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「ヨォ魔女喰い。まだ満足に生きてたか」
「久しぶりだな。お前こそ元気そうにしてたか」
「マァな。お前はまだ飲めないのが残念な位に、配られた酒美味かったぞ。久々に限界まで飲んじまったよ」
早朝。
ネズを含め、目算で二百を超えるであろう討伐隊は野営地から西にある森へと歩を進めていた。そんな中、何度か戦場で会った事のある男がネズに近づき挨拶を交わす。
「昨夜も俺の事を二十半ばって言う連中がいたんだが、俺ってそんなに老けてるか?」
「アァ~~老けてるとは違ぇな。まあ十九の野郎って説明されても誰も信じない位の顔っちゃ顔だけど」
十九歳のネズは傭兵という荒事に身を置きながら、今は亡き師から言われた約束を律儀に守り酒や煙草などを一度も口にしたことは無かった。だが本人には分からないが、周りからは歳を誤解されやすい。
「マッ、顔って言うかその眼帯とか武器選びの渋さだと思うぞ老けて見える理由は」
「眼帯と武器...か」
「ソウさ。眼帯をもう少し洒落たのにして、若い奴らが選びがちな剣やらを持てば若く見えるんじゃねぇか? 今回の依頼の報酬金でその辺買ってみればどうよ」
ネズは右目を覆っている眼帯とも呼べない雑布を触りながら、自分の持っている武器を確認する。
槍。柄まで鋼鉄で出来ており、刃先が潰れても立ち回れる。
短剣。腕や足、腰などに仕込んであり槍では立ち回れない状況で活躍する。長さも三段階で分けてある。
弓。最も得意な武器。しかし消耗品の矢の補給と強弓の手入れで懐に深い傷を与えるのもあり、あまり使いたくない武器。
その他に煙幕や、投石用のスリングショットなども定位置に収めてある。最小限で最大限に身体を守れるように設計された軽量級防具。
「普通だな」
「普ッ通にジジくさいラインナップだな。なんだよスリングショットって。聞いたことねぇよ若い傭兵がそれを持ってる話」
「弓が使えない時に結構便利だぞ。弾はその辺に転がっているし」
「知らん知らん。第一、魔女の討伐依頼が優先的に回るお前が矢代なんかケチるんじゃねーよ。それに——あ?」
討伐対象の魔女が根城にしていると推定される地点までまだかなりの距離がある筈なのに、討伐隊の歩みが不自然に止まりネズら二人は自然と警戒レベルを上げた。
「——ころに——民家——」
歩みを止めようと、森の中で練度は無かろうと大軍とも言える人数が集まっているのもあって、先頭近くにいるネズでも依頼主とその近衛たちの会話が僅かにしか拾えない。
「ここじゃ何があったか分からないな。先頭に行くか?」
「ダナ。俺は左、お前ぇは右で行くか」
「了解だ」
二人はそれぞれの方向から早足に先頭へと駆ける。
「そこに住まう者よ!! こちらに敵意無くば、我らから行動を起こさないと誓おう!!」
(こんな森に住居...?)
ネズは聞こえ始めてきた貴族の声から徐々に先頭が歩みを止めた理由が分かってきた。
「......家というには簡素だな」
状況をより詳細に把握するために、俯瞰して依頼主たちの動向を見守る位置にネズは木の枝に移動する。
やがて、家らしき小屋から出てきたのはネズよりも少し年上の女性。
肩よりも少し長めの見事な白髪に。
日を一切知らない様な肌。
瞳は全てを諦めている様に漆黒に染まっている。
「絵物語なら美人なんだろうが、あの女が纏う空気......」
自分達と同じ人とは思えない恐ろしいナニカに見える女と相対し息すら忘れている先頭に立つ者たち。
意を決した貴族が一歩だけ踏み出した。




