラにはよく似合う。細い首が強調されて、小さな顔が更に小さく見える。なによりも、その意思の強そうな、気の強い瞳につい釘付けになる。

そう、シラに呼ばれて振り向いた今も。

「もう庭まで来てるけど?」

「…へ?……あぁ、本当だ」

思わず呟けばキョトンとした視線が返ってくる。

「…あんた、大丈夫?」

呆けてんの?と、続けるシラから視線を移してラースは庭を眺める。

砂漠の王国の庭なのに、しっかり緑がある。ジーナでは見かけない周りの植物は、けれども今、闇の中でその濃淡をつけている。夜の戸張の中、頭上には満天の星空というロマンティックな状況ではある。が、当のラースもシラもそんなロマンティックには程遠いタイプなのだ。いくら頭上で星が煌めこうが、気にせず喧嘩を始めてしまう。

「聞いてんの?」

「聞いてないよ。面倒くさい」

「あんたのせいで、こんなとこまで来ちゃったんでしょ!大体なんで庭なんか来たのよ!」

「庭に出るなんて知らないよ。っていうか、途中で止めてよ。ずっとここに住んでるんだからわかるだろ?」

「私のせいにしないでよ!」

お互い向かい合ってにらみ合い、相手が引かないのを見てとってラースは仕方ないと溜め息をつく。

「…戻ろう。冷えてきた」

砂漠は夜になると寒い。これもハデルに来てから知った。もっともそれがハデル特有なのか、他の砂漠でもそうなのかはわからないけれど。

繋いだままだった手をまた引いて踵を返す。が、シラは動かず、ラースは不思議そうに振り返る。

「さっきの、どういうこと?」

「さっきって?なんのこと?」

多分、シラが言っているのはラースがレオザに言った話だろうとは思うがすんなり答えるのも癪でラースは知らぬふりをする。

「惚けないで。…私もだけど、そっちだって結婚する気なんかないんでしょ?」

じっとシラはラースを見つめる。それはもう、睨むといってもいいくらいに強い視線で。

反らせないその瞳に、ラースは肩を竦めてみせる。

「…なんでそう思うの?」

「馬鹿にしてんの?そもそもハデルとジーナに関係なんか殆どないじゃない。それなのに結婚なんておかしいでしょ!…お兄様は多分、大国ジーナと何らかの関係を築きたかったはず。まぁ、それは私が結婚しようとしまいと関係自体はできるからこの話がお兄様からくるのはわかる」

具体的な関係が必要なわけじゃない。とにかく、大国であるジーナにハデルという小国の存在を示したかっただけだろう。だから結婚なんて言っても無理矢理進めることはしなかったのだと、シラは確信している。

「でもジーナにとってはそんなことでわざわざ話に乗る必要はないわ。だからずっと考えてた。それでそもそも結婚する気がないんだと思った」

そう考えれば辻褄が合う。

「…でもよくわかんないとこもあるんだけど。結婚する気もないのにわざわざハデルに来たのは何故?ジーナの王子がこの話に乗って何の利益があるの?」

それこそ最大の疑問である。何故ジーナの王子はこの話を断らなかったのか。睨むように見つめればラースはただ苦笑する。

「…優秀だなぁ…」

大方はシラの考えで合っているだろう。ただ何故ジーナにまで来たのか、それはラース自身よくわからないのだ。

「…多分、シラの考えてることで合ってると思う。ジーナとハデルはそんなに関わりないから結婚が破棄になってもお互い国益には影響ないんだろうし。ただ」

恐らくジーナの王とハデルの王は何らかの関係を既に築いているのだとラースは思う。それが何かはさっぱりわからないけれど。

「ハデルとジーナはすでに何らかの関係を持っているはず。俺とシラが結婚しなくてもいいって時点で、国益には関係ないんだろうけど。…そうなると、他国への牽制かな」

ハデルまでジーナの影響があることを示したいのだろう。それはつまり、ジーナの強さと、ハデルから先に入って来ないようにとの牽制でもある。

「…牽制?…じゃあ、トーエルへの牽制?」

トーエルというのはハデルの隣国である。近年台頭してきた一国だが、強力な軍治国家ですでに多くの国を侵略しているらしい。幸いそれはハデルとは反対側の国から始まり、まだ実害は殆どない。今ハデルが牽制するならトーエル以外にはない。

「トーエルか。うちもそことは仲が悪いからなぁ」

「そうなの?トーエルと関わりがあるのね?」

シラの問いにラースはこくりと頷く。

「トーエルって、軍治国家で有名だけど、産業として何が主流か知ってる?」

ラースに聞かれて今度はシラが首を横に振る。

「鉄鋼。でもって、ジーナの重要な貿易相手国」

「………利害は一致しそうね」

呟くようにシラが言えば、ラースは溜め息と共に頷いていた。






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