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「......?」
魔女を討伐する依頼を出す者の殆どが椅子に座り、その報告を待つ。その心情が怖れ、傲慢、プライドなど——討伐隊と共に魔女を討とうとする勇敢さを持つ依頼主をネズは数える程しか知らない。
故に——そんな勇ましき依頼主である貴族が一歩を踏み出してから微動だにしない事に疑問を持った。
「?? 如何しました——ッ!?」
近衛兵の一人が不振に思い、主たる貴族へと近寄る。人の形をしたナニカへの恐怖心よりも忠誠心が勝った近衛兵の顔が——その表情が恐怖へと瞬時に歪み、歪んだまま落ちる。
「なッ!!」
俯瞰して見ていたネズにもそれは僅かにした視認出来なかった。
近衛兵の体が倒れたのにつられて、依頼主の貴族も後ろへと倒れる。力なく転がる二つの首が、理解の追いついていない周囲の者たちに現状を力強く伝える。
「う——」
「——」
「ぁぁあああアア!!!」
恐慌。
一人目の恐怖は瞬く間に伝播する。討伐隊としては寄せ集め、練度なんて素人が見ても無いのが分かる大軍は見事に散った。
唯一、貴族が連れた兵士だけは恐れに満ちながらも武器を構える。切っ先は震え、構えられていない兵士もいるが仕事を投げ捨てて逃げる雇われ達よりも信頼出来るとネズは思った。
「見切れないレベルの魔術は久々だな」
魔女喰いと呼ばれるネズだが、討った魔女の質はピンキリ。どちらかと言えば魔女として未熟な者たちの方が多い。
そして、崩壊した討伐隊を掃う様にして次々と亡き者にする白髪の魔女。明らかに今までに対峙した魔女の中で最強格。
「財布を失くしたから応えた依頼だが、今回ばかりは断るべきだったな......」
数日前の自分を恨みながらも、ネズは現状からどう動くかのが正解か考える。
逃げる。魔女を討つ。隠れて全てを傍観する。
全てから死の気配がチラつく中、最も生存に繋がる道。
「チっ、ここまで来たらやるしかないな」
依頼主が死亡している為に、タダ働きが確定している段階で金欠どころか一銭も持たないネズは逃げ出したい。
心底、本気で、全力で逃げたい心情を絞り捨てて、ネズは音爆弾を用意する。
「血まみれの場所だ。出血大サービスでコッチも使うか......」
右目を覆う雑布を外す。
「......ッ」
雑布を外したネズを即座に白髪の魔女が補足する。先ほどまでその存在に気付かなかったと言わんばかりに、目を見開く魔女は更に意識外の方向から鳴った轟音に思わず振り向く。
その隙を見逃さず、ネズは短剣を片手に最速でその首を狙う。
「ク...」
自然には無い光の筋がネズの視界に浮かぶ。
遅れて、土が突撃槍の勢いさながらに致命となる一撃を撃つ。
盾にもならない短剣を砕くことで一命を取り止める。
(——次は風の術か!!)
視界で色が激しく渦巻く。
一つ。二つ。三つ。
極小規模の竜巻がネズを襲う!
(近衛たちの首を落とした正体は風の刃。こいつ手札が多いな...)
転がっている首や腕が斬り刻まれるのを見て、先ほどの見切れなかった魔術の正体に気付くネズ。魔女が想定を超える力量の持ち主であることに驚嘆の表情を浮かべる。
だが想定を超えても、持つ手札が未知数でも魔女は魔女。どんな魔術でもネズの開いた右目はそれを喰らう。喰い散らす。
「見た目よりかはよく表情が動くな魔女」




