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映画への誘い2

富田先輩が説明をはじめる。


「背景として、中高生を含む若い世代の映画離れがある。どうしたら中高生に映画の魅力を伝えられるか考えてみました。てらくんが想定していた自主制作映画、低予算でできるがシナリオがよくてもキャスティングがだめだと目も当てられなくなるだろうし、その逆も然り。ギャンブル的要素が高いと思う。そもそもクランクアップが間に合うか、編集にどれだけ時間をさけるか、工程表をひくのも大変だね。」


部活の運営はちゃんとしてるんだな。宇宙語が少し混じっているけど、まぁ見直した。


「だから、自主制作映画はあきらめた。つぎに、中高生に見てもらいたい映画をピックアップして紹介する方法。私や大関先生が紹介文や感想文を書くと、ゆきゆきの言う宇宙語になってしまうため、映画にあまりふれたことが無い中高生には紙くずにしかならない。」


富田先輩は私を見てにこりと笑った。


「しかしてらくん、君は違うのではないかな。ゆきゆきから、同級生に趣味が執筆活動の人がいて、君がそうだと聞いています。ならば、フラットな目線で映画をみて、その感想を率直な文章で綴ることができるのではないかな、そう確信しました。」


「あらすじとか、映画の感想を書けばいいんですか?でも、専門的な事はわかりませんよ?」

美幸さんが淹れてくれたコーヒーをすすりながら考える。これは語彙力のなさと向き合わねばならない試練の場になりそうだ。重圧に押しつぶされないようにしないとまずいな。それにしても――なんか甘すぎないか?このコーヒー。文句は言わないけど。


「そこが良いんだよ。フラットな目線で物語をみ、時には俯瞰して全体を見渡すこともできるかもしれない。私や先生では、そういう物の見方ができない可能性が高い。あれもこれも書き入れようとして、その結果、よくわからない文章になってしまうんでしょうね。たぶん。」


「いやー、遅くなったな。すまんすまん」

ドアが開き、妙齢?の女性がはいってきた。たぶん、大関先生だな。年のころは、何歳だろう。女性の年齢はよくわからないな。春色のワンピースを身にまとい、白いカーディガンを着ている。なんか違和感があるな。そもそも、春色って何色なんだ?淡いピンクで良いのか?と脳内会議が始まりそうになる。


「お、君がうわさの作家志望か。すまんな、うちに文芸部がなくて。」

作家志望とさらりと言われた。美幸さんは、私のことをどのように紹介していたのか。


あー、わかった。言動と容姿が一致しないのだ。彼女は容姿端麗であるのに、口を開くとざっくばらんな物言いになるのだ。


「顧問の大関だ。現国を担当している。富田は私の姪になる。よろしくな。」

あれ?姪って言ったような気がするが、気のせいだな。うん。いや、やっぱり女子なのか?


美幸さんが、白いマグカップにコーヒーを入れて先生に渡している。

「おねーちゃんはブラックでいいんだよね?」

「うん。ブラックで良いよ。学校では先生と呼びなさい。普段から気を付けないと、廊下で私を呼ぶときにお姉ちゃん、と呼んじゃうかもよ。」

先生は、にっこりと笑って美幸さんをにらみつける。

「はーい、きおつけまーす」

あまりわかっていない気がする。


「さて、自己紹介をお願いしたいな。」

名前とクラスを言えばいいのかな?

「寺塚幸雄、1年E組です。」

「うん、寺塚だな。では、この紙に名前と学年、クラスを書いてくれ。入部届だ。」

やはり入部する流れになっていたのか。特に異存はない。入部届に名前と学年、クラスを書いて先生に渡した。


「いやー良かった。これで映画研究会が存続する。いやなんだよね、職員室とか国語科準備室で缶詰になるの。好きな映画も見れないしさぁ。ほんと、よかったわぁ。」


先生、本音が漏れまくってますよ。

富田先輩と美幸さんが、冷たい目で先生を見ていますよ。


こうして私の「シネマクラブ」での日々が幕を開けた。


つづく




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