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「俺らにはテント無しの雑魚寝で、自分らは立派なおテント様を使うってのはどうかと思うよな」
武器を背負った男たちが愚痴る。火の温かさと雇い主が景気づけに配った良酒だけがそれを慰め、更に男たちの口を軽くしていく。
「まぁこんな大人数で魔女一人を袋叩きするだけの任務だ。それで半年は飲み食いし放題の金が入るんだし我慢しようぜ」
向かいに居た男が酒を注ぐ。つまみが無くても、樽で飲めるほどの酒に男は喉を鳴らす。
「だな! そういや、何人か見覚えの無ぇ奴がいるんだがお前ぇ知ってるか? あそこの奴とかよ」
男が指差す先にいるのは配られた酒に手を付けず、無心に武器の手入れをする青年。雑布で右目を覆っているが、歳の方は二十の半ばに見える青年の周囲には槍や短剣、少しの矢が並べられている。
「あぁ~アイツな。お前も聞いたことあると思うが、魔女喰いって呼ばれてる男だよ。アイツが近づくと魔女の術が霧散したり砕けたりするから魔女討伐の時、魔女喰いの有無で生存者が天地の差になるそうだ」
「へぇ......魔女喰いってもっとデカい野蛮な奴だと思ってたわ。あんなお綺麗な顔してるな」
「俺も最初はそんなイメージだったぜ。魔女の肉を食ってるヤベェ奴ってな。後この辺で有名なのは——」
配られた良酒はみるみる減っていく。
大人数で魔女を袋叩きにする依頼。集った傭兵、兵士、果ては山賊まで。誰もが配られた酒で盛り上がり、仕事前なのに酔いつぶれる者まで出る始末に青年はため息を零す。
(魔女喰いに似合わない顔で悪かったな...)
青年——浅葱鼠は手入れし終えた武器や小物のチェックをしつつ今回の依頼の内容を振り返る
依頼主は貴族の一門。
自分たちの家宝を奪う為に夫人を呪ったという魔女の討伐依頼。依頼の種類としてはこの国では良くあるものだが、募集人数、一人当たりの報酬金など定型化している他の魔女討伐とは異なる点にネズは違和感を覚えていた。
「魔女があんな所から宝を盗るのに、呪いをかける必要はあるのか......」
魔女はこの国のみならず、この大陸において天災と同等に語られる存在。
村一つなら瞬く間に。
国一つなら半日も要らずに。
地図からその存在を消せる様な力を持つと言われる魔女なら手っ取り早い方法や、逆に誰にも気づかれないで盗むことなど容易い。
ネズの知っている魔女とのイメージのズレがこの討伐依頼で抱く最大の違和感。喉奥に刺さった異物の様に取れるまでずっと存在を主張する。
「魔女を騙る偽物......いや組織。練度の高い盗賊の集団でもないと、割に合わないな」
一人納得するネズ。配られた酒は飲めないのもあり、近くを通った兵士に譲ると慣れた姿勢で浅い眠りについた。
目覚めた後、自分の人生が大きく変動するとは夢にも見ずに。




